洋服直し屋の日常

洋服直し屋の日常

服の直しや仕立ての仕事をしています。
日常で出会ったおもしろいこと、服の製図や
自分でできる修理方法など書いています。

          NO 16 20人ジーバーズ 尿のかほり       

 


                ジーバーズとは爺婆の複数形で、私の造語です

私は膠原病の1種であるミクリッツ病(難病指定300番)に罹患し、
治療薬ステロイド剤であるブレドニンの、重篤な副作用に陥りました。

その結果    
特発性大腿骨頭壊死症とくはつせいだいたいこつとうえししょう)
(難病指定71番)となり、歩行困難になりました。 
難病を2ヶかかえ、要支援1の認定を受けました。
(2022・令和4・3月末)に手術。経過良好ですが、

筋肉がやせ細ってしまい、ヘタレ歩行はイヤや。で、
退院後は週1で、筋肉強化のために、デイケアセンターのトレーニングに通っています。

そこでの高齢者(私が最年少)のトレーニングのあるあるを、
記事にしてみたくなりました。登場人物は、全~ぶ仮名です。

                                                                                                               

 

                

蔵持さん(94才)が入室されて、3か月経過した。
ある日のこと、彼女のそばに寄ると尿臭い。
え?尿漏れか? 

本人に
「おもらしされたんですか?」と尋ねるわけにもいかないわ。
ケアセンターの入室者は75~94才。嗅覚の劣っている人がけっこういらっしゃる。
そういえば、彼女のはいているズボンは毎回同じで3か月前のと同じ物だ。
だぶだぶジワの寄った毛玉付、さらに尿のかほりがプラスされたんだ。


彼女の使った後の椅子に、座りたくないなぁ。
座布団にも移り香が残っているんだろうな~。

周囲に誰もいないのを確認して

「蔵持さん、臭いますよ。息子さんに洗濯してもらってくださいな」
「え?何が?」

「そのスラックスですよ、いつから洗ってないんです?」
「そんなの覚えていないわよ」

衛生観念がないのは高齢が原因か?


60才の息子(無職)と、ささやかな生活を楽しんでいらっしゃるとばかり思ってた。

 

 

生活のすべてがパチンコ優先で、

それが好きなのは、小さいころ、母親に連れられて毎日パチンコ屋に行っていたそうだ。

 

       



蔵持さんの息子さんも、同じ人生を歩んでいらっしゃる。
 

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                                そんな恰好でどこへ行くの?
 
 
 
Mさんが、いきなり店に入って来て、
 ・・さん・・さ~ん(私の苗字)を呼びつつ
 
サンダルを片っぽふっとばしながら、
フイッティングルームにとびこんだ。
 
 
「ねぇねぇ、これのウエストこんなにきついのよ、大きくしてよ!」
 と言いながら、チャックが開いたままのパンツが
ずり落ちないよう抑えながら、表に飛びだしていった!
 
 な、な、な、何なの?どこへ行くの?  
私もすぐ彼女の後をおって、店の外に飛びだした!
 
4~5M先に車が1台停まっていた。
中に男性が1人いて、彼女はそのひとに
 「見てみて、チャックが上がらない、こんなに太ったよ!
いままではこれがぴったりサイズだったんだよ」 
 
 
男性は彼女のお腹まわりと、おへそと、
ショーツを見て、苦笑いしていらした。
そのようすを見て、私は思わず吹きだした!(笑)
 
イメージ 1
あっけらかん なんだな
私はこんなことは絶対できない。
たるんだ腹なんぞ他人には絶対見られたくないもん。
さんはなんでもおおざっぱなのだ。
高慢な感じがして、好きではなかったが、
こんなかわいい一面があったのかとちょっと驚いた。
 
人を好きになる瞬間って、
相手が異性でも同性でも同じなんだな。
 
   
 
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                                            娘婿


6年ぶりに娘が帰国する。
娘の夫(名はクリス、私とは4度目の再会)。初孫(4才半)とは初対面である。

(私)
「あんた! 私は今までのお母さんとは別人よ。
歩けない、食べられない、シワまみれ、ゲゲゲの鬼太郎の
砂かけ婆そのものよ。こんなみじめな姿をあんたたちに

見られたくない。                            

会いたくないの。

 

(娘)
「いまさらいいじゃん、もー若くもないんだし。

こ汚くなってあたりまえよ」
 

「せめて、おいしいおふくろの味だけでもねぇ。
食べさせてあげたいじゃん。

それすらもできないのよ。
できない私のプライドはダダ下がり、

メンタルおかしくなりそーよ。
あんた、家の中を4つ足でほふく前進している、
自分の母親を想像できる?あわれで情けなくって泣くよ!」

「日本には10日間いるから、1拍だけでもさせて。あとはホテルに泊まるから」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

