栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第85回オークス回顧~「1/4ハッピーパス」チェッキーノの娘が戴冠

2024-05-20 10:29:46 | 血統予想

東京11Rオークス
◎15.サフィラ
○7.ステレンボッシュ
▲13.スウィープフィート
△12.チェルヴィニア
×8.ホーエリート
×14.ライトバック
×17.タガノエルピーダ
ステレンボッシュはエピファネイア×ルーラーシップ×ダンスインザダークで、牝系はディープインパクトと同じウインドインハーヘア。ニジンスキーのクロスを重ねて背中が長い体型で、追われると4輪駆動で末脚を伸ばす。どこから切っても大箱向きの中距離馬にしか見えず、桜花賞を勝ちきったのはモレイラ恐るべしと言うしかないのだが、能力がないとできる芸当ではない。フローラ組はピンとこないし、桜花賞組で東京2400になって最もプラスがあるのはステレンボッシュだ。
スウィープフィートは名牝スイープトウショウの孫で、スワーヴリチャード×ディープスカイだからこれも血統は中距離。折り合いが敏感なのでユタカはここも後方一気だろうが、折り合えば2400はOKだしマイルの高速戦よりはいいだろう。桜花賞はチューリップと比べると出来落ちに見えたし、4角で締められたのも痛かった。今週の坂路では速い時計で走破するも、最後までブレずに真っすぐ走っていたのは好感。間違いなく桜花賞より出来はあるし、桜花賞よりパフォーマンスは上げられる。
チェルヴィニアの母チェッキーノは4輪駆動の中距離馬でオークス2着。本馬もハービンジャーとチェルヴィニアを足して割ったイメージで、ナスペリオン的なしなやかストライドで走る。桜花賞は大外枠でスタート後からうなって追走してしまい、根が中距離質だけにああなると苦しかった。ルメールに手が戻ってアルテミスの再現を目論む。
「マイルで最もハッとする脚を使うのはライトバック」と桜花賞で◎にしたが、母父エクシードアンドエクセルはデインヒル系の短距離型で、この影響も感じさせるグラマーな体つき。スピードに乗ったときのアクションも豪快で、桜花賞上位組では最もマイラー質というべきだろう。2400だと折り合い面でもまだ心配が…。
スタミナ勝負になったときのハギノピリナ的ヒモ穴としてタガノエルポーダとホーエリートは取り上げておきたいが、現在単勝54倍の11人気、ここまで人気が落ちるなら◎サフィラで打ってみたい。サリオスの全妹で、サラキア、サリエラ、エスコーラの3/4妹。母サロミナは独オークス馬。シュネルマイスターも近親の有力ドイツ牝系だ。サリオスのような肉量豊富なマイラーっぽさは感じられず、アルテミスSも中距離馬らしい末脚の伸ばし方で2着。クイーンCでは直線割れずじまいで、サラキアやサリエラと同じく馬群はイマイチのようだが、揉まれず運べれば2400で底力とスタミナを発揮するのではないか。その点で外枠を引けたのはありがたい。

----------

例によってNETKEIBAの全頭解説から1~3着を

チェルヴィニア
ノッキングポイントの半妹でサブライムアンセムのイトコ。母チェッキーノはコディーノの全妹でオークス2着。母母ハッピーパスは京都牝馬S勝ち。この牝系のハービンジャー産駒といえばカービングパスやスティーグリッツ。父と母を足して割ったイメージで、ナスペリオン的なしなやかストライドで走る。桜花賞は大外枠でうなって追走してしまい、根が中距離質だけにああなると苦しかった。ルメールに手が戻ってアルテミスの再現を目論む。(距離○スピード◎底力◎コース◎)



ステレンボッシュ
ヴァルコスやロカの姪で、ドゥラドーレスやレガレイラやアーバンシックのイトコ。母ブルークランズはJRA3勝(芝1800~2000)。牝祖ウインドインハーヘアはディープインパクトの母で子孫が繁栄しつづける名繁殖。父エピファネイアはエフフォーリアやデアリングタクトなどを出し成功。血統どおりの長手の体型の中距離馬で、今でも桜花賞を鮮やかに差し切ったのが驚きなほど。桜花賞組で距離延長が最もプラスと思われるだけに、最有力というほかない。(距離◎スピード○底力◎コース◎)



