2024年4月13日土曜日

ウスベニスジヒメシャクの♀交尾器

先週記事にしたベニスジヒメシャクの一種が羽化したので種の同定を試みた。

こんなの

2024年4月10日羽化

ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela

メスだったけど、幸い手持ちの図鑑にメスの交尾器の図もあったので何とか同定できた。

メス交尾器側面図

ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela
female genitalia

laがラメラ・アンテバギナリス。

obは交尾口(ostium bursae)

ラメラ・アンテバギナリス(lamella antevaginalis):交尾口(ostium bursae)の周囲の硬化した構造物をステリグマ(sterigma)と呼び、特に前方の硬化部をラメラ・アンテバギナリス、後方の硬化部をラメラ・ポストバギナリス(lamella postvaginalis)と称する。

交尾口の前方(頭部側)から後方に向かって伸びているのでラメラ・アンテバギナリスである。

ウスベニスジヒメシャクのラメラ・アンテバギナリスは先端が丸い二裂した骨片となるのが特徴。同属他種は先端が裁断状であったり、そもそもこんなに長くないので区別可能であるそうな。

メス交尾器背面図

ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela
female genitalia

ラメラ・アンテバギナリスは外して横に配置。

先端は毛束で覆われているので二裂している片方だけ除去。

図鑑の解説通り、先端が丸い。

ということで、先週の記事の幼虫も無事に種が決定。


まわりくどい!!!

数を見ているプロなら外見で判るかもだけど。。。

成虫であれば。

手持ちの図鑑には幼虫では区別できない、とか書いてあった。


ではまた。



2024年4月6日土曜日

頭にトゲがある蛹・・・ウスベニスジヒメシャク

先週とタイトルが似ているが別の虫の話。

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2024年4月13日タイトル変更

羽化して同定できたので。

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3月最後の日曜日、倒木の上をぴこぴこ移動中のしゃくとりむしを発見。

ベニスジヒメシャク属の一種
ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela Larva
シャクガ科で、

背中に菱形模様が三つ、

第3胸節から第1腹節にかけて膨らむ、

あたりの特徴で図鑑をあたると、

ベニスジヒメシャク属Timandraの仲間であることは判った。

ベニスジヒメシャク属の成虫はこんなやつ↓。

2017年9月24日撮影
コベニスジヒメシャク
Timandra comptaria
翅を拡げても3㎝ないくらいの小型の蛾。

ベニスジヒメシャク属は日本産6種。

いずれも似通っており、正確な同定は交尾器の観察を推奨、

でも草っ原に普通、

というめんどくさいグループである。

画像の成虫も交尾器を確認してある。(過去記事はこちら↓)

「コベニスジヒメシャクの交尾器」

同属内の幼虫はいずれもタデ科につき、色調に変異はあるが種を分ける特徴が見つかっていないため、同定するには飼育羽化させて交尾器を見る必要がある。

普通種なのに。

愚痴は置いといて。

幼虫側面

ベニスジヒメシャク属の一種
ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela Larva
矢印が第1腹節。

体長は2cm強。

道端でちぎったヒメツルソバを与えておいたが食べずに蛹化。

成熟幼虫だったようだ。

こんな時期に終齢幼虫ということは幼虫越冬なのだろうか。

年2回発生するそうなので、越冬態は適当な可能性が微レ存。

暖冬なので3回目が生き残ったのかも?


ベニスジヒメシャク属の一種、蛹背面

ベニスジヒメシャク属の一種
ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela Pupa
腹面
ベニスジヒメシャク属の一種
ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela Pupa
側面
ベニスジヒメシャク属の一種
ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela Pupa
全長約12㎜。

一見してモンシロチョウっぽい感じな蛹である。

容器に荒く糸を貼って、雑な感じで蛹化していた。

頭部に突起があり、糸が絡んでいる。

頭部腹面拡大

ベニスジヒメシャク属の一種
ウスベニスジヒメシャク
Timandra dichela Pupa
突起の拡大

鉤状の刺毛があり、荒い糸でも体を固定できるようにしている。

一般的な蛾の蛹にはない特徴である。

腹端腹面

腹端には他の蛹同様に鉤状刺毛があって、こちらでも体を固定している。

腹端の鉤状刺毛は幼虫時代の刺毛と相同で決まった数である。

頭部の刺毛は二次的なものであろう。

頭部に鉤状刺毛のある蛹はワタクシ的には初見だけど、他にもいるのかな?