実家での初日

「おかあさん、風呂場がカビだらけよ。きれいずきだったのになんで?」
 眼もわるくなってんだなー。それとやせたね~。ガリガリ君キャンディーだよ。
 風呂と部屋のそうじしていいね?なんでヘルパーさん頼まないの?」


「私は昭和の古き良き日本の良妻賢母なの。自分のパンツの洗濯・買い物、
家の掃除などでヘルパーさん雇うなんて、そんな恥知らずなことできないわよ」

世界中の男が「妻にするなら日本の女を!」と叫ぶには
それなりの理由があるんよ。あんたのクリスもそう言っていたのを忘れたの?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

しばらくして、風呂場のほうからキャッキャと笑い声が聞こえてくる。
親子3人で入浴中のようだ。

うちのバスはかなり狭い。私一人でもバスタブの中で足を伸ばせない。
クリスは背が高い。娘も大柄で、チビは男の子でけっこう体格がいい。
どーやって入浴するんだ?

結婚5年目といえど、娘は夫にムッキムキの裸体を見られて恥ずかしくないんかなぁ?
その心境、私にはわからん・・・・・・。

「ニュージーランドハズバンド」という言葉がある。
    または「キウイハズバンド」という人もいる。
 

ニュージーランドの青年は「かなりの育メン」で有名だ。
クリスもその言葉どおり、育児・家事に積極的でそれを苦に思うどころか、
楽しんで参加している。

女房が体調の悪いときは、食事、洗濯、掃除すべてオイラにまかせとけ~タイプ。
子供の幼稚園の送迎・排泄・PCのトラブル・将来の家族の生活設計プランなど。

嫌味なくやってこなす。



妙なのは「チビを日本に留学させたい!」

理由を訊くと

「ニュージーランドは、教育費は無料です。
そのため学生は勉学に積極的ではないです。
日本の高度な知的レベルと、日本人の礼儀礼節を
重んじる国で思春期を過ごせば、チビは人間的にも成長でき一番いいと思うんです。

正しい日本語も習わせたいですし。
そのためには家族3人、日本に引っ越しもOK!です」

妻を迎えるには日本の女性を!と35才まで結婚しないでいたという彼。

中学生の時、日本とニュージーランドとの「交換留学生」として

北海道に1週間ほど滞在して日本が大好きになったんだ。

 


 

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                               どんどん痩せてくる


病気以前の私。
太りやすい体質のため年中ダイエッターで、
油物はいっさい食べなかった。
鶏のから揚げはころも抜き、てんぷらなど論外。

ところがミクリッツ病というやっかいな病に罹患(りかん)し、
ステロイド薬を服用することになった。

医師の最初の助言

「ステロイドの主な副作用は
体の免疫力が極端に低下するために、
あらゆる症状が出始めかつ悪化します」 


1.    糖尿病  (ステロイド糖尿病) 
2.    消化性潰瘍(ステロイド潰瘍) 
3.    血栓症    (ステロイド血栓症)
4.    精神症状 (ステロイド精神病) 
5.    満月様顔貌(ステロイドムーンフェイス、動脈硬化、中心性肥満 、高脂血症)
6.    特発性大腿骨頭壊死症(ステロイドが原因で股関節の骨頭に
       血が通わなくなって骨が壊死する)人工関節に取り換えなくてはならない。


                          



7.    その他  (ステロイドの副作用がいっぱいありすぎて、全部覚えきれません)

この5番目の、中心性肥満 、高脂血症がやっかいで、太りやすくなる。
平均10キロはウエイトオーバーになるということだ。
「油分の代謝が悪くなって太る」と、言いかえたほうがわかりやすい。
私も5キロは太った。

だがミクリッツ病の治療4年目に入り、今年(令和6年2月に)
塞栓性脳梗塞(そくせんせいのうこそく)でぶっ倒れて以来、
食欲が全くわかない。脳梗塞は退院してからが体調の崩れが起こる。
やたら倦怠感がひどいのである。あたりまえだわね。
脳の血管が糞づまりをおこしたんだもん。

体がダル重~~~・・・きのうも今日もダル重~~~・・・
椅子から立ち上がれば、下半身が激痛としびれで歩けない。

救いは
「座っている時、横になっている時に激痛はない」

移動手段は「キャスター椅子」
家には段差があり、車いすは使えない。
6:00の閉店時間になると、
階段をボルダリング状態で
よじ登り、寝る準備しかも夕飯抜き                  
食べる気力がないのである。
 

 

とーぜん痩せるわなぁ。

ここ1か月で5キロ減った
メンタルまでおかしくなったのではない。

あご関節が再びグラついてきたからである。
咀嚼(そしゃく)できないと味がよくわからない。
おいしいかったわ~と、食べた後の幸福感がない!