ライトバック
インザオベーションの下で、3代母Lake Toyaの産駒にサンタラリ賞(仏G1・芝2000m)のSobetsuがいる。牝祖シンコウエルメスはジェネラスの妹で、エルノヴァの母で、ディーマジェスティやタワーオブロンドンの母母。母父Exceed and Excelはデインヒル系の短距離型。名門牝系のキズナ牝駒で、母系にDarshaanが入るだけに斬れ味が秀逸だが、この母父であの折り合い。他の桜花賞上位組との比較でいっても、2400がプラスとはいえないだろう。(距離○スピード◎底力◎コース◎)



最近のオークスは別路線組もけっこう絡むんですが、今年はフローラもスイートピーも忘れな草もフラワーもあんまりピンとこないレースで、スタミナ上位のタガノエルピーダとホーエリートは拾っておきましたが、まあ桜花賞組の後先になりそうな年だなとは思っていて、でも同じように王道を歩んできたサフィラが距離延長は間違いなくプラスだしあまりにも人気がないので、馬券はここから買ってしまいました(^ ^;)

桜花賞組の比較としては、予想コメントに書いたように、東京2400になって最もプラスが大きいのはステレンボッシュと考えられ、折り合いがつけばスウィープフィートが出来アップのぶん、折り合いがついても根っこがマイラーっぽいライトバックに先着するのではないかと

チェルヴィニアは桜花賞は大外枠でうなって追走してしまったし、チェッキーノ似の中距離馬なので母が2着した舞台でルメールに手が戻って巻き返し必至と考えられましたが、堂々の2人気ですからそう考えた人は多かった

終わってみれば、桜花賞でかかったチェルヴィニアと、返し馬でかかったステレンボッシュと、アルテミスでかかったライトバックで決まって、いつも言うことですが重賞レベルのレースでかかる馬は強い、制御できないぐらいのエンジンを搭載しているのだというね

外国人騎手やリーディング上位騎手に良い馬が集まりすぎという意見もあるでしょうが、走る馬ほどエンジンがよくて性格も激しいことが多いですから、ルメールや川田やモレイラなんかはそういう危うい素質馬を乗りこなしているんだと、実戦でケイバを教えながら乗りこなしているんだということを、何度も実感させられる24年クラシックロードです

ステレンボッシュは右後を落鉄していたということで、直線で手前をコロコロ替えていて、特に左手前で数完歩走ったあと大きなアクションでよっこらしょと右手前に替えたところ、あそこは少し走りにくかったのかもしれないですね

サフィラは直線に入るところでホーエリートにかぶされてAureole魂逆噴射、そのタイミングでルメールがAureole7×7のチェルヴィニアを外に持ち出すのが見えましたが、しかし原くんは追える自信があるのか強気に乗ってきますなあ…

ライトバックは折り合いはバッチリついたし直線も詰まることなく縫って差して、坂井瑠星はこの馬のマイラーとしての爆発力、Darshaanもち牝馬としての斬れを100%引き出したと思いますが、それであのゴール前の脚色ですから、前2頭とは距離適性の差はあったかと

スウィープフィートは映像的には最後伸びあぐんだようにも見えますが、チューリップは稍重のHペース(レース上がり35.4)を豪快に追い込んだわけで、今日は離れた3番手以降は中だるみの上がりのケイバで、残り400mを22秒前半で走るようなレースはあんまり向いていないと思うし、乱ペースの秋華賞なんかでまた一発あるのでは

「ハービンジャーってすごいんですよ! ダートと短距離はダメで、ほとんど芝マイル以上だけで毎年リーディング10位以内にいますからね(笑)。欧州からの輸入種牡馬としてはトニービン以来の成功といえるのでは」

社台スタリオンに見学に行くとこう言われるんですが、長く緩い繋ぎをよく伝え重厚なストライドでビョーンビョーンと走りますから、代表産駒のほとんどがノーザンファーム産ノーザンファーム育成なのも頷けます