蛹が無事に羽化したら種までの同定をする予定。

(羽化して同定できたけど、幼虫では区別できないから一緒か?)

ではまた

2024年3月30日土曜日

おしりにトゲがある囲蛹・・・ヒゲブトクチキバエ

ちょっと前に谷筋に倒れたコナラの樹皮を捲ってみた。

2024年3月10日
茶色の米粒。

ハエの囲蛹が見つかった。

中身がある感じなので持ち帰り。

背面


側面


腹面


腹端の拡大

なんてことはない囲蛹だけど、腹端に一対の上反するトゲがある。

後気門はトゲの付け根にあるようだ。

初めて見るタイプ。

日本産土壌動物第二版をつらつらみると、

クチキバエ科の幼虫にこんなトゲがあるようだ。

幼虫の皮膚が硬化して内部で蛹化するタイプを囲蛹という。

なので幼虫の特徴が囲蛹に残っている。

クチキバエ科はちゃんと見たことがないので、濡らした濾紙においてシャーレで保管。

2週間後に無事羽化。

2024年3月25日
触角刺毛がぶっといハエが出てきた。

触角刺毛が太い種類にはシマバエ科やキモグリバエ科にもいた記憶があるが、囲蛹の特徴からクチキバエ科なのは確かなのだから、クチキバエ科から該当種を探してみたら、ヒゲブトクチキバエというのがいるらしい。

これでいいと思う。

成虫背面

ヒゲブトクチキバエ
Hendelia beckeri
前脚は基節と脛節が特に白っぽく、付節が黒色で目立つ。

前翅には先端四分の一とr-m横脈、m-m横脈の周辺が暗色となっている。

側面と

ヒゲブトクチキバエ
Hendelia beckeri


腹面側
ヒゲブトクチキバエ
Hendelia beckeri


頭胸部背面
ヒゲブトクチキバエ
Hendelia beckeri

頭胸部側面

ヒゲブトクチキバエ
Hendelia beckeri

ヒゲブトクチキバエ
Hendelia beckeri

本種は国外にもいる様で、割りと分布の広い種類のようだ。

ではまた

2024年3月23日土曜日

チャバネアオカメムシの交尾器

今週は短め。

日曜日のツイート。


普通種の交尾器も見ておこうと持ち帰り。

チャバネアオカメムシ Plautia stali
♂交尾器
近縁にサキシマチャバネアオカメムシP.sakishimensisがいるそうで、チャバネアオカメムシの把握器の突起は三つあるが、サキシマ~では二つしかないので区別できるそうな。


ではまた 

2024年3月16日土曜日

キアシハラグロハネカクシ?

ちょっと春めいてきたかなぁ?
と思ったけど、、
虫的にはまだだった日曜日。

目の高さにあるネズミモチの葉っぱが重なっているのを捲ったらいた虫らしきもの。
老眼鏡越しでみると5mmほどの小さなゴミみたいなのをルーペで見たら、おしりを反らしてしゃちほこばってるハネカクシだった。

ハネカクシはな~
ワシには判らんからな~
と思ったけどネタにするべく拉致。

背面
キアシハラグロハネカクシ?
Astenus latifrons
なんか既視感があるのでブログの記事を確認。

旧ブログで似たのを記事にしていた↓

insectmoth.hatenablog.com

で、図鑑で近いところを探すと隣の属に似たのがいた。
アバタコバネハネカクシ属Nazeris じゃなくて、シリグロハネカクシ属Astenus の一種のようだ。
手持ちの図鑑で一致するのはAstenus latifrons だけれど、同属他種がいるから「?」をつけておく。

あとこれ、和名に変遷があるようで
同じ学名に、
保育社図鑑の和名は「キアシシリグロハネカクシ」、
北隆館図鑑の和名は「キアシクロクビボソハネカクシ」、
九大のサイトで公開されている日本産ハネカクシ科総目録では
「キアシハラグロハネカクシ(和名改称)」の和名が当ててある。

ここではいちおう最新のキアシハラグロハネカクシとしておく。
?付きだけど。

その他の画像。

腹面
キアシハラグロハネカクシ?
Astenus latifrons

頭部胸部背面拡大
キアシハラグロハネカクシ?
Astenus latifrons

よく見ると点刻が網目状。
カッコいい?

