カフェバグダッド

中東コラムニスト。エジプト、イランに在住9年。中東の奥行きの深さを、文化、歴史を交えて…

カフェバグダッド

中東コラムニスト。エジプト、イランに在住9年。中東の奥行きの深さを、文化、歴史を交えて日本に紹介。マガジン「中東シネマ倶楽部」随時更新。ウェブストア https://cafebaghdad.booth.pm/ 執筆依頼などは、kubo3070★gmail.com (★→@)まで。

マガジン

  • カフェバグダッド20年史

    2004年に設立された「カフェバグダッド」の歴史を振り返ります。サブストーリーとして、SNS発展史との関係を記した連載も収録しています。

  • ワールドシネマ・レビュー

    カフェバグダッドが鑑賞した中東関連以外の各国映画のレビューが収録されています。

  • カフェバグダッドニュース

    プレスリリースを含め、カフェバグダッドについての過去のお知らせなどをまとめています。

  • 中東シネマ倶楽部

    中東(オリエント)地域の映画レビュー、映画祭リポートをお届けします。

  • 【マガジン】ネット中傷・ネットリンチにどう対応するか

    自身の経験をリアルタイムに紹介し、ネット中傷・ネットリンチを対処する際のヒントを示せればと思います。

最近の記事

20年・10年のあゆみを振り返る--カフェバグダッド×比呂啓対談③

比呂 さっきも話した、ボスのピーターですけど、おみやげに肖像画をたくさん買ってきてくれるんですよ。モロッコに旅行行った時も買ってきてくれて。そこにあるモロッコの王様(の肖像画)は、全部ピーターからの寄贈です。たくさんあります。 カ なんていうか、貢献がすごいですね。 比呂 貢献した人です。顕彰しないといけない、ピーターは。 指導者の肖像画を集め始めたのは、国、というものにものすごく意識的だったからと思う。私が帰国子女だった、ってのがある。国に対する意識がすごく高いんですね

    • 静謐な風景の中の痛々しい心理劇…フランス映画「落下の解剖学」

      予備校に通っていた時代の友人と久しぶりに会って会食していた時に勧められた作品。カンヌ映画祭の最高賞「パルムドール」受賞作。勧められた時には、この作品のことを知らなかったのだが、公式サイトをチラ見した段階では、コーエン兄弟監督作の米映画「ファーゴ」みたいな?と反射的に思い、その友人も否定しなかったので、そんな感じかな、と思って劇場に行ったのだが、かなり色合いの異なる作品だったように思う。 スランプに陥っている作家が、自宅から謎の転落死を遂げる。他殺か、自殺か、事故死なのか、を

      • 20年・10年のあゆみを振り返る--カフェバグダッド×比呂啓対談②

        カ 1997年、私は東京にいて、新聞記者をしていました。1991年に新聞社に就職して、1997年に国際報道を担当する外報部という部署に異動しました。 比呂 それは何歳の時ですか。 カ 29歳ですね。 比呂 その前は、別の部署。 カ 地方ですね、金沢とか、地震があった能登半島の珠洲、輪島とかで働いていました。 比呂 そういう地方に行ってから外報部に行く。 カ それが、だいたい新聞社のパターンです。いわゆる「海外特派員」を目指していたので、ようやく自分の夢に届くところ

        • 20年・10年のあゆみを振り返る--カフェバグダッド×比呂啓対談①

          4月3~7日の5日間にわたり、東京・荻窪のライブスペース「Sugar Cube」にて開催されたイベント「カフェとプロパガンダ」。カフェバグダッド設立20年と、比呂啓さん主宰の「"ゼロ"プロパガンダン展」10周年の記念イベントだった。ここで行われたトークショーの一部を、順次テキスト化していきたい。臨場感を少しでも味わっていただけたらと思う。まずは、5日に行われた比呂さんとカフェバグダッドが、それぞれの歴史を振り返った回から。 比呂 今日は、平日の昼間にもかかわらず、わざわざ来

        20年・10年のあゆみを振り返る--カフェバグダッド×比呂啓対談③

        マガジン

        • カフェバグダッド20年史
          21本
        • ワールドシネマ・レビュー
          8本
        • カフェバグダッドニュース
          14本
        • 中東シネマ倶楽部
          53本
        • 【マガジン】ネット中傷・ネットリンチにどう対応するか
          12本
        • この広い世界を知るための10皿
          60本