チェルヴィニアはハービンジャー産駒としては7頭目のG1ウィナーとなり、母父キングカメハメハはブラストワンピースやモズカッチャンと同じで、母系にNureyevが入ってNijinskyをクロスするのはディアドラやペルシアンナイトとも同じ

ハービンジャー産駒として最も成功しやすい配合パターンで、Dansiliの母Hasili(5頭のG1馬と1頭のG2馬を産んでいる歴史的名繁殖)の血を活かした配合パターンといえますが、そのあたりは何度も書いてるので「ハービン産駒は名牝Hasiliの血を増幅するとHasiliます」とかで検索してください(^ ^;)



全兄コディーノがいかにもハッピートレイルズ牝系らしい小脚使いだったのに対し、妹のチェッキーノは伸びのある体型で4輪駆動で走る中距離馬で、フローラSに勝ちオークスはシンハライトと大接戦の2着

その後はマイル戦を2回走って振るわず引退しましたが、初仔のノッキングポイント(父モーリス)も2番仔のチェルヴィニア(父ハービンジャー)も、母の面影を強く感じさせる中距離馬です

チェッキーノの父キングカメハメハはNorthern Dancer4×4・6ですが、母ハッピーパスはNorthern Dancerの血を全くもたず、つまりチェッキーノはNorthern Dancerのクロスをもたないので、Northern Dancer5・5×4・5のモーリス、Northern Dancer4・6×4・5のハービンジャーとの配合で成功しているのも順当オブ順当(3/4Northern Dancerクロス)、ちなみに2歳の息子アルレッキーノは父がStorm Bird3×3のブリックスアンドモルタルです

ハッピーパスの子孫はロードカナロア(Northern Dancer5・5・7×4)との配合でもサブライムアンセムやジネストラが出て高確率で成功、ハービンジャーとも他にカービングパスやスティーグリッツが出てほとんど外しておらず、とにかく「3/4Northern Dancerクロス、1/4ハッピーパス」的にまとめてしまうとだいたい成功してしまうというね

「ハッピーパス→ウインドインハーヘア→シンコウエルメス、藤沢和雄完全勝利じゃないか」

りろんちさんがこうつぶやいてましたが、いずれも素晴らしい繁殖になるでしょうから、娘たちがオークスで手合わせという日もいつかくるのでは

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日曜のボツ予想~Unbridled≒Impish大好き

2024-05-19 09:50:45 | 血統予想

プリークネスはKダービー馬Mystik Danを抑えてSeize the Greyが優勝、私が大好きなUnbridled≒Impish3×4で、名門Lady Be GoodのなかでもPrivate Accountを父とするShoppingは太い枝ですよね





ちなみにArrogateの代表産駒の一頭Fun to Dream(G1ラブレアS)はUnbridled≒Wavering Monarch3×3、カフェファラオはUnbridled≒Wavering Monarch4×4、Wavering MonarchとImpishは父系牝系が同じ3/4同血的関係で、Wavering Monarch父系の最有力後継種牡馬RunhappyはWavering Monarch≒Unbridled3×3なのです



エアグルーヴCはダートやからエアグルーヴの血を引く馬が1頭もおらへんがな…と軽くボヤいてから、リオンディーズ×シンボリクリスエスでSeattle Slew的な長手体型でコーナリングがイマイチで、前走東京での内容がよかった◎ネッケツシャチョウがもういっちょ、古馬になって本格化中のフリオーソ産駒○ヴァンドゥランも距離延長で有力

NETKEIBA「厳選予想 ウマい馬券」ではオークスとフリーウェイSと東京5Rを予想していますので、日曜もよろしくお願いします(競馬道OnLine「今週のBLOOD穴ライズ!」は栗山さんの担当)


http://yoso.netkeiba.com/?pid=yosoka_profile&id=24&rf=umatop
http://www.keibado.ne.jp

コメント (33)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

土曜のボツ予想~ナスペリ的ストライドでキッチリ

2024-05-18 10:09:38 | 血統予想

カーネーションはルメールの◎カンティアーモにかぶってますが、配合どおりのナスペリオン的ストライドで、東京1800ならキッチリ差し切るかと
ちなみにリビアーモ仔は全芝[8-7-5-33]で東京芝[3-4-1-6]新潟芝外[3-1-0-4]でございます



