日本の酒場をゆく

日本の酒場をゆく

旅酒や 無頼な心の よりどころ

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★さすらう町の酒場の灯り、居酒屋行脚の、珍道中★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

与那国のディープな夜を満喫ew_icon_a401_20231130102709cd2.gif
与那国島には3つの集落がある。
その西側の久部良集落の外れの住宅マンション1階に(スナック 西崎)がある。
さあて、今夜のシメはスナックだ。
これより西側には飲食店はなく、草原の先は海になる。
日本最西端の酒場【飲食店】だ。
「いらっしゃい」
ふくよかなチイママが笑顔で迎えてくれた。
オネエのカラオケの歌声に、ボックス席からおじい、おばあが出てきて踊る。
与那国島の不良おじい、おばあはこんな時間に遊んでいる。
でもどこに居るか家族は知っているからいいのだろう。
かわって黒い半袖スーツに髪のきちんとした老人が一人で踊りはじめた。
ゆっくりした動きは手先まで気持ちのこもるのがよく判り、しっとりとして鶴の舞うような品がある。
しずかに舞い終え、カウンター端に戻った老人に尋ねてみた。
「私は琉球舞踊をずっとやっておったんです」
沖縄には琉球舞踊の道場がいくつもあるそうだ。
「本来、民謡に決まった踊りはありません。ここで何ものにもとらわれず、自分のために踊るのが、ジョートー【上等】さァ」と笑った。
メモメニューはない。
チャージあり。
「営業時間20:00~翌0:00/不定休」

 

 

 

 

松本の飲兵衛の秘密基地ew_icon_a401_20240107152411695.gif
JR篠ノ井線松本駅から歩くこと約10分、風呂屋小路沿いにある(単品割烹 濱)の茶色い麻のれんが清々しい。
表通りと違う松本の古い居酒屋のようだ。
玄関をあけるとカウンターに主人が一人立つ。
突出しの茹で海老から湯気がのぼる。
酒は焼酎のオンザロックにした。
五種の突出しをつまみながら一杯やっていると、すでに昔なじみの店にいるような寛ぎを覚える。
顔を上げると正面にホワイトボードが貼られている。
数およそ40。
その値段はどれも良心的だ。
450円の値がやたらに目立つ。
ピリ辛きゅうり350円からはじまり、馬もつ煮込み、カラスミ、鶏せせり焼、酢カキ、牛肉煮込み豆腐、揚げエビせん等々400円~450円。
刺身の盛り合わせが一番高く1300円。
これでもうこの店の安さが想像つくだろう。
品書きに珍しい「ムロアジ刺身」650円がある。
届いたムロアジ刺身はみずみずしいおいしさ。
地元の実力居酒屋だ。
注意ちくわチーズ揚げ400円
トマトチーズチキンカツ500円
赤イカととろカレイの天ぷら650円
ズッキーニと豚肉の塩コショー炒め650円
ハイボール450円
生ビール「中」600円
「営業時間18:00~22:30/日休」

 

 

 

 

一度では計り知れない創作料理の魅力ew_icon_a401_202405011950078e3.gif
とさでん交通電車軌道高知橋電停から歩くこと約4分、相生町の住宅街に居酒屋(利他食堂)がある。
全面ガラスの店内灯りが道を照らす。
逆に道側からは店内が丸見えだ。
それがまたどういう店でどんな客がいるかがわかり、入る安心感にもなる。
天井が高く、開放感がある店内。
メニューは、「瀬戸内産牡蠣とほうれん草のグラタン」「じゃがいもと海老のスペイン風オムレツ」のような、和素材を洋風に仕立てたものが多く、ワインにも日本酒にも合うようになっている。
「土佐あかうし もも肉のローストビーフ」など肉料理もいくつか。
もちろん刺身は充実し、パスタもある。
フロア女性も厨房の料理人も、雰囲気に和風居酒屋の要素は全くない。
注意四万十鶏の塩麹唐揚げ 仁淀川山椒ぱらり「1ヶから」300円
南国ごめん軍鶏の骨付きぼんじり 土佐備長炭焼き650円
ソテーしたきのこたちのサラダ イタリアンドレッシング740円
春野ファームベジコさんのバジルでジェノベーゼ スパゲティーニ1200円
【麦】釈云麦 「福岡/西吉田酒造」600円
【芋】芋屋 金次郎 黒麹「高知/芋舗金次郎」650円
「営業時間18:00~22:00/月休」

 

 

 

 

 

 

