春月の『ちょこっと健康術』

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第25回(平成29年)・第26回(平成30年)・第27回(平成31年)に追加して、第24回(平成28年)はり師きゅう師国家試験の解説をアップします。

 

文字容量の関係で、以下のように科目別になっています。 必要なページにジャンプしてくださいね。

 

(1) 医療概論・衛生学・関係法規 (問題1~15)

(2) 解剖学・生理学 (問題16~37)

(3) 病理学・臨床医学総論 (問題38~55)

(4) 臨床医学各論 (問題56~72、75~80)

(5) リハビリテーション医学 (問題73~74、81~88)

(6) 東洋医学概論・経絡経穴概論 (問題89~114)

(7) 東洋医学臨床論 (問題115~140)

(8) はり理論・きゅう理論 (問題141~160)

 

 

解説をつくるにあたって参考にしたのは、東洋療法学校協会編の教科書(医歯薬出版)を中心に、トートラ解剖学(丸善)、標準生理学(医学書院)、病気がみえるシリーズ(メディックメディア)、絵でみる脳と神経(医学書院)、図解整形外科的検査法(医道の日本社)、中医基礎理論・中医診断学(たにぐち書店)、針灸学基礎編・臨床編(東洋医学出版社)、図解鍼灸臨床手技マニュアル(医歯薬出版社)など。 そのほか、厚労省や保健所、難病研究センター、大学病院、製薬会社、義肢装具会社などのホームページ、医師監修の記事などを参考にしています。

 

未来の鍼灸師さんたちのお役に立てますように。

 

【はり理論】

 

問題141 撚鍼法の刺入時に抵抗感が最も強い鍼尖の形状はどれか。

1. 卵型

2. ノゲ型

3. 柳葉型

4. 松葉型

 

答え: 1

 

卵型は、鍼尖が卵のように丸みをおびているため、曲がりにくいが、刺入しにくく、刺入時に鈍痛感を与えやすい。 したがって、撚鍼法刺入時の抵抗感が強く、1が正解。

 

2. ノゲ型は、鍼尖の上部1.5mmほどのところから細くしたもので、曲がりにくく、刺入しやすいが、疼痛を与えやすい。

 

3. 柳葉型は、松葉型を少し鋭利にしたもので、撚鍼法に使用する。

 

4. 松葉型は、鍼尖の少し上方から細くして、ノゲ型と卵型の中間の形にしたもので、刺入しやすく、疼痛も少ない。 管鍼法に使用される。

 

 

問題142 刺鍼手技で目的深度までを3等分し、各深度で雀啄を行うのはどれか。

1. 間歇術

2. 乱鍼術

3. 屋漏術

4. 随鍼術

 

答え: 3

 

刺入する目的の深さの3分の1に達したらそこで雀啄し、さらに3分の1刺入して雀啄、目的の深さに達して雀啄というように、3回に分けて刺激を与えるのは、屋漏術である。 したがって、3が正解。

 

1. 間歇術は、鍼を目的の深さに刺入したら、半分抜き上げてしばらく留め、また前の深さまで刺入して留めることを繰り返す方法。

 

2. 乱鍼術は、一定の方式に従わず、数種の手技を併用する方法。

 

4. 患者の呼吸に合わせる方法。刺鍼時は、呼気時に刺入し、吸気時に止める。抜鍼時は、吸気時に抜いて、呼気時に止める。

 

 

問題143 WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」において、鍼通電療法を行ってはならないのはどれか。

1. ペースメーカーを使用している者

2. インプラントを使用している者

3. 人工関節を使用している者

4. ステントを使用している者

 

答え: 1

 

WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」で、鍼通電療法の禁忌とされているのは、妊娠、患者がペースメーカーを使用している場合、知覚脱失のある場合、循環障害のある場合、重篤な動脈疾患のある場合や、原因不明の発熱、強い皮膚病変のある場合など。 

 

特にペースメーカーは電磁波の影響を受けやすく、低周波鍼通電のみならず、医療用電気治療器やMRI・X線などの診断装置、肩こり治療器のような低周波治療器や高周波治療器、電気風呂、筋力増強用の電気機器(EMS)、体脂肪計、小型無線機などは使用が制限される。 したがって、1が正解。

 

 

問題144 鍼治療後に起こった症状で気胸を疑うのはどれか。

1. 喘鳴

2. 血痰

3. めまい

4. 呼吸困難

 

答え: 4

 

気胸の症状は、胸痛とわずかな息切れがみられる程度のものから、刺激性の空咳、肩・首・腹部の痛みを伴うものや、激しい呼吸困難とショックを呈するものまで、胸膜腔に入った空気の量、肺のつぶれている範囲、気胸が生じる前の患者の肺機能の状態などによってさまざまであるが、1~4の中では、4の呼吸困難が正解。

 

 

問題145 B型肝炎患者の肩こりに対する鍼施術で正しいのはどれか。

1. 施術者はワクチン接種が法的に義務づけられている。

2. 刺入した鍼はウイルス付着物として扱う。

3. 抜鍼後、出血していなければ素手で後揉法を行ってもよい。

4. 鍼刺し事故の場合はすぐに酒精綿で圧迫する。

 

答え: 2

 

B型肝炎ウイルス(HBV)は血液・体液を介して感染する。 たとえ出血がみられなかったとしても、刺入した鍼はウイルス付着物として扱う。 したがって、2が正しい。

 

