Jorge OSHIRO

散歩の凡人 a.k.a シティおじさん

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最近の記事

『沖縄本礼讃』を礼讃する

ボーダーインクから〈ボーダー新書〉というシリーズが出ている。知人から小浜司『島唄レコード百花繚乱〜嘉出苅林昌とその時代』をもらったのがきっかけでそのことを知った。2009年頃からスタートしたようで、これまでに10冊くらい刊行されているみたい。 去年から那覇空港の売店でボーダー新書を買うようになった。新書判で手軽だから、機内で読むにはちょうどいいのだ。 今回手にしたのは、平山鉄太郎『沖縄本礼讃』。著者は東京の国分寺に住む校閲者。沖縄好きが高じた挙句、「沖縄本を買うためなら沖

    • 虚無への供物、もしくは鶴見'90

      ツイッター上でクインクティウス・フラミニヌス氏(@88mill)が『虚無への供物』に登場する薔薇について考察していた。現実と虚構の照応を検証したもので興味深い。勝手ながら転記しておく。以下は氏のツイートより。 先日、知人に1954年の三宿ガーデン薔薇カタログを頂いた。『虚無への供物』中に、「イギリスの名家マックレディの青い薔薇"ライラック・タイム"を輸入した、その三宿ガーデンが見え」とあるあの三宿ガーデンで、1954年は勿論『虚無…』開幕の年である。 カタログ中に青い薔薇

      • 『月蝕領映画館』を探して

        中井英夫全集12『月蝕領映画館』(創元ライブラリ、2006年)に伊地智啓が寄稿していることを知った。10年ほど前の刊行物だからすでに品切れ。仕方ないか。 「日本の古本屋」で検索したら古書店にも出ていないみたいだし、図書館で借り出そうとしたら杉並区では所蔵していない。しょうがないなあ、どうせミステリー文学資料館に行くから(ちょうど中井英夫展をやっているのだ)そこでコピーすればいいや。と思っていたら12巻だけない。えっ? ミステリー文学資料館なのに! これ、本当に刊行されたの

        • 『沖縄まぼろし映画館』のこと

          子供の頃、沖縄県の那覇市で育ったのだが、当時、市内の樋川という区域に住んでいて、近所には成人映画館があった。その名を開南琉映という。 ピンク映画を上映しているわけだから、子供にとっては悪所だろう、近寄ってはいけない空気が濃厚に漂っていた。看板に書かれた扇情的な題名を見ることすら抵抗があった。いま考えたら、単なる文字なのにね。でも、ああいうものはどうしても目に入ってくる。ちらっと確認して、すぐに視線をそらす。見ないようにしているのに、なぜか目の端で追っている。といった具合に。

        『沖縄本礼讃』を礼讃する

          橋本愛を讃える

          2014年8月31日をもって新橋ロマン劇場閉館。あれから1か月近く経ってしまったが、この先わたしはどこで日活ロマンポルノをみればよいのだろう……。最後の3日間はロマンポルノの名作を連続上映していたので、おぼえがきとして記しておく。ちなみに、それぞれ恋の日、暴の日、秘の日とテーマが設けられている。 8/29(金) 『さすらいの恋人 眩暈〈めまい〉』(監督:小沼勝、1978年) 『恋人たちは濡れた』(監督:神代辰巳、1973年) 『恋の狩人 ラブ・ハンター』(監督:山口清一郎、

          橋本愛を讃える

          さようなら、新橋文化劇場

           新橋文化劇場が2014年8月31日に閉館する。  8月9日から15日にかけて上映していたのは『スペース・カウボーイ』(2000年)と『エグゼクティブ・デシジョン』(1996年)。クリント・イーストウッドとスティーブン・セガールの2本立て。  新橋文化といえばセガールというイメージが強いから、せっかくだし最後のセガールを堪能しようと足を運んだら、あれ? セガール隊長、開幕早々あっさり死亡……(セガールが死ぬ映画は初めてみたかもしれない)。実は『エグゼクティブ・デシジョン』

          さようなら、新橋文化劇場

          『契約 鈴木いづみSF全集』について(その1)

           これまで〈鈴木いづみコレクション全8巻〉や〈鈴木いづみセカンド・コレクション全4巻〉などを刊行してきた文遊社が、SFだけを1冊にまとめた『契約 鈴木いづみSF全集』を新たに出した。わたしの場合、「SF作家としての鈴木いづみ」に関心があるので、こうした企画はとてもうれしい。  鈴木いづみのSFといえば、かつてハヤカワ文庫JAから2冊の短篇集が出ていた。『女と女の世の中』(1978年)と『恋のサイケデリック!』(1982年)だ。今回の『契約』は、全集をうたっているだけあって、

          『契約 鈴木いづみSF全集』について(その1)