暗闇に漂う焼き肉の煙ew_icon_a401_202311300953447f1.gif
久部良港から徒歩約7分、与那国島線沿いに焼き肉屋(与那国丑牧場 肉人)がある。
焼き肉にハイボールは悪くない。
玄関を開けると小学校の教室のような店内にテーブル席が並ぶ。
客はなく、中年の店長が一人で立ち、何も声をかけてこない。
このまま注文せずに黙っているとどうなるのだろう。
「センマイ刺しとカルビ、それとハイボールね」
「はい」短く答え、タレを運んできた。
辛口と甘口が小皿に注がれ、ニンニクとコチュジャンは好みらしい。
壁の垂れ幕に「いわて牛 いわて門先丑牧場【有】」とある。
牛肉はいわて牛らしい。
まずセンマイ刺しが届いた。
よく茹でたセンマイ刺しはやわらかめで酢味噌が爽やかにおいしい。
いわて牛のカルビは生のまま差し出され、テーブルに用意されたガスロースターを使ってセルフで焼く。
目の前に立ち込める何とも香ばしい煙の匂いが食欲を掻き立てる。
タレはさまざまな調味料のうまみが複雑に絡み合い、ついつい酒が進む。
注意キムチ550円
野菜焼き600円
豚ホルモン650円
上カルビ1500円
Dewar'sハイボール650円
サッポロ黒ラベル ジョッキ650円
「営業時間18:00~23:00/日休」

 

 

 

 

銚子の海の幸を堪能する海鮮料理ew_icon_a401_20240504094845ac0.gif
JR中央線八王子駅北口から歩くこと約8分、みさき通り沿いのアパホテル1階に居酒屋(てうし)がある。
店はアパホテルとは別経営。
場所柄ホテルの宿泊客も多く訪れる。
この店の一番の売りは酒ではなく、銚子直送の魚にこそあるのだ。
そのことは品書きを見れば一目瞭然。
刺身をはじめ焼き物、蒸し物、サラダと多彩な魚介料理が並んでおり、刺身だけでも多い日には10種以上がラインアップされる。
まずはビール。
ングングング……。
ビールはサッポロ赤星と、通好みのラインアップ。
魚との取り合わせも申し分ない。
この日の刺身盛り合わせにはマグロ、タチウオ、ヒラメ、マダイが登場した。
マグロ刺身を口にすると鼻に抜ける香りと、鉄分の酸味に支えられた旨味が秀逸だ。
宿泊客で混んできた店内はネクタイ族が家に帰ったようにリラックスしている。
ここは水商売気のないわが家だ。
注意あじのなめろう200円
白身魚のカルパッチョ900円
きんめ鯛と舞茸の湯豆腐1000円
てうしの海鮮丼1500円
サッポロ 赤星600円
銚子ワイン 漁師は歌う 白 ソーヴィニヨン900円
「営業時間11:00~14:00・17:00~22:00/日・祝休」

 

 

 

 

 

値段明記で良心的な価格の寿司屋ew_icon_a401_20230710160159a88.gif
長崎電気軌道3号系統大学病院前電停から歩くこと約2分、浜口町の飲み屋街にある寿司屋(鮨安)に入った。
時刻は17時半。
寿司屋は20時を回った頃に行っても、いいネタがあるはずがない。
入口の水槽を見ながらカウンターに腰をおろした。
水槽にはアジやフグが泳いでいる。
「飲み物は何にしましょう」
「芋焼酎のロックで」
「はいよ」
メカジキを握ってもらい、イカを握ってもらい、イサキをついでにお願いする。
流石においしい。
長崎のこんな場所でやっていて、おいしくなければ逆に評判になるだろう。
それから握られたヒラマサ、トビッコ、エビの素晴らしさ。
最後はカッパ巻きにする。
これで腹は満足だ。
寿司屋は夕方の、客の少ない時間に訪れて、ひとりで楽しむのが粋だ。
この店へ来て、先ず感じることは、店の主人の、客へ対する心遣いである。
それは、単にサービスということだけではない。
酒の肴、寿司のありように、その心遣いを感ずる。
注意茶碗むし600円
バッテラ1000円
並にぎり1500円
中にぎり1800円
ふぐ白子焼2000円
ひれ酒700円
「営業時間11:30~14:00・17:00~翌0:00/第1・3月休」

 

 

 

 

 

高尾の愛すべき大衆食堂兼酒場ew_icon_a400_20231217082107a45.gif
JR中央線高尾駅から徒歩約3分、八王子市幹線2級24号線沿いに大衆食堂(食事処 かずき)がある。
創業は昭和51年。
この店は新参者が暖簾をくぐるのを躊躇うような、強烈な個性を放つディープな酒場とは毛色が違い、アットホームで和やかな雰囲気が何とも心地よい陶酔へと導く。
そんな家庭的な空間で味わえるのは、和洋を織りまぜた何ともつかみどころのない料理。
人気の「メンチカツ」をはじめ、「親子丼」「しいたけ丼」「かつ丼」「天ざるそば・うどん」「かき揚げそば・うどん」など、食堂を思わせる料理もあれば、「刺身盛り合わせ」や「まぐろぶつ切り」「山菜おろし」などといった酒肴も数多く揃う。
言ってみれば大衆食堂兼酒場であるが、夕方の客の八割は必ず酒も注文。
夕食に酒を合わせて、晩酌する客が多いのだ。
刺身盛り合わせと半ごはんに澤乃井の燗酒を合わせ、サッと流し込んで席を立った。
注意しらすおろし350円
まぐろぶつ切り680円
豚肉しょうが焼き650円
刺身盛り合わせ1200円
小徳利「澤乃井」400円
焼酎ウーロン茶割り400円
「営業時間11:30~14:00・17:00~22:30【土・日・祝】11:30~21:30/火休」