1. 1999年のNIOSH(米国労働安全衛生研究所)アラートによると、1回誤刺に対する感染成立の確率は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の0.3%やC型肝炎ウイルス(HCV)の1.8%に比べて、HBVが6~30%とかなり高い。 現段階ではHBVワクチン接種の法的義務はないが、将来的には接種が推奨されるかもしれない。

 

3. HBVは体液感染するため、たとえ出血がみられなくても、素手で後揉法を行うべきではない。

 

4. 鍼刺し事故の場合(患者に使用した鍼を自分に刺してしまった場合)は、創傷部を石鹸と流水で洗浄する。 そして、できるだけすみやかにHBs抗体を調べ、抗体を有していない場合には、B型肝炎用グロブリン製剤やHBVワクチンを使用する。

 

 

問題146 刺鍼局所に起こる神経原性炎症について正しいのはどれか

1. ノルアドレナリンが関与する。

2. 単シナプス反射によって起こる。

3. 血漿蛋白が漏出する。

4. 皮膚のみで起こる。

 

答え: 3

 

刺鍼局所には、毛細血管拡張によるフレアが生じ、血管透過性亢進による血漿タンパクを含む血漿成分の漏出が起こる。 したがって、3が正しい。

 

1. 刺鍼局所に起こる神経原性炎症には、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が関与する。

 

2. 刺鍼刺激を伝える一次求心性神経の軸索反射によって起こる。 求心性インパルスは脊髄に向かって順行性伝導するが、それと同時に、一次求心性神経の軸索の途中で、枝分かれした終末へ逆行性伝導する。 これを軸索反射という。

 

4. 神経原性炎症は、皮膚のみでなく、粘膜や平滑筋でも生じる。

 

 

問題147 下行性痛覚抑制系による鍼鎮痛の特徴について正しいのはどれか。

1. 発現までに時間がかかる。

2. 大脳皮質感覚野で起こる。

3. 効果は刺激周囲に限られる。

4. 刺激終了後すぐに消失する。

 

答え: 1

 

下行性痛覚抑制系による鍼鎮痛の発現には、10~30分の潜伏期を必要とする。 すなわち、発現までに時間がかかるため、1が正しい。

 

2. 下行性抑制系は、脊髄後角で末梢から入力された痛覚情報を遮断する。

3. 末梢から入力された痛覚情報を脊髄全体にわたって遮断するため、効果が刺激周囲に限られることはない。

4. 鍼鎮痛は、鍼刺激を終了しても20~30分効果が持続する。

 

 

問題148 中脘(ちゅうかん)への鍼刺激で胃運動が抑制される機序に関与するのはどれか。

1. 下腹神経

2. 大内臓神経

3. 骨盤神経

4. 迷走神経

 

答え: 2

 

中脘(ちゅうかん)への刺鍼が腹部刺激となり、胃運動の抑制反応が起こるのは、交感神経胃枝の活動が亢進するためである。 胃、小腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎髄質などに分布する交感神経は、第5~第9胸部神経節から出る大内臓神経。 したがって、2が正解。

 

1. 下腹神経は、腰部神経節から出る交感神経で、膀胱や直腸などに分布する。

3. 骨盤神経は、仙髄から出る副交感神経である。

4. 迷走神経は、第10脳神経で、内臓に分布する副交感神経を含む。

 

 

問題149 鍼治療による生体防御反応に最も関係するのはどれか。

1. アセチルコリン遊離

2. 体性‐内臓反射

3. サイトカイン産生

4. パチニ小体興奮

 

答え: 3

 

サイトカインは、細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称である。 標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすが、特に炎症反応と免疫応答に関係するものが多い。 鍼灸刺激は、細胞に微弱な侵害刺激を与え、サイトカイン産生による炎症反応と免疫応答を引き起こすことで、生体防御に働くと考えられる。 したがって、3が正解。

 

1. アセチルコリンは神経伝達物質のひとつである。 刺鍼による刺激で一次感覚ニューロンに軸索反射が起こり、分泌されたCGRPがコリン作動性神経の末端に作用すると、アセチルコリンの遊離が増加する。 アセチルコリンは筋血管を拡張させ、筋血流が改善される。

 

2. 体性‐内臓反射は、鍼灸刺激が内臓に及ぼす作用機序として考えられている。

 

4. パチニ小体の興奮は、触圧覚として太い神経線維の入力となり、細い神経線維からの痛覚の信号を抑制し、ゲートコントロール説による鎮痛に関与する。 押手による切皮痛の予防やTENS(経皮的通電神経刺激法)は、ゲートコントロール説を応用した鎮痛と考えられている。

 

 

問題150 ストレス学説において、初めに加えられたストレッサーに対してのみ有効な抵抗を現す時期はどれか。

1. ショック相

2. 反ショック相

3. 交絡感作期

4. 疲憊期

 

答え: 3

 

交絡感作期は、抵抗期(第二期)で、警告反応期よりも刺激に順応して、身体内部はだいぶ安定した状態になるが、与えられたストレッサーに対してのみ有効な抵抗を示し、それ以外の刺激に対する抵抗力は弱まっている。 したがって、3が正解。

 

1. ショック相は、警告反応期(第一期)の前半、生体がストレッサーに直面した直後で、刺激に対する抵抗性が低下している時期である。 体温や血圧の低下、毛細血管の透過性亢進、筋緊張の低下がみられる。

 

2. 反ショック相は、警告反応期(第一期)の後半で、交絡抵抗期ともいい、生体が積極的な防衛反応を示し始める時期である。 副腎皮質が肥大して副腎皮質ホルモンの分泌が増加し、体温や血圧の上昇、筋の緊張、血糖値の上昇などがみられ、与えられたストレッサー以外の刺激に対しても抵抗を示す。

