保田正信・浄土真宗本願寺派布教使

やすだしょうしん|浄土真宗本願寺派布教使として全国のお寺で法話をしています|大阪の在家…

保田正信・浄土真宗本願寺派布教使

やすだしょうしん|浄土真宗本願寺派布教使として全国のお寺で法話をしています|大阪の在家出身から念仏道場桜蓮寺を建立|高槻市一念寺の副住職|龍谷大学宗教部勤務|フリーペーパーののさまライター兼イラストレーター|直七大学講義担当

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殺人反対

コロナが去れば戦争がやってくるんだろうなと思っていたら、コロナは去らないし、思っていたのと随分違う理由で戦争はやってきた。 信じられないような暴力と、家族の笑顔を交互に見ていると、なんとも言えない気持ちになります。 殺された人も、殺した人も、この子たちと同じように幼い時代があって、どうか殺したり殺されたりしないで欲しいと願う眼差しの中で育ったんでしょう。 その子どもたちが殺し殺されている。 こんな悲しいことはない。 こんな悲しいことはない。 私に何かができるわけでもな

    • 【仏教】自死・自殺について

      自死・自殺について、二つのお話を紹介します。 【ヴァッカリの自死】 長者ヴァッカリは病にかかり、絶え間ない痛みと苦しみの中にいました。 ヴァッカリはお釈迦様に来て欲しいと願いました。 お釈迦様はヴァッカリの願いに応え、病床に訪れました。 「ヴァッカリ、体の具合はどうだ?苦しいか?」 「お釈迦様。本当に苦しいです。とても、この私にはしんぼうができないほど苦しいのです。痛みは増すばかりです。」 お釈迦様は、ヴァッカリに教えを説き、無常についてヴァッカリと話しま

      • 【法話原稿】倶会一処 会っているのに会えない寂しさと生きる

        「浄土にてかならずかならずまちまゐらせ候ふべ し」 と 倶会一処【くえいっしょ】という言葉があります。離れ離れになった人とも、いつかともに同じ所で会うことができるという利益です。 同じ所とは、すなわちお浄土のことです。今日はこの言葉を味あわせていただきたいと思います。 私たちは愛別離苦【あいべつりく】の人生をたまわりました。愛する人とも生き別れ、死に別れしていかねばなりません。もし、人生が死で終わるもので、その先には何もないとすれば、私たちは離れ離れになって終わっていく

        • 成道会

          ジングルベ〜ル♪ ジングルベ〜ル♪ 成道会♪ 釈迦が〜♪さっとっりっを開いた日っ♪ いえい♪ 成道会は12月におつとめする、お釈迦様のおさとりを祝うおめでたい法要です。 ツリーと小さなお釈迦様の仏像(絵でも可)を用意し、ツリーの下にお飾りします。 これでボダイツリー(菩提樹)が完成です。 苦行をはなれ樹下に座しておさとりをひらかれたすがたをあらわします。 ケーキも買いましょう。 白いケーキが良いです。 成道前に布施されたスジャータの乳粥をあらわす真っ白のケーキです。 ス

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        • お坊さん的 映画評・書評
          4本

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          映画『教誨師』感想とネタバレと考察

          映画『教誨師』は、大杉漣さんの最後の主演映画で、唯一のプロデュース作品です。 舞台は全編通して、ほぼ教誨室のみ。 他の舞台も少しだけありますが、本当に必要最低限という感じです。 メインの舞台になっている教誨室も、ただの三角形の角部屋に机と椅子があるだけで、映画のセットらしい物は何もありません。 そこで、プロテスタントの牧師である主人公の佐伯が死刑囚たちとひたすら会話をしていく、という映画。これが全てです。 極めてシンプルな画面なので、ついつい会話や表情に引き込まれます

          映画『教誨師』感想とネタバレと考察

          培養肉から仏教徒の食肉を考える

          こんな記事がありました。 【カラパイア】 世界初、細胞培養したフォアグラが研究室で作り出される。しかもうまいらしい(フランス) - カラパイア https://karapaia.com/archives/52304162.html 細胞を培養して肉を作るのだそうです。 漏斗のような道具で強制的に給餌して、鳥を脂肪肝にして作っていたフォアグラが、こうやって培養肉になることで、鳥の苦しみが無くなるなら良いですね。 培養肉自体に倫理的問題があるかないかと言えば、あると言う人

          培養肉から仏教徒の食肉を考える

          読了記録『私の穴がうまらない』

          セックスレスについて、色々な立場からの視点から描かれた漫画です。 体のつながりの話のようでいて、実はこころのつながりの話。 それぞれの立場からのリアルな心理描写が凄いなあと思います。 主人公は、 出産と子育てをキッカケにセックスレスになった夫婦の妻。 思春期の娘あり。 そして、人の心を察すのが苦手な夫。 でも決して不誠実なわけでなく、夫は夫で彼なりに家族を愛し、家族を守りたい気持ちがあったりする。 そして、人に言えない悩みもあったりして、それはそれで切ない。 主人公