おまけに仕事が大繁盛で昼飯も食べるヒマがない。コーヒーとチョコレート3~4こで
胃をごまかして仕事に没頭していることが多い。

チョコとコーヒーは私のメンタル用バッテリーで、
脳内麻薬みたいなもんだ。ゴデバでなくて安いチョコでいい。充分に楽しめる!

必須栄養素を完備した「人間用栄養補助食品」はないのかい?
宇宙食でもドッグフード風でもなんでもいいわ。チョコ味でね。

「胃ろう用」はいやよ。自分のおくちで味わって、噛みしめて食べたいのよ。

新鮮な旬の材料を選んで自分で調理して、食らう!
生きるというのはまさにこのことだ!
お金も名誉も要らん、私は元気な足と咀嚼力がほしい!

                                                                                       

 

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                  病気で困った時は必ず知らせてね


あなたの助けになれるかもよ。

こんな優しい言葉かけをしてくれた近所の主婦。
入院の日時が前もって決まっていれば、お客さんから預かった

修理済みの服の受け渡しができる。

ところが突然の発病となると状況が一変する。脳梗塞、心筋梗塞などは
分刻みで症状が悪化する。

そんな時にお客さんへの連絡が不可能な場合が多い。
言葉さえしどろもどろなのだ。

今回の私の 塞栓性脳梗塞(そくせんせいのうこそく)がそうだった。

受け渡しをすればいいだけの、仕上がりが完成した洋服が3点あった。
これをどうやってお客さんの手元に届ければいいのか?
電話番号も知らないかたもいらしゃった。

そーだ!こんな時あの優しい言葉かけをしてくださったご近所さんに
お願いしよう。私の願いを聞いてもらおうと、訳を話し了解を得た!

そして、玄関ドアに張り紙をした。お客さんには脳梗塞だとは言えない。
脳梗塞は脳の病気である、偏見を持たれることが多々ある。

「足を骨折しました。入院します。洋服の修理が完了している〇〇さん、▽▽さん、
◇◇のお洋服は近所の★★さんに預かりをおねがいしてあります。
うちの店から80Mくらいの所にお住まいです。
携帯の電話番号は123-456-7890です。こちらへお電話されて
洋服を受け取りにいってくださいますか?


かってながら相済みません。
ご迷惑をおかけしますので、料金はすべて無料とさせてくださいませ。


ところが、この私の書いた張り紙は当日にはがされてしまっていた。
★★さんがはがしたのだと後で知った。

理由は
「うざい」ただそれだけ。


たしかに彼女の言う通りだ。本人にしてみれば、
さて家事も片付いたしお昼寝すっか! とこたつに潜りこんだら知らない人から電話があり、
いまから洋服を取りに行きたい。お宅の場所はどこですか?

たしかにうざいわなぁ。
私の一方的な頼みで★★さんを怒らせてしまったのだ。

この場合と対象的なのが浅田さん。

退院したその日

「具合はどう? 雪がちらついてきたわよ。冷蔵庫空っぽじゃない?
買い物にもいけないんじゃないの? 
2~3日はこれを食べててね。

      

スーパーバッグに山盛りの食糧を見たとき、
「ありがと~!!」と言えなかった。
浅田さんの厚意は簡単にありがと!と言える生やさしい厚意ではない
感謝の気持ちを表すのにいい言葉が見つからない。
私は無言のままで、眼だけがウルウルしている。

私のそばには、こんな素敵な隣人がいらっしゃるんだ!
外はボタン雪がちらつき始めた。
2週間の入院で臭いの溜った生ごみは明日の朝に出そう。 
夕ごはんは、浅田さんから頂いた巻きずしと
野菜てんこ盛りのスープを作ってごちになるか!

うざいと言った、★★さんはビールが好物である。
彼女に2ダースのビールをお礼するつもりでいたが、止めた。

そして
浅田さんもいつかは、病気で入院されることがあるだろう。
病院の、男女兼用のダサいレンタル用のパジャマではなく、
こぎれいなパジャマを作ってプレゼントしよう。

 

 

 

       

浅田さんに似合いそうなステキな生地を、ネットで探し始めた。

浅田さんはこの日以後も、2日おきに食料を運んでくださっている。                                                    

 

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