 

4. 疲憊期(第三期)は、刺激が長く続いたり、あまりに強かったりして、生体が適応の反応を維持できなくなった状態で、ショック相の状況とよく似た変化をあらわし、抵抗力を失ってしまう。

 

 

【きゅう理論】

 

問題151 ヨモギの組成のうち精油を多く含むのはどれか。

1. 葉柄

2. 毛茸

3. 葉脈

4. 腺毛

 

答え: 4

 

ヨモギに含まれる精油の主成分はチネオール(シネオール)で、ユーカリ油の主成分でもあるためユーカリプトールとも呼ばれる。 チネオールには清涼な香気があり、鎮咳作用、去痰作用、殺菌防臭作用、抗炎症作用などを持つ。 精油を多く含むのは、ヨモギの葉裏にある腺毛であり、艾はその腺毛と毛茸からできている。 したがって、3が正解。

 

 

問題152 押灸に用いる艾で正しいのはどれか。

1. 火力が強い。

2. 手触りがよい。

3. 淡黄白色である。

4. 繊維が細かい。

 

答え: 1

 

押灸は、患部に木綿の布または紙などを厚く7~9枚以上重ねて置き、その上から棒灸を押し付け、温熱刺激を加えるものである。 棒灸は、温灸用艾を紙で硬く巻いたものを使うため、火力は強い。 したがって、1が正解。 手触りがよく、淡黄白色で、線維が細かいものは上質艾で、透熱灸に用いる。

 

 

問題153 通常用いる透熱灸で正しいのはどれか。

1. 大豆大の艾炷(がいしゅ)を用いる。

2. 施灸でできた痂疲は取り除く。

3. 精製度の高い艾を用いる。

4. 艾炷(がいしゅ)底面の燃焼最高温度は約150℃である。

 

答え: 3

 

透熱灸には、精製度の高い良質の艾を用いる。 したがって、3が正解。

 

1. 透熱灸は、米粒大か半米粒大、あるいは糸状の艾炷(がいしゅ)を用いる。

2. 施灸でできた痂疲は、自然に落ちて治癒するのを待つ。

4. 良質艾の艾炷(がいしゅ)底面の燃焼温度は、通常60~70℃で、最高温度は約100℃である。

 

 

問題154 八分灸が属する灸法はどれか。

1. 焦灼灸

2. 知熱灸

3. 塩灸

4. 温筒灸

 

答え: 2

 

八分灸は、知熱灸の艾炷(がいしゅ)を8割燃やしたところで消火する方法で、2が正解。 知熱灸は無痕灸のひとつであり、米粒大・半米粒大の艾炷(がいしゅ)を直接皮膚に置き、点火した後、施術者の母指と示指で艾炷(がいしゅ)を覆い包むようにして酸欠状態をつくり、患者の気持ち良いところで消火する。

 

1. 焦灼灸は有痕灸のひとつで、熱刺激によって施灸部の皮膚・組織を破壊する灸法。

3. 塩灸は隔物灸のひとつで、皮膚の上に塩を盛り、その上で艾を燃やす方法。

4. 温筒灸は、円筒状の台座の上部に艾を入れ、皮膚との距離をあける方法。

 

 

問題155 WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」において、灸治療の禁忌はどれか。

1. 低血圧

2. 高熱

3. 便秘

4. 月経痛

 

答え: 2

 

WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」における鍼治療の禁忌は、妊娠、救急事態もしくは手術を必要とする場合、悪性腫瘍、出血性の疾患である。 1~4の中で、2の高熱は救急事態に含まれる場合があり、禁忌と判断する。 灸治療に関しては、鍼治療に準ずるため、2が正解。

 

 

問題156 免疫機能低下の患者に適した灸はどれか。

1. 紅灸

2. 打膿灸

3. 焦灼灸

4. 隔物灸

 

答え: 4

 

免疫機能が低下している場合、有痕灸を行うと、灸痕の炎症が悪化したり治癒が遅くなったりする恐れがある。 隔物灸は、艾炷(がいしゅ)と皮膚との間に、ニンニク片、生姜片、みそ、塩、ビワの葉などを置いて施灸する方法で、艾炷(がいしゅ)と皮膚を隔てる物がある分、温熱刺激が40~50℃とやわらかくなるため、無痕灸に分類される。 したがって、4が正解。

 

1. 紅灸は、薬物灸のひとつで、生薬としても使われる紅花のしぼり汁を体表に塗布する方法。 赤い色のプラセボ効果によるものと言われているが、紅灸として販売されているものには、トウガラシチンキやサリチル酸などが含まれており、場合によっては接触性皮膚炎を起こす可能性があるため、免疫機能の低下している患者には控えたほうがよい。

 

2. 打膿灸は、弘法の灸とも呼ばれる有痕灸で、小指から母指頭大の艾炷(がいしゅ)を直接皮膚上に施灸して火傷をつくり、その上に膏薬を貼って化膿させる。 瘢痕治癒まで1~2か月かかるが、免疫力が高まると言われている。 小児や虚弱な者、免疫機能の低下している者には適さない。

 

3. 焦灼灸は有痕灸のひとつで、熱刺激によって施灸部の皮膚・組織を破壊する灸法。 イボ・ウオノメの治療に使用する。 火傷をつくる方法なので、小児や虚弱な者、免疫機能の低下している者には適さない。

 

 

問題157 灸刺激の伝導に関与するのはどれか。

1. 2群線維

2. 脊髄後角

3. 後索核

4. 赤核

 