 

 

 

 

八王子の旦那衆が集う家庭的な居酒屋ew_icon_a401_20240504081840b5c.gif
JR中央線八王子駅北口から歩くこと約8分。
西放射線ユーロードの中町公園から八日町南交差点方面に歩くと居酒屋(利喜笑店)が見えてくる。
家庭的な料理、良心値段もあるけれどこの店の魅力は、陣頭指揮で店をきりまわす主人の飾り気ない張り切りだ。
「○○さん、いらっしゃーい」「ちょーっと待っててね」「今やってるやってる」。
常連には必ず名前で呼び、手より早く言葉が飛ぶ。
ちょっと声をかけても「はいはーい」と盛大な返事がすぐ返る気持ちのよさ。
それがうれしくあちこちから声がかかり、てんてこ舞いだが、客は限りない親しみを込めて遠慮しない。
店を手伝う奥さんにも「それじゃないそれじゃない」と叱咤し、おろおろさせ、「奥さん頑張って」と言いたくなり、なんともほほ笑ましい。
料理は「カンパチかま」「アナゴ白焼」など、居酒屋の模範となるようなものばかりが揃う。
注意海鮮のかき揚げ580円
クラゲのフリヒリ、プチプチ酢物630円
カンパチかま750円
刺盛/1人前1580円
ホッピーセット「白、黒」580円
アサヒスーパードライ「中」600円
「営業時間16:00~21:00【日】14:00~19:00/月・火休」

 

 

 

 

 

 

 

 

観光客で賑わう稚内の実力居酒屋ew_icon_a401_20240515210342106.gif
JR宗谷本線稚内駅から歩くこと約五分、北浜通から入った飲み屋街に居酒屋(北の味心 竹ちゃん)がある。
カウンターに着き、まずソイの煮物、ホタルイカの沖漬けで一杯やった。
品書きに「キンキ塩焼き」がある。
喜知次【キチジ】は冷たい海にすむ魚。
キンキといったほうがおなじみだと思う。
まるで人間様のような名前だ。
カサゴの仲間である。
キンキは北海道周辺でよく獲れる。
三陸でも獲れるが、三陸のは脂ノリがいまひとつ。
それに三陸では数獲れないから、ある程度の数が揃ってから出荷するので、鮮度もあまりいいとはいえない。
北海道のキンキは一目瞭然。
魚を持って前から見てみるとよく太っている。
魚体にこんもり厚みがある。
比べて三陸のは肉薄で、やや貧弱な印象がある。
焼き魚の横綱キンキは半身2750円と値もいいがやはりとてもおいしい。
メモ値段表示は外税。
注意ホタルイカの沖漬け440円
もずく酢「小鉢」600円
イクラ「小鉢」1000円
キンキ塩焼き「半身」2500円
礼文島昆布焼酎「甲類乙類混和」600円
「生ビール」サッポロクラシック「中ジョッキ」600円
「営業時間17:00~22:00/不定休」

 

 

 

 

 

 

礼文の真ホッケを知り尽くした海の男たちのちゃんちゃん焼きew_icon_a401_20240515201729199.gif
香深港フェリーターミナルから歩くこと約七分、海沿いにある居酒屋(ちどり)に入った。
品書きに礼文島の名物「ほっけのちゃんちゃん焼き」がある。
炭火を囲むようなテーブルに座ると、ほっけのちゃんちゃん焼きが始まった。
港に水揚げされるホッケを生のまま開き、たっぷりの味噌とネギをのせて焼き上げる。
箸で身をほぐすと、脂と味噌のうま味が絡み合う。
……これはうまい。
今まで食べたホッケとは全く別物だ。
酒もすすむし、ご飯もほしくなる。
ほっけのちゃんちゃん焼きは、サケのちゃんちゃん焼きよりも新しい料理だそうだ。
常連客が説明してくれた。
「もともとは味噌じゃなく醤油味だったんだわ。ホッケにネギをのせて、南蛮【唐辛子】と醤油をかけて、ストーブの上の鉄板やアルミホイルで煮ながら食べたの。それがいつからか味噌で焼くように変わったのさ」
味噌味のほっけのちゃんちゃん焼きは、この店が発祥だ。
注意焼きつぶ貝600円
ホルモン750円
月見うどん750円
ほっけのちゃんちゃん焼き1200円
昆布焼酎600円
生ビール「中」700円
「営業時間11:00~20:00/不定休」