otoちゃんとarcちゃん (日本建築学会室内音響小委員会 監修)

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otoちゃんとarcちゃん (日本建築学会室内音響小委員会 監修)

いい音環境づくりのための情報をお届けします。 問い合わせは otoarc.note@gmail.com まで。 日本建築学会室内音響小委の監修。本サイトの情報を用いた判断・行為、リンク先内容について責任を負いません。リンクフリー、無断転載禁止。

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「吸音」が必要な場所とその効果って?

 私たちの身の回りは、室内外問わずたくさんの「音」であふれています。街を行きかう車や電車の音、人々の声、商店街のBGM、アナウンス等さまざまです。私たちの過ごす空間が快適であるためには、場の喧騒感が低いことはもちろんのこと、必要な音声情報をストレスなく受け取ることができ、落ち着いて心地良く過ごせることが求められ、そのためには室内の「吸音」が不可欠です。  この記事では、吸音が必要な場所と、空間や人々へもたらす具体的な効果、実空間での事例を紹介していきます。 身近な暮らしで見

    • 建築家へ聞く 音環境への気づきから学ぶ吸音の効果 その1

       一般の建築設計において設計の段階では、空間のデザインへ重点が置かれがちで、音環境への意識はそれほど高くないことが現状です。しかし、実際に建築物が出来上がりその利用が始まってから音環境の問題に気が付くケースが多々あります。そこで、実際に建築家として活躍されている方へ、これまでの設計活動において気が付いたことや、現在の設計で工夫しているポイントなどを聞いてみました。  今回、ご協力いただくのは、建築家の藤江創氏です。 藤江氏のお話を聞き、今回の対象となるご自宅へ実際に訪問して

      • 有孔板はデザインできる

        吸音材と言うと、次の写真のような有孔板を思い浮かべる方も多いでしょう。音楽室や貸スタジオなどでよく見かけます。 これも有孔板 有孔板の孔は、円や等間隔である必要はなく、デザインできるって知っていましたか?今回は様々な有孔板の例を集めてみました。孔の有無や直径、配列、形など、少し変えるだけで、別の表情になります。 板そのものをデザインしなくても、既製品の有孔板を組み合わせて空間をデザインしている事例もあります。 有孔板の利用にはコツがある このようにデザインが楽しい有

        • 吸音仕上げギャラリー(4)

          この冬、スキーに行ったときのことです。 休憩しようと入ったホテルのブッフェは、2層分の天井高さのある大きな空間でした。ゲレンデに向いたブッフェの3面は天井までガラスの大きな開口で、スキーヤーの動きや風景がよく見えます。 天井が高く、しかも大きなガラス面を持つ空間は、音が響きやすく喧噪感が高くなりがちですが、ここはそんなことはなく、落ち着いて食事や会話を楽しむことができました。 どこかに、吸音の工夫があるはずです! 探してみたら、ありました。 ガラス開口の反対側、キッチン

          音の失敗例(2)似て非なる建材

          先日、新しい器を購入したのですが、よく見ると何かに似ているなと・・・ そう、「ロックウール化粧吸音板(通称 岩綿吸音板)」です。「ロックウール化粧吸音板」は安価で施工しやすく、吸音性能も高いため、多く流通している吸音材です。天井に使用されることが多く、特にオフィスのシステム天井(グリッド天井)材としては定番の建材です。また、壁仕上げとして利用するケースも見かけることがあります。 似ている建材が実はもう1つ。「化粧石こうボード」です。安価で施工しやすい点は同じなのですが、実

          天井の吸音で駅の音環境はどう変わる?

           昨今、様々な駅で内装のリニューアルが行われているのを目にします。特に多いのが天井です。天井が吸音仕上げか否かで、アナウンス等の聞き取りやすさや空間の喧騒感、快適性が大きく左右されます。  天井は人がぶつかることもなく強度の心配が少ないため、公共空間において吸音仕上げを設置するのに適した場所なのですが、どのようになっているケースがあるでしょうか?天井が吸音されていないケース、吸音されているケース、されているように見えるが不明なケースなど様々ですが、いくつか事例を紹介したいと思

          室内での人の声の聞き取りやすさを測る

           室内での人の声の聞き取りを考えると、響きが長くて聞き取りづらいとか、聞き取りやすかったとしても集中したいときに隣人の声が気になってしまうとか、いろいろな状況がありますね。室内での人の声の聞き取りやすさを測ったり評価したりすることはできるでしょうか。その1つの方法を、あるコワーキングスペースの音響改善事例を交えてご紹介します。 コワーキングスペースの聞き取りやすさの改善事例の紹介  写真のコワーキングスペースは、リモートワーキングスペース、コミュニケーションスペース、子供