答え: 2

 

温冷覚と痛覚は、脊髄後角で二次ニューロンに伝えられる。 したがって、2が正解。

 

1. 2群線維は触圧覚を伝えるAβ線維である。 灸の温熱刺激は4群線維(C線維)によって伝えられる。

3. 後索核は、触圧覚の伝導に関与する。

4. 赤核は、運動に関わる錐体外路(下行路)の中継核のひとつである。

 

 

問題158 ラットの背部への施灸において、同一脊髄レベルでの神経損傷により軸索反射が消失するのはどれか。

1. 脊髄神経を脊髄神経節の末梢側で切断

2. 脊髄神経前根を切断

3. 交感神経を灰白交通枝で切断

4. 脊髄後角を破壊

 

答え: 1

 

侵害刺激を伝える一次感覚ニューロンの求心性インパルスは、脊髄に向かって順行性伝導するが、それと同時に、軸索の途中で枝分かれした終末へ逆行性伝導する。 これが軸索反射であり、シナプスを介さない。 軸索反射は、文字通り感覚ニューロン軸索での反応であり、脊髄神経を脊髄神経節の末梢側で切断した場合に消失する。 したがって、1が正解。

 

2. 脊髄神経前根を通るのは遠心性神経である。

3. 灰白交通枝を通るのは、汗腺・立毛筋・皮膚血管に分布する交感神経(遠心性神経)である。

4. 脊髄後角には、侵害刺激を伝える求心性インパルスが順行性伝導で入る。 軸索反射は、軸索の途中で生じる逆行性伝導であり、脊髄後角の破壊は軸索反射に影響しない。

 

 

問題159 ブラジキニンの発痛作用を増強させるのはどれか。

1. CGRP

2. エンケファリン

3. サブスタンスP

4. プロスタグランジン

 

答え: 4

 

プロスタグランジンは、不飽和脂肪酸(アラキドン酸)から生成される生理活性物質で、体内のさまざまな器官や組織に存在する。 血管拡張、気管支拡張、胃粘液分泌の促進、子宮の収縮、血小板凝集の抑制などに働くが、痛覚の閾値を下げる(痛みを感じやすくさせる)作用もあり、ブラジキニンによる発痛作用を増強する。 したがって、4が正解。

 

1. CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は軸索反射によって分泌される神経ペプチドであり、毛細血管の拡張や血管透過性の亢進などの神経原性炎症を起こす。

2. エンケファリンは内因性オピオイドで、下行性抑制系を賦活する。

3. サブスタンスPは、CGRPと同じく軸索反射によって分泌される神経ペプチドである。

 

 

問題160 虚弱体質を改善する灸の作用はどれか。

1. 防衛作用

2. 免疫作用

3. 調整作用

4. 転調作用

 

答え: 4

 

転調作用とは、自律神経失調症やアレルギー体質などを改善して、体質を強壮にする作用である。 したがって、4が正解。

 

1. 防衛作用とは、白血球や大食細胞などを増加させて、種々の疾患の治癒機能を促し、生体の防御力を高める作用である。

 

2. 免疫作用とは、免疫能を高める作用である。

 

3. 調整作用とは、組織や器官に一定の刺激を与えて、その機能を調整する作用である。 機能減退に対する興奮作用、機能亢進に対する鎮静作用に大別される。

 

【東洋医学臨床論】

 

問題115 次の文で示す患者の病証に対する治療で、原絡配穴法(主証、客証を踏まえて原穴と絡穴を配穴する法)の原則として適切な治療穴の組合せはどれか。

「38歳の女性。2週間前に右側の顔面神経麻痺を発症。ほぼ同時期に同側の大腿前外側から下腿前面に痛みがある。最近、右足の第1指から下腿内側の痛みが加わった。」

1. 太白(たいはく) ― 豊隆(ほうりゅう)

2. 衝陽(しょうよう) ― 公孫(こうそん)

3. 太白(たいはく) ― 公孫(こうそん)

4. 衝陽(しょうよう) ― 豊隆(ほうりゅう)

 

答え: 2

 

原絡配穴法は、主客配穴法ともいう。 主証となる経脈の原穴と、客証となる表裏関係にある経脈の絡穴を使用する。 症例は、顔面神経麻痺と大腿前外側から下腿前面の痛みが主証であり、胃経の病証で、足の第1指から下腿内側の痛みが客証であり、脾経の病証となる。 したがって、主証に胃経の原穴、客証に脾経の絡穴を配穴する。 衝陽が胃経の原穴、公孫が脾経の絡穴なので、2の組み合わせが正しい。

 

1. 太白は脾経の原穴、豊隆は胃経の絡穴。

3. 太白は脾経の原穴、公孫は脾経の絡穴。

4. 衝陽は胃経の原穴、豊隆は胃経の絡穴。

 

 

問題116 変形性膝関節症の患者に対するSOAP方式による経過記録で、Pに相当するのはどれか。

1. 階段昇降時の膝の痛み

2. 膝関節の屈曲拘縮

3. 内側広筋の萎縮

4. 大腿四頭筋訓練

 

答え: 4

 

SOAPはSubjective Objective Assessment Planの略で、Sは主観的な情報(患者の愁訴や病歴)、Oは客観的な情報(身体診察や検査の結果)、Aは入手した情報の分析と評価(診断)、Pは計画(治療方針)である。 大腿四頭筋の筋力低下が変形性膝関節症の原因のひとつであり、大腿四頭筋訓練がPに相当する。 したがって、4が正解。