        記事

          未来に進んでいくための指針…20年の節目にZINEを発行します

          コロナ禍が人生のなんらかの転機になった人は多いのではないか。私も、ある意味そうだ。外に出歩けなくなって空いた時間を使い、捨てずにとっておいた諸々の資料などをスキャンしてクラウドに保存するという作業を黙々と続けた。選別作業の中で、必然的に過去を振り返ることになった。 そんな中で、文学フリマなどに一緒に出展していた、映像ディレクターの比呂啓さんから、「カフェバグダッドが20周年になるなら、記念イベントを一緒にやりませんか」と誘われた。比呂さんは、世界の指導者の肖像画を収集して自

          未来に進んでいくための指針…20年の節目にZINEを発行します

          イランの大自然の中で、夢の実現に格闘する女性…「メークアップ・アーティスト」

          イランの映画監督、ジャファール・ナジャフィ監督のドキュメンタリー作品。イラン南部ザグロス山脈の遊牧民に嫁いだ女性が、メークアップアーティストになる夢を実現させるため、保守的で伝統的な価値観にどっぷりつかる夫をあの手この手で説得していく、という物語。東京・渋谷の「ユーロライブ」で開催されたイスラーム映画祭の最終日に鑑賞した。過去には、2021年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたことがある。 舞台はおそらくチャハルマハール・バフティヤーリー州。夫婦ともに一帯に暮らす遊

          イランの大自然の中で、夢の実現に格闘する女性…「メークアップ・アーティスト」

          歌あり踊りあり、それでいて深い社会批評…エジプト映画「炎のアンダルシア」

          イスラーム映画祭がきのう終了した。今回、鑑賞したのは計5本。1本づつレビューを書いて、noteに開設しているマガジン「中東シネマ倶楽部」にアップしている。ここでは、最終日の23日にみたうちの一本、エジプト映画「炎のアンダルシア」について。 この作品、個人的に強い思い入れがある。1997年の制作で、日本では翌年の1998年にフランス映画社の配給で公開された。私は当時、東京で英語で書く新聞記者をしていて、この映画について取材をしたことがあった。 最も印象に残っているのは、エジ

          歌あり踊りあり、それでいて深い社会批評…エジプト映画「炎のアンダルシア」

          進行中の戦争の現場で撮影されたフィクション…レバノン映画「戦禍の下で」

          イスラーム映画祭の2日目はレバノン映画「戦禍の下で」。フィリップ・アラクティンジ監督(Philippe Aractingi)の長編第2作で、2006年7月に起きた「第二次レバノン戦争」を題材にした作品。 「第二次レバノン戦争」は、レバノンでは通常「7月戦争」と呼ばれ、日本メディアは「レバノン紛争」と表記する場合が多い。「第一次レバノン戦争」とは、1982年にイスラエル軍がレバノンの首都ベイルートまで侵攻した戦いのことを指す。 この作品、2008年の「SKIPシティ国際Dシ

          進行中の戦争の現場で撮影されたフィクション…レバノン映画「戦禍の下で」

          浴場から描かれる凄惨なテロの時代…「私は今も、密かに煙草を吸っている」

          今年のイスラーム映画祭が、東京・渋谷のユーロスペース(ユーロライブ)で開幕した。初日の16日、2本目のアルジェリア映画「私は今も、密かに煙草を吸っている」からのスタートとなった。 アルジェリアの首都アルジェにある、公衆浴場の女性風呂が舞台。中東で今もよくみかける「ハンマーム」(ハマム)とよばれる銭湯は、湯舟につかる日本の銭湯とは違い、スチームの風呂。アルジェリアでの撮影が認められず、ギリシャ・テッサロニキにある歴史ある公衆浴場でロケしたという。 時代設定は1995年。アル

          浴場から描かれる凄惨なテロの時代…「私は今も、密かに煙草を吸っている」

          カフェバグダッド年代記⑧(了)-コロナ禍きっかけにZINE作り、文フリ出展

           2016年早春に帰国して、カフェバグダッド活動を再開したのは、帰国から2年後の2018年4月のことだった。トルコのお菓子「ターキッシュ・ディライト」(ロクム)を輸入販売していたトルコ人の方と知り合い、その方がトルコ家電メーカーに勤務していた人だったこともあり、トルコの2種類のコーヒーメーカーで、コーヒーを作り、飲み比べをしようということになった。 「スペースマーケット」というネット上で民家などを時間借りできるサービスを利用し、世田谷区内の一軒家をレンタルして会場にした。