          読了記録『私の穴がうまらない』

          読了記録『ふるさとって呼んでもいいですか: 6歳で「移民」になった私の物語』

          著者のナディさんは、6歳の頃にイランから家族で来日された方です。 幼かった彼女が、社会の片隅に隠れながら生活し、言葉、習慣、制度などの様々な壁を乗り越えながら成長していく記録です。その懸命に生きるすがたには胸を打たれます。 現在、日本は移民社会に移行していっています。この本に書かれていることは、決して遠くのことではなく、まさに日本に暮らす私にとっては隣人たちについてのことが書かれています。 ナディさんが6歳だったのは、今から30年近く前のことですので、この本のエピソード

          読了記録『ふるさとって呼んでもいいですか: 6歳で「移民」になった私の物語』

          【無料】仏教入門ノート06 お釈迦さまのご生涯② 出家前の生活 その1

          前回からお釈迦さまのご生涯について、物語風にお話を進めています。 ルンビニーの花園で生まれたシッダールタ王子は、内向的で憂いに沈みがちな青年に育っていました。 王さまは、そんな王子がはたして王族としての役目を果たし、戦争で命のやりとりしていくことが出来るのかと心配になり、大臣たちを集めて相談することにしました。 釈迦八相③出家(しゅっけ) その1王さまは宮殿の広間に大臣たちを集めて言いました。 「よくぞ集まってくれた。相談というのも他でもない、王子シッダールタのことなの

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          【無料】仏教入門ノート06 お釈迦さまのご生涯② 出家前…

          【無料】仏教入門ノート05 お釈迦さまのご生涯① お釈迦さまの誕生

          さて、前回までは宗教全般についてのことやお釈迦さまがお生まれになる前のインドの話など、仏教入門と銘打っておきながら全然お釈迦さまが登場しませんでした。 今回からはちゃんとお釈迦さまが登場されます。 お釈迦さまの誕生年お釈迦さまがお生まれになったのは紀元前5世紀頃です。 しかし、具体的に何年にお生まれになったかということはわかっていません。 いくつかの説がありますが決め手はなく、正確な数字は今でもわかっていません。 とにかく相当な昔ですから、良くわからないことが沢山あるの

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          【無料】仏教入門ノート04 宗教ってなに?④ お釈迦様以前のインド

          前回までは宗教全般についてのアレコレを書いてきましたが、今回のテーマは、 「お釈迦様が登場される前のインドのアレコレについて」 です。 ドラヴィダ人とアーリア人さて、インドという土地は人類最古の文明が発生した土地の一つです。 インドの北にあるインダス川の周りでインダス文明(ハラッパー文明)が栄えました。 文明が出来るということは、そこが恵まれた土地であったということです。 作物が育つ肥沃な土地だったんですね。 腹ペコじゃ定住なんかできませんし、文明なんか作ってる余裕

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          【無料】仏教入門ノート03 宗教ってなに?③ 世界宗教

          前回の記事では宗教のはじまりと民族宗教についてお話ししました。 今回は世界宗教についてのお話です。 (1)世界宗教のなりたち民族宗教が生まれ時代を経ていくと、今度はこの民族宗教的な土壌の上で、さらに思索を深め、特定の民族だけではなく人類みんなに受け入れられるような普遍的な教えを説く人があらわれます。 たとえば、 バラモン教の土壌であらわれたのが仏教の開祖であるお釈迦様ですし。 ユダヤ教の土壌であらわれたのがキリスト教の祖であるイエスキリストです。 お釈迦様やイエスキ

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          【無料】仏教入門ノート03 宗教ってなに?③ 世界宗教

          【無料】仏教入門ノート02 宗教ってなに?② 民族宗教

          前回の記事では、世界中どこにでも歴史ある宗教があり、考えるという能力を獲得してしまった人間という種にとって、信仰は歌うことや絵を描くことと同程度には本能的で自然なことで、必要不可欠なことだ、というお話をしました。 (1)宗教のはじまりどんなに歴史ある宗教であっても始まった時点はあるはずです。 宗教はどうやってその歴史をスタートさせたのでしょうか? 前回同様に、今日も宗教の「宗」という字を見るところから考えてみましょう。(字、見るの好きやなー…) - - - - -

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          【無料】仏教入門ノート01 宗教ってなに?① 宗教の意味

          「仏教とは〜」という話の前に、まずは「そもそも宗教って何やねん?」という話からはじめたいと思います。 (1)宗教は「むね」の教え手始めに、宗教の「宗」の字を見てみましょう。 「宗」という字は「むね」とも読みますよね。「むね」と読む漢字としては、他にも、胸・旨・棟などがあります。 たとえば、「胸」は体の中心であり、心臓がある大事な部分です。 「旨」の場合は、話の旨などと使いますが、これも話の中心、話の肝要のことです。 「棟」もまた家の中心の大事な部分で、棟上げ式の日は特

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          『私はゴースト』ネタバレと考察

          アマプラで映画『私はゴースト』を観ました。 映画自体の説明はヤボになるのでしません。実際に視聴してみてください。特にこの映画は謎が解けていく系ですから、ネタバレは命取りです。 以下は観たという前提での個人的な考察ですので、まだ観てないという人は絶対に読まないでください。 - - - - - - - - - - この映画は「幽霊の除霊」を「除霊される幽霊側」の視点から描いています。 幽霊はエミリー そして、エミリーを除霊すべく雇われたのがシルヴィアという霊媒師です。

          『私はゴースト』ネタバレと考察