 

1. 階段昇降時の膝の痛みはS。

2. 膝関節の屈曲拘縮はO。

3. 内側広筋の萎縮はA。

 

 

問題117 四診法で得られた所見で予後が最も悪いのはどれか。

1. 仮神(かしん)

2. 少気(しょうき)

3. 畏寒(いかん)

4. 濇脈(しょくみゃく)

 

答え: 1

 

仮神は、無神であるのに突如病状が好転したような状態になるもので、臨終の兆しであり、予後不良である。 したがって、1が正解。

 

2. 少気は、呼吸が浅く微弱で、音声に力がないもので、慢性的な虚証にみられる。

 

3. 畏寒は、いわゆる寒がりのことで、さむけを感じても衣服や布団などで暖を取れば、次第に寛解するもの。 陽虚による虚寒証にみられる。

 

4. 濇(しょく)脈は、脈の往来が渋っているもので、瘀血(おけつ)によって気血の運行が滞ったときにみられる。

 

 

問題118 機能性月経困難症の患者の治療でデルマトームを考慮して選穴する場合、適切でないのはどれか。

1. 関元(かんげん)

2. 脾兪(ひゆ)

3. 三焦兪(さんしょうゆ)

4. 大腸兪(だいちょうゆ)

 

答え: 4

 

機能性月経困難症は、月経血を排出するために子宮の収縮を促す物質(プロスタグランジン)の過剰分泌が主な原因となるもので、子宮や卵巣が未成熟な場合や、冷えやストレスが強い場合などによくみられる。 

 

子宮の知覚神経はT10~L2であり、この領域にあるのは1の関元、2の脾兪と3の三焦兪である。 4の大腸兪はL2~L4領域であり、4が適切でない。

 

 

問題119 異常歩行とその原因となる筋に対する局所治療穴との組合せで正しいのはどれか。

1. 鶏歩 ― 三陰交(さんいんこう)

2. はさみ脚歩行 ― 陽陵泉(ようりょうせん)

3. 分回し歩行 ― 足三里(あしさんり)

4. トレンデレンブルグ歩行 ― 居髎(きょりょう)

 

答え: 4

 

トレンデレンブルグ歩行は、アヒル歩行または動揺性歩行ともいう。 中殿筋の筋力低下によって、一歩ごとに骨盤が傾くため、上半身を左右に振って歩く。 局所治療穴は、居髎(きょりょう)や秩辺(ちっぺん)など。 したがって、4の組み合わせが正しい。

 

1. 鶏歩は、足関節の背屈力低下(下垂足)による異常歩行。 腓骨神経麻痺による前脛骨筋麻痺が原因となる。 局所治療穴は、足三里。 三陰交は、シンスプリントや深後方コンパートメント症候群などに使われる。

 

2. はさみ脚歩行は、内反尖足によって両膝が重なり合うように歩く異常歩行。 両側性錐体路障害による痙性対麻痺歩行であり、筋に原因があるのではない。 麻痺そのものに対しての治療ではなく、筋緊張や関節拘縮の緩和に陽陵泉を使うことは有り得るが、設問の主旨とは異なるため、正解とはならない。

 

3. 分回し歩行は、股関節を中心に、伸展した下肢で半円を描くように歩く異常歩行。 片側性錐体路障害による痙性片麻痺歩行であり、筋に原因があるのではない。 脳卒中後遺症の治療として、筋緊張・関節拘縮の緩和や促通を目的に、理学療法と併用して鍼治療が行われることがあり、その場合、八風(はっぷう)、委中(いちゅう)、伏兎(ふくと)、風市(ふうし)、環跳(かんちょう)、陽陵泉(ようりょうせん)、足三里などが使われるが、設問の主旨とは異なるため、正解とはならない。

 

 

問題120 末梢神経麻痺と罹患筋への低周波鍼通電療法で用いる経穴との組合せで正しいのはどれか。

1. 筋皮神経麻痺 ― 外関(がいかん)・陽池(ようち)

2. 橈骨神経麻痺 ― 曲池(きょくち)・合谷(ごうこく)

3. 正中神経麻痺 ― 支正(しせい)・小海(しょうかい)

4. 尺骨神経麻痺 ― 郄門(げきもん)・内関(ないかん)

 

答え: 2

 

橈骨神経は上腕・前腕の伸筋群に分布する。 曲池と合谷は橈骨神経領域にあるため、2の組み合わせが正しい。

 

1. 筋皮神経は上腕二頭筋・烏口腕筋・上腕筋に分布する。 外関と陽池は橈骨神経領域にある。

3. 正中神経は円回内筋・橈側手根屈筋・長掌筋などに分布する。 支正と小海は尺骨神経領域にある。 4. 尺骨神経は尺側手根屈筋や深指屈筋尺側頭などに分布する。 郄門と内関は正中神経領域にある。

 

 

問題121 胃痛に対して行う低周波鍼通電療法で、デルマトームを応用した経穴の組合せとして正しいのはどれか。

1. 三焦兪(さんしょうゆ) ― 腎兪(じんゆ)

2. 膈兪(かくゆ) ― 肝兪(かんゆ)

3. 玉枕(ぎょくちん) ― 天柱(てんちゅう)

4. 大杼(だいじょ) ― 肺兪(はいゆ)

 

答え: 2

 

胃に対してデルマトームを応用する場合はT7~9である。 膈兪はT7、肝兪はT9なので、2の組み合わせが正しい。

 