大箱がいい○メルトユアハートがひとまず相手で、ドイツ魂▲ミスティアとLyphardとSir Ivor≒Terlingua≒Droneの継続クロスでSir Gaylord柔い△スノーディーヴァのハナ切ったほうがうるさそう

NETKEIBA「厳選予想 ウマい馬券」では平安SとメイSとメルボルンTを予想していますので、今週もよろしくお願いします(競馬道OnLine「今週のBLOOD穴ライズ!」は栗山さんの担当)


http://yoso.netkeiba.com/?pid=yosoka_profile&id=24&rf=umatop
http://www.keibado.ne.jp

コメント (18)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5/11,12の血統屋コンテンツ推奨馬の結果速報

2024-05-15 13:46:26 | 共有クラブ

■『一口馬主好配合馬ピックアップ(2020)』で栗山求が推奨したウインマーベル(牡5歳)が土曜東京11Rの京王杯スプリングC(G2・芝1400m)を勝ちました。

★ウインレーシングクラブ
父アイルハヴアナザー
母コスモマーベラス(フジキセキ)
牡 募集価格:1400万円
https://db.netkeiba.com/horse/ped/2019100213/
ウインジェルベーラ(函館2歳S-2着)、ウインアイルビータ(現1勝)、ウインオーサム(現未勝利)の全弟です。母コスモマーベラスはターコイズS(OP)を2連覇したほか愛知杯(G3)で2着という成績を残しました。その一方で、母としては気性的な難しさを伝えるところがあり、ウインオーサムは去勢されています。本馬は動画を見るかぎりそうした点は見られません。ただ、現時点では後肢の力が弱いように感じます。そのあたりが値段の安さにつながっているのかもしれません。「アイルハヴアナザー×フジキセキ」は連対率38.0%、1走あたりの賞金額338万円というニックス。Last Cause≒Millicent4×5が利いている可能性があります。5月8日生まれなので成長の余地があり、後肢の踏み込みの甘さが改善してほしい――という期待込みではありますが、この値段ならそんなギャンブルを許容してもいいのではないかと思います。芝・ダート兼用のスプリンターでしょう。(栗山)

■『一口馬主好配合馬ピックアップ(2022)』と『POG種牡馬別好配合馬リスト(2023)』で望田潤がダブル推奨したルージュシュエット(牝3歳)が土曜京都1Rの未勝利戦(ダ1800m)を勝ち上がりました。

★東京サラブレッドクラブ
父Curlin
母ダンシングラグズ(Union Rags)
https://db.netkeiba.com/horse/ped/2021105640/
牝 募集価格:5000万円
母ダンシングラグズはアルシバイアディーズS(米G1・ダ8.5F)勝ち馬。Northern Dancer4・5×4、Secrettame≒Terlingua4×3などクロスがうるさめなので、アウトブリードのCurlinとは配合的に合います。力強い馬体と動きは牝馬とは思えず、この募集価格ですがダートのオープンを狙えるとみてピック。ちなみにCurlin産駒はJRAに18頭が出走し12頭が勝ち馬となっていますが、母系にStorm Catの血を引く場合はJRAに8頭が出走しヴォアドアンジェ(現役3勝)など7頭が勝ち馬となっています。(望田)

ルージュシュエット(牝・父Curlin・母ダンシングラグズ)
母ダンシングラグズはアルシバイアディーズS(米G1・ダ8.5F)勝ち。Northern Dancer4・5×4、Secrettame≒Terlingua4×3などクロスがうるさめで、アウトブリードのCurlinとはいい感じ。母系にStorm Catの血を引くCurlin産駒はJRAに8頭が出走し6頭が勝ち馬。牝に限ればヴォアドアンジェ(3勝)、エーシンエポナ(3勝)、デュアラブル(2勝)と3頭とも勝ち馬。(望田)

