エゾタヌキ飼育日誌(R6.4.6)
えぞたぬ担当です。本日の天気は晴れ。今日のたぬきのご飯は馬肉225g、ドックフード20g、鹿肉ジャーキーひとつかみ、オオナゴ1匹でした。あんの思い出写真をスライドショーにしてみました。(音楽は甘茶の音楽工房さんより)あんの写真は非常に多く、もはやまとめられませんでした。たくさんの記録と、皆さんの記憶に残っているのではないでしょうか。語り尽くせないので、ここではあんの実績を辿っていきます。思い出はどこかで配信か「たぬきトーク」でお話ししようかと思います。さて、我々飼育員は、「動物園の役割」というものにそって働いています。ここではこの役割にそって足跡を辿ってみます。(公社)日本動物園水族館協会「動物園の役割」4つの活動 | 動物園と水族館www.jaza.jp1 種の保存希少動物の保護など現代の方舟としての役割を持つ動物園。上記JAZA加盟園館で行っている種保存会議では希少種等の動物を血統登録簿で管理しています。今回「エゾタヌキ」という種はIUCNで絶滅の恐れがない種(LC)となっているので、今の所は動物園などで遺伝子を保存する必要性はありません。The IUCN Red List of Threatened SpeciesEstablished in 1964, the IUCN Red List of Threatened Species has evolved to become the world’s most comprehensive information source on the global conservation status of animal, fu…www.iucnredlist.orgですが、北海道に生息する野生動物のこと(生態や環境問題など)を知って貰い、継続して展示を行うため在来種の血統登録に動き始めたのが「北海道産いきもの保全プロジェクト」でした。もともと旭山動物園のえぞたぬ担当さんと情報交換していたので、シロやあんの飼育ノウハウなどを教えていただいていたこともありましたし、円山動物園のえぞたぬ担当さん達ともお話していました。そのような取り組みがプロジェクトでも行われるようになり、実際の運用にあたって大切な一歩を、ぽてりと残したのではと思います。(画像1:あんとしろ、あめ。拡がる繋がるたぬきの輪)2 教育・環境教育当園で行ったあん達に係るものは、おびZoo寺子屋(生態などについて)・動物園塾(人獣共通感染症)・機関紙ZooZoom(野生動物の困りごとについて)・スポットガイドや各種体験行事(インターンシップや学芸員実習補助)・YouTubeやInstagramでの配信(自然的側面と文化的側面)・旧Twitterなどでの日常的な配信・各種広報媒体(TV・ラジオ・新聞・ネット記事など)かなと思います。それぞれの方法で、エゾタヌキを通して、人と自然環境のことを伝えただけに留まらず、文化(民話やアイヌ文化)・信仰などなどを伝えることにも貢献していただきました。日本固有のタヌキ(ホンドタヌキ・エゾタヌキ)のこと、皆さん知って学んでもらえたかなと思います。(画像2:ひだまりたぬき)3 調査・研究在来種のエゾタヌキは、希少種等よりは飼育技術(繁殖技術など)の必要性は低いですが、飼育下という制限環境におくため、動物福祉上必要な飼育ノウハウの蓄積にも貢献いただきました。帯広畜産大学などへの研究協力のほか、このエゾタヌキ飼育日誌も、ネットからアクセスできるオープンデータ(アーカイブ)として残しています。個人でタヌキを保護した方などの情報がネットにあったので、えぞたぬ担当から見た情報を補えればという感じでした。また、上記いきものプロジェクトの繋がりが出来たことで、現在病院で飼育している疥癬症だった「はな」の情報共有も行うことができ、当園での飼育技術の蓄積にもなりました。また、北海道の動物特有の身体の季節変化(換毛ほか)や、あんと一緒に行ったこだぬき達の子育て(みんなすくすく育ちました)、全国タヌキ飼育園の獣舎環境を参考に更新し続けた狐狸舎もあります。そして「埋もれたぬき」として椛(もみじ)を活用したエンリッチメントはたくさんの方々に見て知っていただけたほか、飯田市動物園のリュウくんなど色々な動物たちが落ち葉に埋もれていた気がします。ちなみにカシワ・ミズナラなどの硬めの葉っぱは砕かれにくいです。雨の当たらない場所でモミジ系を使うと、タヌキたちが踏んで砕けて土に帰っていくので、その後の片付けも楽でした。(画像3:埋もれたぬき)4 レクリエーション普段のSNSなどを通して皆さんにあん達を見ていただいていました。いきものが持つ魅力や美しさ、エゾタヌキという種の魅力と生き方、そして皆さんの日常に溶け込めばと思いお仕事に行く時間の前に投稿などもしていました。あまり踏み込めない、踏み込まない世界ではありますが、あんがどこか偶像になっている様子も見られたので、心の支えになればと思い投稿をしていた時期もあります。(画像4:あご裏たぬき)さて、真面目にあんの足跡を辿ってみました。現在飼育しているしろ・あめももちろんですが、あんは、たくさんのもの・ことを残してくれたエゾタヌキであり、えぞたぬ担当を構成する一部でありました。エゾタヌキ あん メス 11歳と10ヶ月当園の地元の方のファンのみならず、SNSなどを通してたくさんの方々に愛していただきました。皆さんの記憶と思い出の中のどこかで、これからもぽふっと、あんやシロが出てくるかもしれません。生前も皆さまからたくさんの差し入れや、寄付などをいただきました。ありがとうございます。また、本日お花も届いておりました。ありがたい限りです。なお、狐狸舎でのあん・シロ及びしろ・あめ・ゆき・りく・うみの飼育に際し、飼育情報のみならず各種相談などにもご協力いただいた旭山動物園・円山動物園のえぞたぬ担当さま、北海道産いきもの保全プロジェクトの皆さま、北きつね牧場・盛岡市動物公園ZOOMO・アクアマリンふくしま・東武動物公園・多摩動物公園・野毛山動物園・夢見ヶ崎動物公園・須坂市動物園・東山動植物園・天王寺動物園・池田動物園・わんぱーくこうち・徳山動物園 さま、専門知識や各種情報・標本を提供いただいた帯広畜産大学の柳川先生・押田先生・浅利先生・連携協定担当さま、狐狸舎改修に協力いただいた株式会社レイワさま、獣舎資材の提供をいただいた有限会社関口造園さま、飼料の提供をいただいた株式会社とかち河田ふぁーむ・東洋食肉販売株式会社・株式会社とかちスロウフード さま、動物園のあるまちプロジェクトを運営してくださった十勝毎日新聞さま、各種協力をいただいた帯広市広報広聴課、みどりの課(帯広の森・はぐくーむ、みどりと花のセンター)、農村振興課、環境課、観光交流課、図書館、百年記念館の各担当者の方々、NHK「ウチのどうぶつえん」・「あさイチ」ほか報道機関の皆さま、ねとらぼ生物部ほかネット報道機関の皆さま、タヌキを扱っていただいた森長あやみ先生、奈川トモ先生、帆先生、菊池咲さま、ぽんぽこさま、タヌキネットワークに関わるすべての皆さま、そしてシロ、あん達エゾタヌキを愛し、様々な応援をいただいたすべての皆さまに感謝を申し上げます。たぬのモフみと共にあらんことを。えぞたぬ担当