1. 三焦兪はL1、腎兪はL2。

3. 玉枕と天柱は大後頭神経。

4. 大杼はT1、肺兪はT3。

 

 

問題122 次の文で示す患者の東洋医学的病態で適切なのはどれか。

「65歳の男性。 主訴は排尿痛。 3年前から自覚するようになった。 飲食の不摂生から便がすっきり出ないときに痛みが強くなり、下腹部の不快感を伴う。 尿は色が濃くて量が少ない。 舌質は紅、舌苔は黄膩。 脈は滑数。」

1. 下焦の湿熱

2. 命門の火衰

3. 粛降の失調

4. 運化の低下

 

答え: 1

 

便が出すっきり出ないときに痛みが強くなり、舌苔膩、脈滑なので痰湿証。 尿の色が濃くて量が少なく、舌質紅、舌苔黄、脈数なので熱証。 排尿痛と下腹部の不快感は下焦の症状。 したがって、下焦の湿熱が適切であり、1が正解。

 

2. 命門の火衰は陽虚で、虚寒証である。

3. 粛降の失調は、肺の病証にみられる。

4. 運化の低下は、脾の病証にみられる。

 

 

次の文で示す症例について、問題123、問題124の問いに答えよ。

「74歳の男性。 農業に従事。 主訴は頻尿と会陰部の不快感。 10年前から尿が出始めるまでに時間がかかるようになった。 就寝後、排尿のため2回は覚醒する。 PSA値は正常範囲内である。 会陰部の不快感が増強している。 血尿、尿混濁は認めず、排尿痛はない。」

 

問題123 本症例の疾患で最も適切なのはどれか。

1. 膀胱炎

2. 膀胱結石

3. 前立腺肥大症

4. 前立腺癌の進行期

 

答え: 3

 

頻尿は膀胱が物理的に圧迫されていて尿が溜まりにくく、尿が出始めるまでに時間がかかる遷延性排尿は尿道が狭くなっていて尿がでにくくなっているためと考えられる。 また、PSA(前立腺特異抗原:前立腺の腫瘍マーカー)値が正常範囲なので、腫瘍ではなく、前立腺肥大症が最も適切となる。 したがって、3が正解。

 

血尿・尿混濁・排尿痛がなく、遷延性排尿があり、PSA値が正常範囲なので、膀胱炎や膀胱結石ではなく、前立腺癌の進行期とも考えにくい。

 

問題124 会陰部の症状緩和を目的に陰部神経への鍼施術を行う場合、刺鍼部位の目安となる体表点で最も適切なのはどれか。

1. 上後腸骨棘と坐骨結節下端内側を結ぶ線上の中点

2. 大転子と上後腸骨棘を結ぶ線の中点から直角下方3cmの点

3. 大転子と坐骨結節を結ぶ線上の内側3分の1の点

4. 大転子と仙尾関節を結ぶ線上の外側3分の1の点

 

答え: 1

 

上後腸骨棘と坐骨結節下端内側を結ぶ線上の中点は、S2領域である。 陰部神経として、会陰部の皮膚を支配するのは、S2~4の枝である。 したがって、1が正解。

 

2. 大転子と上後腸骨棘を結ぶ線の中点から直角下方3cmの点は、L5領域。

3. 大転子と坐骨結節を結ぶ線上の内側3分の1の点は、S1領域。

4. 大転子と仙尾関節を結ぶ線上の外側3分の1の点は、L5領域。

 

 

問題125 肩関節周囲炎の内旋制限に対し、拘縮している筋への施術で適切な経穴はどれか。

1. 肩井(けんせい)

2. 曲垣(きょくえん)

3. 天宗(てんそう)

4. 中府(ちゅうふ)

 

答え: 3

 

肩関節の内旋制限は、棘下筋の拘縮で起こる。 天宗は棘下筋に位置するため、3が正解。

 

1. 肩井は僧帽筋。

2. 曲垣は棘上筋。

4. 中府は大胸筋と小胸筋。

 

 

次の文で示す症例について、問題126、問題127の問いに答えよ。

「38歳の女性。 1か月前から家事動作で右手首の橈側が痛むようになり、近医にてドケルバン病と診断された。 湿布を続けたが、徐々に痛みが増強したため来院。」

 

問題126 病態を確認する目的で行うアイヒホッフテストの方法で正しいのはどれか。

1. 母指を中に入れて握った手の尺屈を指示する。

2. 母指を外にして握った手の尺屈を指示する。

3. 母指を中に入れて握った手の橈屈を指示する。

4. 母指を外にして握った手の橈屈を指示する。

 

答え: 1

 

ドケルバン病は、長母指外転筋と短母指伸筋の腱鞘部の狭窄性腱鞘炎で、母指を動かすと橈骨茎状突起部に痛みが起こり、アイヒホッフテストやフィンケルスタインテストで陽性となる。 アイヒホッフテストは、「母指を中に入れて握った手の尺屈を指示する」ものであり、1が正解。 

 

フィンケルスタインテストは、被検者の指を伸ばした状態で母指を示指に沿わせ、検者の母指で被検者の母指を押さえるように、被検者の手を軽く握って被検者の手関節を尺屈させる。

 

問題127 罹患筋に対する鍼施術で適切な経穴はどれか。

1. 孔最(こうさい)

2. 支溝(しこう)

3. 遍歴(へんれき)

4. 手三里(てさんり)

 

答え: 3

 

ドケルバン病の患部は長母指外転筋と短母指伸筋の腱鞘部。 ここにあるのは遍歴であり、3が正解。

 