          カフェバグダッド年代記⑧(了)-コロナ禍きっかけにZINE作り、文フリ出展

          カフェバグダッド年代記⑦-カイロの伝統的なカフェを味わう小イベント

          2011年という年は、日本国内では東日本大震災という未曽有の大災害で、岩手、宮城、福島の3県を中心に多くの犠牲者が出た年。 一方、中東では、前年暮れにチュニジアで始まったいわゆる「アラブの春」と呼ばれた民主化・反政府運動で、多くの血が流れ、劇的な政変が起きた年になる。 東日本大震災直後にイランから帰国し、新聞社の国際部で、この「アラブの春」報道の対応に追われる。途中から、「中東担当デスク」となり、連日中東など世界から届く大ニュースを「さばく」デスクとなり、生活は多忙を極めた

          カフェバグダッド年代記⑦-カイロの伝統的なカフェを味わう小イベント

          カフェバグダッド20周年&"ゼロ"プロパガンダン展10周年・合同イベント

          節目の年の春に、それぞれの活動の歩みを振り返りながら、中東のカフェとプロパガンダの未来を展望しようと、会期5日間のイベント「カフェとプロパガンダ」を企画しました。東京・荻窪のエレキギターショップのショールームを使った会場が、中東とプロパガンダについてのカフェに変わります。トークイベントには今、旬の中東ウォッチャーが登場。中東菓子バクラヴァ付きの回もあります。トーク以外の時間は、ドリンクを注文していただき、カフェとしてご利用できます。見る・聞く・食べる中東の世界で、満ちたりたひ

          カフェバグダッド20周年&"ゼロ"プロパガンダン展10周年・合同イベント

          悪質なネット誹謗中傷の開始から1年--被害を減らすために

          カフェバグダッドと、友人の比呂啓さんに対する常軌を逸した悪質な誹謗中傷がツイッター(現)上で始まって1年になる。始まって数か月の経緯については、以下のnoteマガジンを参照してほしい。 人の名誉を傷つける、口汚い言葉の暴力の数々(マガジンで指摘していないものが、まだまだある)は、人間という生物の、最も悲しく、哀れな側面が表れていて、複雑な気持ちになる。今もネット空間に存在している、こうした中傷ツイートが放置されていることは、到底容認できない。書き込んだ方々には、即刻消去を改

          悪質なネット誹謗中傷の開始から1年--被害を減らすために

          カフェバグダッドと日本SNS発展史⑨(了)--SNSからZINEへ

          さて、SNSからみたカフェバグダッド活動の振り返り連載も、これで最終回。Tik Tokとか、Threadsが登場するのか、と予想している方もいらっしゃるかも知れない。 しかし、実をいうと、この2つのSNSについては、あまり言及することがない。Tik Tokに関していえば、まず、動画というものが苦手なので、手も足も出ないという感じだ。Threadsについていうと、Twitter(X)の代替とした期待されていたこともあったのだろうが、現在のところ、シフトする強い理由が見当たらな

          カフェバグダッドと日本SNS発展史⑨(了)--SNSからZINEへ

          マクルーバ・ガイド「Oh! Maqluba」を作りました

          「食」を入口に世界に関心を向けていく、というのは誰もがとっつきやすい方法だと思います。私も、初めてイランに行った1991年に、羊の脳みそのソテーをパンにはさんだ「サンドイッチ」を、初めてエジプトに行った1998年にハトのグリルや、ゴマのペースト「タヒーナ」を食べ、そのおいしさに驚き、中東への興味をさらに深めた経験があります。 パレスチナやシリアなど、アラブ圏の東部地域に「マクルーバ」というコメ料理があります。アラビア語で「ひっくり返されたもの」という意味を持ち、文字通り、鍋

          マクルーバ・ガイド「Oh! Maqluba」を作りました

          カフェバグダッドと日本SNS発展史⑧--note

          さて、いよいよというか、なんというか、noteの登場だ。カフェバグダッドがnoteを始めたのは、2018年5月28日。ちなみに最初の記事は、「モロッコ・カフェびたり紀行」だった。 先日、noteプロデューサーの徳力基彦さんのレクチャーを東京・麹町のnote本社で聞く機会があった。徳力さんは、「自分はブロガーだから」と盛んに言っていたのが印象的だった。ブロガーの徳力さんが、noteのプロデューサーなのだから、やはり、ブログの延長上にあるsnsなんだろう。その上で、他のsnsと

          カフェバグダッドと日本SNS発展史⑧--note