■『POG種牡馬別好配合馬リスト(2023)』で栗山求が推奨したダイヤモンドレイン(牝3歳)が土曜京都5Rの未勝利戦(芝2000m)を勝ち上がりました。

ダイヤモンドレイン(牝・父サトノダイヤモンド、母シーウィルレイン)
https://db.netkeiba.com/horse/ped/2021105577/
ダノントルネード(京都新聞杯-2着)の半妹。母シーウィルレインが勝ったゴールデンスリッパーS(豪G1・芝1200m)は、豪2歳短距離王者決定戦で、世界最高賞金額の2歳戦でもある。父サトノダイヤモンドはスタミナと晩成傾向がある種牡馬なので、Bletchingly4×4を持つ母のスピードと早熟性は好ましい。(栗山)

■土曜新潟8R1勝クラス アニトラ(一口・望田)
■日曜新潟6R1勝クラス ウィルフルネス(一口・望田)
■日曜東京7R1勝クラス ベルウェザー(一口・望田)



ニューイヤーズデイ×ハーツクライのニューバラードが勝ち上がり、上のように「元旦トニー」は予想どおり高アベレージで勝ち上がっていますが、特に母系にNureyevを併せもつケース(★)は出走5頭とも勝ち上がっています

元旦トニーはHelen Streetとトニービンの血脈構成が似ているのがニックスの根拠で、TroyってのはHornbeamとFair Trialですから、Nureyevを加えることでよりナスペリオン的な方向に舵を切った配合になるといえますかね



100%配合の「元旦トニーエフ」はニューイヤー×ルーラーシップやニューイヤー×ドゥラメンテやニューイヤー×ジャングルポケットでお手軽に実現できまっせ(・∀・)

ちなみに2歳の「元旦トニーエフ」を検索してみたら4頭いましたが、馬名が元旦すぎた

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第19回ヴィクトリアマイル回顧~4年に一度の前傾戦、Robertoパワーで差し切る伏兵

2024-05-14 10:22:26 | 血統予想

東京11Rヴィクトリアマイル
◎13.モリアーナ
○6.マスクトディーヴァ
▲10.ナミュール
△5.ウンブライル
×1.ライラック
×4.コンクシェル
今年のヴィクトリアマイルはマイラーと呼べる馬がほとんどおらず、マイルの阪神牝馬SもターコイズSも後傾ラップだったから、古牝馬戦線は中距離質1800質のレースを一年間やってきたといえる。
ここも1800の中山牝馬Sを逃げ切ったコンクシェルがおそらくハナで、出走馬の中で唯一のピュアマイラーともいえるサウンドビバーチェはこの並びならば番手でOKとなると、コンクシェルが後傾ラップを刻んで1800質のレースにするのだろう。
ナミュールもマスクトディーヴァもピュアマイラーではなく1800ベストだとずっと書いてきたが、前後半47秒-45秒で差すようなケイバではこの人気2頭がやはり強いと言わざるをえない。
もう府中牝馬Sなのだと割り切って人気どおりに印を入れてやりすごしたくなるが、モリアーナもノリが後方で脚をタメるレースを教えて中距離質の差しで開花。阪神牝馬を見てのとおり、この馬もマイルならスローの1800質のレースのほうが斬れるタイプには違いない。
阪神牝馬の1着2着を逆転できるかどうかが問題だが、ハビタット5×5をもつエピファネイア産駒らしい前駆のいいフォームで走るから、直線平坦のほうが斬れを増すタイプだと思う。
東京だと残り300mから平坦だから、そこまで各馬脚を温存して追い出すようなレースになるならば、ラスト300m最速で上がれる目はあるのではないか。他ならぬノリならば、そんな針の穴を通すようなところにハメてくる可能性はある。ハビタットが逆転に一票。

----------

例によってNETKEIBAの全頭解説から1~3着を

テンハッピーローズ
プリムラブルガリスの姪で、母フェータルローズはJRA3勝(芝1800~2000)。牝祖オエノセラの子孫に英1000ギニー2着Sundrop、サマーセント、サンレーンなどが出る。父エピファネイアは名牝シーザリオの息子で、JCと菊に勝ちエフフォーリアやデアリングタクトなどを出し成功。母父タニノギムレットはダービー馬。血統は中距離だが良績は芝1400に集中。阪神牝馬Sも差のないところにきていたが、マイルG1では強調する材料が…。(距離○スピード○底力○コース○)