1. 孔最は腕橈骨筋。

2. 支溝は総指伸筋腱と小指伸筋腱。

4. 手三里は長・短橈側手根伸筋。

 

 

問題128 月経痛を訴える患者で鍼灸治療が最も適するのはどれか。

1. 16歳、月経周期は不定、月経1日目に強い疼痛がある。

2. 27歳、月経のたびに胸痛を伴う。

3. 42歳、過多月経で貧血もある。

4. 50歳、月経周期は不定、帯下があり不正性器出血がある。

 

答え: 1

 

16歳で、月経周期は不定でも、月経1日目の疼痛のみで、随伴症状がないのは、月経血を排出するために子宮の収縮を促す物質(プロスタグランジン)の過剰分泌による機能性月経困難症と考えられる。 したがって、1が鍼灸治療に適する。

 

2. 27歳で、月経のたびに胸痛があるのは、月経随伴性気胸の疑いがあり、子宮内膜症を併発している可能性がある。

3. 42歳で、過多月経と貧血は、子宮筋腫や子宮筋腺症などの可能性がある。

4. 50歳で、帯下と不正性器出血は、子宮癌の可能性がある。

2~4いずれも、医師の診断が必要となる。

 

 

問題129 次の文で示す患者の仙骨部に施灸する場合、最も適切なのはどれか。

「5歳の男児。 夜間の遺尿が続いている。 鍼灸治療は初めて。」

1. 焦灼灸

2. 打膿灸

3. 知熱灸

4. 透熱灸

 

答え: 3

 

5歳児であり、しかも鍼灸治療が初めてなので、最も刺激の少ない知熱灸を選択する。 したがって、3が正解。

 

 

問題130 高齢者の運動器の機能評価に用いるのはどれか。

1. PGCモラールスケール

2. MMSE

3. バーセルインデックス

4. ロコモ度テスト

 

答え: 4

 

ロコモ度テストは、下肢筋力、歩幅、身体状態・生活状況を計測するもので、運動器の機能評価に用いられる。 したがって、4が正解。

 

1. PGCモラールスケール(Philadelphia Geriatric Center Morale Scale)は、社会老年学におけるモラールの測定尺度。 17の質問事項に答え、結果を数値化する。 モラールは「幸福な老い」をあらわす概念で、「基本的な満足感をもっている」「自分の居場所があるという感じをもっている」「努力しても動かせない事実は事実として受容できている」とき、モラールが高いと判断される。

 

2. MMSEはMini Mental State Examinationの略で、認知症の疑いがある被験者のために開発された検査方法。 口頭による質問に答え、30点満点で判定する。

 

3. バーセルインデックスは、日常生活動作の機能を評価する検査方法。 食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、移動、階段昇降、更衣,排便自制、排尿自制の10項目を、それぞれ自立、部分介助など数段階の自立度で評価するもの。 完全に自立している場合は100点となる。

 

 

問題131 承山(しょうざん)への刺鍼が最も有効なスポーツ外傷で、陽性となる徒手検査はどれか。

1. ラックマンテスト

2. トンプソンテスト

3. コーゼンテスト

4. グラスピングテスト

 

答え: 2

 

承山、承筋(しょうきん)、飛揚(ひよう)などが治療穴となるのは、後方コンパートメント(ヒラメ筋と腓腹筋)の障害である。 トンプソンテストがコンパートメント症候群の徒手検査であり、2が正解。

 

1. ラックマンテストは膝前十字靭帯損傷の徒手検査。

3. コーゼンテストは上腕骨外側上顆炎(バックハンドテニス肘)の徒手検査。

4. グラスピングテストは腸脛靭帯炎(ランナー膝)の徒手検査。

 

 

問題132 次の文で示す患者の病証に対し、循経取穴で瀉法を行う経穴はどれか。

「36歳の男性。 1か月前に右足の内がえし捻挫を起こした。 現在、腫脹は取れたが、前距腓靭帯部の熱感と動作時の疼痛が残っている。 下腿外側部の自発痛を伴う。 ストレスが増すと痛みは強くなり口苦を自覚する。 舌質は紅、舌辺の舌苔は剥落。  脈は滑。」

1. 内庭(ないてい)

2. 侠渓(きょうけい)

3. 行間(こうかん)

4. 然谷(ねんこく)

 

答え: 2

 

前距腓靭帯部と下腿外側部に痛みがあり、口苦を随伴しているので、胆経の病証である。 侠渓は足少陽胆経の榮水穴であり、循経取穴となるので、2が正解。

 

1. 内庭は足陽明胃経の榮水穴。

3. 行間は足厥陰肝経の榮火穴。

4. 然谷は足少陰腎経の榮火穴。

 

 

問題133 素問、霊枢、難経の「治未病」に関して誤っているのはどれか。

1. 病気になる前に予防する。

2. 病の兆候を早期に発見して早期に治療する。

3. 治療すべきタイミングが重要である。

4. 1つの臓を病めば治未病の概念からはずれる。

 

答え: 4

 

「治未病」は、陰陽の法則、五行の相生・相克や五臓の特性などを考え、予兆をとらえて病の発生を予防すること、発病したときは早いうちに治療すること、病が他の臓器へ波及しないように手当てすることである。 一つの臓が病んだからと言って、治未病の概念からはずれることはない。 したがって、4が誤りである。

 

1. 『素問』四気調神大論篇に「聖人は已病を治さず、未病を治す。」とあり、病気になる前に予防することの重要性を説いている。

 

