安倍政権が7年8カ月に及ぶ過去最高の長期政権を達成した直後に退陣した。安倍政権の一番の功労は間違いなくアベノミクス。まずは経済政策で一番重要なのは雇用である事を覚えておいてほしい。なぜならそれは人命に直結するから。ここではざっくりとではあるが、主に雇用を中心にアベノミクスを総括してみる。

アベノミクスを振り返るにあたり、それ以前の経済状況を見ていく。2009年のインフレ率は-1.35で、その後もマイナス値を更新していく。お先真っ暗の時に野田政権が解散に打って出た。そして第2次安倍政権が生まれた。安倍総理はアベノミクスと言うマクロ経済政策をブチ上げ「デフレ脱却」を目標に掲げた。そして黒田バズーカが発射され財政出動もした。インフレ率は急回復。2014年には2.76という目標値を超える数値を叩き出してる。このまま行けば間違いなく景気が回復してた。だが安倍政権はよりによって消費増税という全く逆の政策を実施してしまう。これにより一気にインフレ率は下がりその後も1%以下で推移した。安倍政権の最大の反省点は消費税を2回も上げて税率を2倍にしてしまったことだ。

さて失業率を見てみよう。バブル崩壊以降、日本の失業率は高止まりしてた。最悪だったのは2002年の5.36だった。その後も4%辺りをうろうろするが2009年には再び5%を超えた。そしてアベノミクスの効果が出始めた2014年には3.58%まで回復する(雇用は遅行指数)
「日本の完全失業率は3.5」という意見もあったが、それをあざ笑うかのように失業率は改善を続けた。
そして2017年には2%台へ。金融緩和の恩恵により雇用は一気に回復した。ここまで来ると「なぜ物価が上がらないのか」という話になる。通常、完全失業率を達成すると物価が上がり始めるがインフレ率はほぼ横ばいを続けた。これは完全雇用に達していなかった事を意味する。不景気が続くと働くことを諦める人たちが増えるがこの数が想像を超えて多かったと言うのが多くの専門家の意見だ。

次に就業者数。バブル崩壊以降、下降を続けた就業者数は安倍政権が生まれる直前の2012年には6279万人まで減った。安倍政権が始まると急上昇し2019年には6742万人まで増えた。つまり安倍政権は2020年を含めると500万人分の仕事を作った事になる。これは驚異的な数字である。ちなみにこの中の200万人は正規雇用であり「非正規しか増えてない」という批判は虚偽である。

名目GDPを見ると2009年には489兆円まで落ち込んだ。これもバブル期以降最悪の数字。ちなみに2019年10月の時点では557兆円まで増えている。安倍総理はGDPの目標として600兆円を掲げていたがこれを達成する事は出来なかった。その原因が2度に及ぶ消費税増税にある事は明らかである。

アベノミクスで雇用が改善したのは間違いない。そしてそれは金融緩和の恩恵である。これは否定のしようのない事実。ちなみに大卒の就職率はコロナ前ではほぼ100%まで到達してる。これは統計開始以降最高値である。時々「雇用が改善したのは労働人口減少のせい」という人が居るがこの主張だと「就業者数が増えて失業率が改善した」という事実を説明できない。アベノミクスを批判するなら正しい批判をしてほしい。

続いて自殺者数を見てみる。まず失業率と自殺者数には高い相関がある事を知ってほしい。特に男性の失業率と自殺の相関係数は0.93であり、最大値の1に近い。日本の自殺者数は2003年には3万4千人を超えていたが2019年には2万人を割った。これは統計開始以降、最小の数字である。雇用を復活させたのは人命を救ったのと同じなのでその功績は非常に大きいものだがそれを踏まえて、くどいようだが2度の増税は失敗だった。あれさえ無ければ賃金は明確にあがり、安倍総理の目標であったGDP600兆円にも届いただろう。思い起こせば去年の10%増税の時は安倍政権支持者のほとんどが増税に反対の声を上げたのは非常に興味深かった。それでも上げてしまった。今回は対策としてポイント還元や軽減税率を織り込んだがその効果は非常に限定的でGDPに甚大なダメージを与えてしまった。

今の日本の財政は健全なのでそもそも増税する理由がない。税収は2009年に38兆円台まで落ち込んだがアベノミクスにより2018年には60兆円の大台を超えている。つまり景気をよくすれば税収は勝手に増えていくので景気を悪くする消費税には全く理がないことがここでもわかる。


「ちなみに実質賃金が下がった」と言う批判については自分のツイートを貼っておく。飯田泰之氏も「これでほぼ説明できる」と言っている。


日本の経済政策は「少し良くなると慌てて緊縮政策をして台無しにする」と言う歴史を繰り返している。

国民は「デフレ脱却」を叫び続けなければならない。