フィアスプライド
ソフトフルートの全妹でミッドサマーフェアやメンデンホールの半妹で、パワーホールの叔母でアイスストームのイトコ。母母ストームソングはBCジュヴェナイルフィリーズ(米G1・ダ8.5F)に勝った北米2歳女王。母方のKingmamboやStorm Birdのパワーマイラーっぽさも強い馬で、中山マイルのターコイズSを制覇。ディープインパクト牝駒でも斬れ味抜群というほどではないから、ここもターコイズのように好位で運びたい。(距離◎スピード○底力◎コース○)



マスクトディーヴァ
トゥーフェイスの半妹で、オメガヴェンデッタやマスクトヒーローのイトコ。母マスクオフはJRA1勝。母母ビハインドザマスクはスワンS勝ち馬。コイウタ、アグネスアーク、サンライズソア、レッドアネモスなども近親。ルーラーシップ×ディープインパクトはキセキやドルチェモアなど成功している配合だ。マイラー牝系だが、母母父がホワイトマズルだし1600より1800がベターだろう。マイルだと阪神牝馬のように後傾戦になったほうが差せるタイプ。(距離○スピード○底力◎コース◎)



公式ラップは前後半800mが45.4-46.4、今年で19回を数える東京芝マイルの牝馬G1ですが、これぐらいハッキリ前傾ラップになったのは以下の5回で、ラップだけでみるなら15年とよく似てますかね

24年45.2-46.4
19年44.8-45.7
15年45.5-46.4
11年44.6-47.3
10年45.5-46.9

他では16年が45.7-45.8で、残りの13回は前半より後半のほうが速い後傾戦
この前傾戦5回をかんたんに振り返ってみると

19年…ノームコア(父ハービンジャー)とプリモシーン(母父Fastnet Rock)のデインヒル決戦。1人気4着ラッキーライラックはその後大阪杯とエリ女(2回)を制覇

15年…5人気-12人気-18人気で決まる大波乱。勝ったストレイトガールは母母父デインヒルで短距離路線の主役。3着に逃げ粘ったミナレットは最低人気で、ウォーニングの肌でターコイズSや新潟内1400で勝ち鞍。1人気6着ヌーヴォレコルトはオークス馬。2人気7着ディアデラマドレは1800~2000の重賞を3勝

11年…連覇を狙う単勝150円のブエナビスタの追い込みを封じたのは、非SSで母スプリンターのキンカメ産駒アパパネ。2人気-1人気-3人気で前傾ヴィクトリア唯一の順当決着。ただし短距離路線の常連グランプリエンゼルが14人気4着に食い込んでいたのはうすら寒い

10年…9着までコンマ2秒差の大接戦、中距離女王ブエナビスタが苦しみながらもクビ差で勝ちきる。11人気3着ニシノブルームーンはタニノギムレット産駒

こうしてみると前傾ヴィクトリアにおいては、ブエナビスタ、ラッキーライラック、ヌーヴォレコルト、レッドディザイアといった中距離チャンピオン級が軒並み苦戦し、デインヒルやRobertoのパワーで走っているマイラーが大駆け、という大まかな傾向がみてとれます



Mahmoud校長もよく言及していますが、競馬における距離適性とか、スタミナとか持続力とかマイラーとかステイヤーとかのカテゴリというのは、けっきょくのところ芝1600を92秒ぐらいで、芝2000を117秒ぐらいで走破するのに適しているかどうかということに他ならない

単純な割り算だと、最初の200mを12秒で入るとしたら、残りの1400mを11.4で走りつづけることができるのが優秀なマイラーで、残りの1800mを11.7で走りつづけることができるのが優秀な中距離馬で、でも12.0-11.4-11.4-11.4-11.4-11.4-11.4-11.4(46.2+45.6=91.8)で勝ち馬が走破する芝マイル重賞って滅多にないんですよね

そもそも古牝馬路線においてはヴィクトリアもエリ女も使うという馬が多いので、中距離馬がマイル重賞も走っているということが多々ある

なのでヴィクトリアの前哨戦の阪神牝馬Sも、毎年中距離馬だらけで中距離質1800質のレース、中距離質1800質の牝馬の斬れがモノを言うレースになり、下のようにデゼルがゆっくり48秒で入って44秒台でナデ斬る世界ですわ