2. 『難経』七十七難に「治未病とは、たとえば肝の病をみて脾の手当を先に行うように、根本原因を知って、症状が軽いうちに適切な治療を行うことであり、それができるのが上工(すぐれた医者)である。」とあり、病の兆候を早期に発見して早期に治療することを説いている。

 

3. 『霊枢』逆順篇第五十五に「すぐれた医者は、まだ病が発生していないときに刺す。 それに次ぐ医者は、邪気がまだ盛んでないときに刺す。 それに次ぐ医者は、邪気がすでに衰えて、少気が回復しようとするときに刺す。 下級の医者は、邪気が盛んなときに刺したり、健康そうに見えても虚している人を刺したり、病状と脈象が一致しない病証に刺したりする。 邪気が盛んなときには、鍼を刺してはならない。 もし、その邪の鋭気を迎えて刺すと、元気が損なわれる。 邪気が衰え始めたときに鍼を刺せば、すぐれた効果が得られる。」とあり、治療すべきタイミングの重要性を説いている。

 

 

問題134 頸椎の間欠牽引療法を座位で施行する場合、頸椎の牽引角度で最も適切なのはどれか。

1. 屈曲15度

2. 0度

3. 伸展15度

4. 伸展30度

 

答え: 1

 

頸椎の牽引療法では、上位か中位か下位か、対象となる頸椎の位置に合わせて、屈曲15~45度で行う。 したがって、1~4の中で最も適切なのは、1の屈曲15度である。

 

 

次の文で示す症例について、問題135、問題136の問いに答えよ。

「63歳の男性。  手のふるえ、歩行困難、歯車様の筋強剛がみられる。」

 

問題135 本患者の特徴的な手のふるえはどれか。

1. コップをつかもうとするときのふるえ

2. ゆっくりと踊るようなふるえ

3. 丸薬を丸めるような手指のふるえ

4. 細かい指先のふるえ

 

答え: 3

 

手のふるえと歩行困難に、歯車様の筋強剛がみられるので、パーキンソン病を疑う。 「丸薬を丸めるような手指のふるえ」は丸薬丸め様運動と呼ばれる静止時振戦であり、パーキンソン病でみられる。 したがって、3が正解。

 

1. 「コップをつかもうとするときのふるえ」は企図振戦であり、小脳疾患でみられる。

2. 「ゆっくりと踊るようなふるえ」はアテトーゼであり、脳性麻痺などによる錐体外路障害でみられる。

4. 「細かい指先のふるえ」は、ストレス、不安、疲労、薬剤の副作用、アルコール依存症の禁断症状、甲状腺機能亢進症などでみられる。

 

問題136 本患者の臓腑病証に基づいて、九刺による鍼治療を行う場合の組合せで適切なのはどれか。

1. 肺兪(はいゆ) ― 太淵(たいえん)

2. 肝兪(かんゆ) ― 太衝(たいしょう)

3. 脾兪(ひゆ) ― 太白(たいはく)

4. 心兪(しんゆ) ― 神門(しんもん)

 

答え: 2

 

本症例は手のふるえ、歩行困難、筋強剛といずれも筋の症状であり、肝病と判断する。 肝兪(かんゆ)と太衝(たいしょう)は、肝の病証に対する兪原配穴(背部兪穴と原穴)であり、2の組み合わせが適切である。

 

 

次の文で示す症例について、問題137、問題138の問いに答えよ。

「42歳の男性。 腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便が2か月続いている。 近医の診察で機能性胃腸症と言われた。 ストレスが多い仕事に就いている。 強いストレスがかかると症状が増悪する。 舌苔は白膩。 脈は弦。」

 

問題137 最も適切な病証はどれか。

1. 脾胃の病証

2. 脾腎の病証

3. 肝胃の病証

4. 肝脾の病証

 

答え: 4

 

腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便は脾の症状。 ストレスで症状が増悪し、脈弦なので肝も関係している。 したがって、肝脾の病証であり、4が正解。

 

問題138 本患者の腹痛の性質はどれか。

1. 隠痛

2. 脹痛

3. 刺痛

4. 酸痛

 

答え: 2

 

本症例は肝脾の病証であり、ストレスによる肝鬱気滞から、肝気が横逆して肝脾不和となったものと考えられる。 したがって、腹痛の性質は気滞による脹痛であり、2が正解。 

 

隠痛は虚証、刺痛は血瘀(けつお)証、酸痛は気血不足や湿邪による痛みである。

 

 

次の文で示す症例について、問題139、問題140の問いに答えよ。

「28歳の女性。 第一子を出産したが、乳房の張り感はなく、母乳の出が悪い。 産後の疲労感はある。 なお、出産時には出血量が多かった。 顔色はくすんだ黄色、舌質は淡白。 脈は虚細。」

 

問題139 本症例で最も考えられる病証はどれか。

1. 陽虚

2. 痰飲

3. 血瘀

4. 気血両虚

 

答え: 4

 

乳房の張り感がなく、産後の疲労感があり、顔色がくすんだ黄色で、脈虚なので気虚。 出産時の出血量が多く、舌質淡白、脈細なので血虚もある。 したがって、気血両虚であり、4が正解。

 

問題140 本症例の乳汁分泌を促すために頻用されている経穴はどれか。

1. 地機(ちき)

2. 至陰(しいん)

3. 膻中(だんちゅう)

4. 関衝(かんしょう)

 

答え: 3

 

乳汁分泌には、気のめぐりの良い状態が必要である。 気会の膻中(だんちゅう)は、気機の調節や補気にすぐれており、母乳の出が悪いときの特効穴となる。 したがって、3が正解。