アバタコバネハネカクシみたいに撫で肩じゃないので、後翅はあるかと思ったけど、柄付き針で弄った感じだと鞘翅は左右癒着しているようだし、のぞき込んだ感じでは後翅も見えなかったので、本種も飛べない種類のようである。

腹面先端節の切れ込み
キアシハラグロハネカクシ?
Astenus latifrons

幸いなことに♂だったので交尾器も

側面

交尾器背面

記載文でも拾えたら交尾器が役に立つのだけどね。
私では見つけられなかった。。

おまけ
大顎開くとこんな感じ。
キアシハラグロハネカクシ?
Astenus latifrons
カッコいい。
上唇に一対の長い毛が生えているのは
ハエトリソウみたいなセンサーの役目かな。
大顎拡げておいて、毛に触れるとパチンと噛みつくとか。

アリにもそんなのがいたね。
アギトアリとか。


ではまた。

2024年3月9日土曜日

住み込み寄生とガチ寄生

先週の記事に出したクヌギエダイガタマフシの続き。

空き家に間借りしているアリンコより実害のありそうな虫。
虫コブを割ってみると、矢印の本体の繭とは別に周縁部に小さないもむしが見られた(黄色円内)。

チビいもむしの拡大
頭部の透過光観察
脚は無いが露出した頭部があり、大顎があるから双翅目ではない。
大顎以外の触角や下唇鬚は確認できないので鞘翅目ではない。
消去法で膜翅目の幼虫であろう。

で、ネットをあさると
「TAMABACHI JOHO-KAN」というサイトに、タマバチの中には「住み込み寄生」する種類がいるとある。
要は他のタマバチが作った虫コブに後から産卵して育つ種類がいるそうである。
こういう生活様式のタマバチはほとんど「イソウロウタマバチ族Synergini」に属する種類だそうで、画像のチビいもむしはたぶんこれ。

上記サイトによると、イソウロウタマバチは寄主のタマバチと置き換わってしまう種類が多いそうである。それと比べるとこのイソウロウタマバチは余っている端っこを食べているだけなので、つつましい種類だと思う。

成虫とおぼしきものは、ハンマーさんが昔撮影されている。↓
これによると、8月に産卵していることから慌てて成虫になる必要はなく、クヌギエダイガタマフシができた頃に出てくればいい訳で、のんびりしたものである。

ずるい生き方ではあるがクヌギエダイガタマバチと一蓮托生な訳で、危うい生き方でもある。

おまけ
ほとんどのクヌギエダイガタマバチの繭は羽化した後だったが一部蓋が開いてない繭があったので暴いてみた。
もう冬芽に産卵しなくてはならないのに今幼虫だったら間に合わない。
ということは、寄生蜂のヒメバチ科あたりじゃないかと思っている。

ではまた。

2024年3月2日土曜日

空き家で冬ごもり

ずいぶん前から視界には入っていたもの。

クヌギエダイガタマバチの虫コブである。

本種は秋から早春にかけて羽化するそうで、既に脱出口が見られるので空き家であろう。

このとき羽化するのは単性世代の♀で冬芽に産卵し、雄花にクヌギハナコツヤタマフシという虫コブを作って両性世代の成虫が羽化するそうな。

それはさておき空き家だし、何かの話のタネになるかと持ち帰って中を見た。

割ってみると羽化後のタマバチの繭がある。

次、

なんかいた。

背面

ヒラフシアリ 女王
Technomyrmex gibbosus
翅がついていた痕跡があるので女王アリである。

側面

ヒラフシアリ 女王
Technomyrmex gibbosus
体長は約3.5mm。

腹柄は細く、腹部が覆い被さっている。

本種は枯れ枝や枯れ竹に営巣する樹上性の種類だそう。

秋に結婚飛行をする種類なので、各々単独で冬越しして春になってから子育てに入るのかも知れない。

かなり以前にツバキシギゾウムシが出て行ったあとのヤブツバキの実にシリアゲアリ属の女王がいたことがある。ハリブトかテラニシ辺りだったと思うが、これも同じように春になってから繁殖に入るのかも知れない。


ではまた