          駅の吸音仕上げ

          今回は「駅舎」の吸音仕上げ事例を紹介します。列車の往来の騒々しさの低減とアナウンス音声の明瞭性(聞き取りやすさ)の向上に吸音が役立ちます。 実際に訪れてみた  吸音オタクの私は、出張で全国あちこちに行く道すがら、「こっ、これは吸音仕上げだ!」 と見つけるたびに写真を撮ってきました。吸音仕上げされている駅は、やはりアナウンスが 聞き取りやすいです。  まずは大阪メトロ御堂筋線の淀屋橋駅。照明器具の形がレトロでおしゃれです。 天井に近づくと孔あき板を使った吸音仕上げになって

          聞こえ方は人それぞれ

          ”カクテルパーティー効果″を知っていますか? 様々な音が混在するなかで、注意を向けた音を選択的に聞き取ることができる聴覚の機能のことです。このカクテルパーティー効果は聴覚機能の1つである〝選択的聴取機能″によるもので、そのおかげでざわざわしたカフェやレストランでも、会話を楽しむことができます。 実はこの”選択的聴取機能”は、すべての人に同じように備わっているわけではない、ということが知られています。 例えば子ども。聴覚機能は、15歳頃までは発達過程にあると言われています。す

          TED talksから:音響の話題

          TED(Technology, Entertainment, Design)は、アメリカの非営利団体が運営する講演会です。さまざまな分野の人物がプレゼンテーションを行っています。 TED talksに紹介されている音に関する3つの興味深い話題をご紹介いたします。われわれが生活している身の回りの音の話や、音楽とコンサートホールの話など、身近な話を専門家がやさしく解説しています。 日本語字幕もつきますので気軽にどうぞ! 1. Why architects need to u

          おススメ「音の本」(2)

          音のことを知りたいけど、理論や数式はちょっと苦手、、という方も多いと思います。おススメ「音の本」シリーズでは、わかりやすく、捲るだけでもアイデアソースになるような 音の本を紹介していきます。 第 2 弾はこちら、"ディテール"。 出典 : https://www.fujisan.co.jp/product/1764/b/1315144/ 「ボード+ペンキでカチカチの仕上げにすると響くのは分かるんだけど、床にタイルカー ペットがあるし、そこまで気にしなくていいでしょ?」と

          視覚障害者にとっての駅の音

          私たちが日頃利用する駅のコンコースやホームは、様々な音で溢れています。 電車の到着や出発を知らせるアナウンス、自動改札機を通過するときの”ピッ”という音、利用者の足音や話し声。もちろん電車の音もありますから、利用者が多い都心の駅となれば、とても騒がしい空間ですよね。 そんな駅で聞こえる音に対して特に敏感な利用者がいます。それは視覚障害者の方です。 例えば、改札機付近では「ピ~~ン ポ~~ン」という音、ホーム階と改札階を繋ぐ階段付近では「ピヨピヨ」という音が聞こえる駅がありま

          学校施設でも大切な音環境

          音環境を整えるためには欠かせないのが「吸音」。ですが、日本では法律によって使用が義務付けられている、ということはありません。そのせいか、吸音不足で響きすぎる空間が多いのが現状です。 でも、有孔板(あなあき板)は皆さん必ずどこかで見たことがあるのではないでしょうか? 小さな穴が開いた壁、学校の音楽室の壁の定番です。音楽室は響きを整えなければならない部屋の代表格、ということで、有孔板がよく使われています。 音楽室だけではなく、学校の教室も、音声を明瞭に伝え、騒がしさを抑えるた

          吸音で空間のモードチェンジ

          地下鉄の駅から延びる地下通路といえば、こんな風景が思い浮かびませんか? 雨の日に靴や傘で濡れても大丈夫なよう、地下通路はタイルや金属パネルで仕上げられることが多いです。火事で燃えないよう、不燃材が求められるということもあります。こういった材料は音を反射しやすく、遠くの人の足音もカツーンカツーンと響いてよく聞こえてきます。 こちらは東京メトロ銀座駅近く、晴海通りの地下にある地下通路です。日本有数の商業地らしく、デジタルサイネージが並び、照明は天井のスリットに収められ、美観に

          吸音するとどう変わる?-保育室での試み-

           音声コミュニケーションを必要とする空間や大勢の人々が活動する空間では、吸音を施すことで、音声の明瞭性・静けさ・落ち着きを得られることが知られています。特に乳幼児が日常を過ごす保育施設では、言語や聴覚の発達のため良好な音環境を保全することが重要です。しかし、既に建築されている施設では、どのように音環境を改善すればよいのでしょうか。  建築側から音環境づくりを支える方法の一つとして、吸音材の使用があります。今回は、保育施設にて実施された音環境改善に向けた取り組みとして、後から吸

          吸音するとどう変わる?-保育室での試み-

          吸音仕上げギャラリー(3)

          ”リブを用いた仕上げ” 写真は東京フォーラムのガラス棟です。リブ壁面のところに吸音仕上げが用いられています。 近寄ると↓こんな感じです。 さらに近寄ると↓↓↓ 間隔の空いたリブの間にパンチングメタルがあり、その裏に吸音材が仕込まれている吸音構造です。 吸音材は強度的に弱い物も多いのですが、リブとパンチングメタルで保護されており、壁仕上げとして強度も期待できますので、共用部にもふさわしい吸音です。