阪神牝馬過去5年前後半
24年:47.4-45.6
23年:48.0-45.9
22年:46.8-46.0
21年:47.1-44.9
20年:46.5-46.4

これだけ中距離質になりがちだと(後傾戦が多いとはいえ)本番との関連性は薄くて、近5年の阪神牝馬の1~3着はヴィクトリアマイルで[0-1-1-10]、最も流れた20年の勝ち馬サウンドキアラが次走ヴィクトリアでも2着に頑張っているのは示唆的かと

今年のヴィクトリアマイルの出走馬に、この一年間で芝マイルを46.2-45.6ぐらいのラップで走破した馬は皆無に近くて、たとえばナミュールのマイルCS勝ちは47.8-44.7ぐらいの配分で追い込み、マスクトディーヴァの東京新聞も出遅れのぶんはありますが47.5-45.0ぐらいですか

まあナミュールに関していうと、45.2-46.2の前傾東京新聞杯を46-45.5ぐらいで走破し差し切った履歴があるので、全く反応しなかったのは遠征がつづいた影響なんかがあったのかもしれないです

そういうことを考えるとね、46.8-45.9と阪神牝馬よりは平均的に流れたターコイズで先行したフィアスプライドとフィールシンパシーがここでも先行したのは合点がいくし、45.5-47.1のHペース洛陽Sを46.5-46.1で差し切ったドゥアイズがクビ差4着に好走したのもなるほどというところはある

毎年のこととはいえ、プリプリのマイラー不在のヴィクトリアマイル、だからこそ穴は流れたときのミナレット、ミナレットを探せということなら該当するのはサウンドビバーチェぐらいかなあ…そんなことも3分ぐらい考えました

とはいっても過去18回のうち13回は後傾ですからね、中山牝馬を49.6-11.9-47.5で逃げ切ったコンクシェルがハナなら今年も後傾と読むのが自然で、今年も1800馬の斬れで決まるんやろうなあ~という頭で思考停止(^ ^;) むしろ「府中牝馬と割り切ってデゼルを探せ」というスタンスで◎モリアーナでした

中距離質の馬が思ったほど斬れないなか、残り400~200でギュンと加速して先頭に躍り出たのは、新潟内1400の朱鷺Sを勝ち、阪神牝馬では中距離馬たちに鋭さ負けしていたテンハッピーローズ

エピファネイア×タニノギムレット×サンデーサイレンスですから血統はもうバリバリ中距離で、母フェータルローズも現役時は芝1800~2000で3勝しています

そんな血統背景なのに全5勝のうち4勝を東京&新潟の1400であげている不思議のサウスポー、そんな6歳牝馬がここで大仕事をやってのけるとは

見た目にはRoberto4×4やNight Shiftのパワーが強くて、だから中距離血統なのにマイルに振れたとみるべきでしょうが、配合のポイントとしてはもうひとつ、Aureole≒Electric Flash(Welsh Flameの母)のニアリークロス7×6もあげておきたいところ



この馬、朱鷺Sが典型ですが馬群の外から差すのが勝ちパターンで、ここもそういう展開になったのがよかったかと、マイルドAureole魂のエピファ産駒なので外に出したほうがビュンと反応するタイプなのかもですね(阪神牝馬は内枠で馬場の悪い最内に突っ込んでました)

ちなみにテンハッピーローズと同牝系で父ハービンジャーのサマーセントもAureole≒Electric Flash7×5をもちますが、番手抜け出しで勝ったマーメイドをはじめとてもAureole魂を感じさせる戦績なんですよね



46-45でうなりをあげるプリプリA級マイラーが不在のなか、マイルドAureole魂のパワーマイラーが外に出して追ったら46.4-45.4でビュンと差し切ってしまった

表彰式では天白オーナーと照哉社長となかやまきんに君が並んで力こぶで記念撮影、それを見ながら「ノームコアはRobertoの薄いクロスやったかなあ…プリプリのデインヒルがいないので、Robertoパワーが差し切ったという結末か…」こんなことを呆然と考えるしかなかった

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする