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マガジン

  • 雲母と雲丹

    言葉の欠片、詩篇、原形質、

最近の記事

スパムメール

スパムメールが雨嵐のように降っている。映画『マトリックス』のオープニングタイトルのように。あんまりひどいものだから、あるプロバイダーは、スパムメール予報を毎日6時間ごとに更新している。 ぼくのノートパソコンにも連日大量に届いてる。ファイアウォールをかいくぐってきた怪しい添付ファイルやRe:のついたものは、一切開かずに、そのまま削除している。ところが半月ほど前から削除できないメールが毎日届いている。 送信人の名前を見てドキンとした。新入社員当時、つきあっていた彼女と同じ名前

    • お陀仏したらな

      ぽたん、ぽたり、ちたん、ちたり。顔に水滴が当たる。一瞬、オレはどこにいるのかわからなかった。身体を動かそうにも、動かせない。無理に動かそうとしたら、激痛が走った。 古い真空管の白黒テレビのように、記憶が鮮明になっていく。そうだ。オレは落盤事故にあったんだ。まもなく、この炭坑(やま)は、閉山になろうというのに、なんで、よりによってこんな目にあわなきゃならないんだ。周囲には誰かいないのか。救助はどうした。不意に、どこからか、音もなく、トロッコがふわりとやって来た。 数人が覗き

      • サヨナラ

        ぼくはバスで中学校へ通っていた。いつも同じバスで乗り合わせる女の子がいた。同じ中学で一学年下の子だ。彫りの深いエキゾチックな顔立ちは、いつの間にか、ぼくの心の中で気になる存在となっていた。そのうち、目が合うと、彼女は微笑んでくれるようになった(気がするだけかもしれないが)。 あれは秋の終わり頃、サッカー部の練習を終えて、職員室の前を通ると、黒い枠の貼り紙が風で揺れていた。そこだけなぜかスポットライトを浴びたようになっていた。マジックインキで書かれた内容は、彼女が病気で急死し

        • さまよえる不動産屋

          いかがですか、いい物件でしょ。もうねえ、うちのイチ押し。お客さん、お仕事は-。ほお、音楽関係ですかあ。わたし、お会いしたとき、ギョーカイの人じゃないかって、にらんでたんですよ、ヘヘッ。だったら、もう防音性の優れた地下室がぴったり。ここだけの話なんですが、まあ、俗にいうワケあり物件ってヤツで。だから、なんたって格安でしょ、日当たりもいいし、このあたり一等地でしょうが。お隣りさんは、演歌の大御所のお屋敷、ほら、あすこですよ。 知ってました、知ってたら見に来ないかあ。そっか、そっ

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        • 雲母と雲丹
          4本

        記事

          クズガ イッパイデス ステテクダサイ

          クズガ イッパイデス ステテクダサイ オフィスにあるシュレッダーの表示 おかしくはないが、何か気になる、なぜか気になる 星クズだったら、夜、まだ光るかもしれない パンクズだったら、ハトがついばみに来るかもしれない おがクズだったら、キノコの寝床になるかもしれない 葛だったら、ツルが巻きついて人を襲うかもしれない 紙クズだったら、紙吹雪になるかもしれない 切りクズだったら、旋盤工の腕前がわかるかもしれない 人間のクズだったら、たちまちケンカになるかもしれない

          クズガ イッパイデス ステテクダサイ

          フキゲンちゃんとゴキゲンくん

          フキゲンちゃんは いつもフキゲン 蟻の巣にジョウロで水をかけたら その晩 溺れる夢を見た フキゲンちゃんは ますますフキゲン ゴキゲンくんは いつもゴキゲン 家の電気を止められても ロウソクをつけて キャンプ気分 ゴキゲンくんは ますますゴキゲン フキゲンちゃんは いつもフキゲン ネット通販で頼んだブラウスが 似合わないと窓から投げ捨て フキゲンちゃんは 懲りずに再注文 ゴキゲンくんは いつもゴキゲン 散歩していたら ブラウスが空から降ってきた

          フキゲンちゃんとゴキゲンくん

          ライバル店

          1階は、居酒屋。 地階は、バル。 居酒屋はホッピー、キンミヤ酎ハイ、地酒。 バルはイタリアワイン、スプマンテ。 居酒屋は海鮮料理が売り。 三陸直送、ウニ、ホタテ、ホヤ。 店頭の水槽にはりつくアワビ。 バルは窯焼きピッツァが売り。 ほかには手打ちパスタ、 天井からぶら下がっている自家製生ハム。 1階からは、いつも演歌。 地階からは、いつもカンツォーネ、イタリアンロック。 居酒屋はおっさん御用達。 地階はおしゃれカップル御用達。 店主同士がいがみあって

          ライバル店

          キカイな人々

          取りあえずは、仕事の終了時間となった。 結局、予定より少しの遅れが出たが、これなら明日以降挽回できるだろう。 いつものように駅そばのバーに立ち寄ることにした。 まあ日課みたいものである。皆勤賞をあげてもいい常連客の一人がすでに メートルをあげていた。挨拶を交わしてしてビールを注文する。 「どうですか、最近は」 確か保険会社に勤めている男がグラスを持って近づき、話しかけてくる。 こいつは飲みすぎなきゃ紳士だ。 「相変わらずってとこかな」 「ぼくのはなんだかガタ

          キカイな人々

          通夜20世紀

          火葬場から20世紀がうっすらと白い煙をあげている。 隣のゴミ焼却場ではジャンクアートのようなゴミが灰となっている。 灰さようなら。灰さようなら。 焼き上がるまで待っている控え室。 座卓の上には、菓子、ジュースのペットボトル。 一升瓶から湯飲み茶碗に注がれる清酒。 骨のような乾きものを囓る。 飲み干すと、腹の底が火照ってくる。追い駆けっこする子供達。 胡座をかいて、冷や酒。明日の告別式の進行の確認。 鼻の穴から煙草の煙を出しながら、喋る葬儀屋。 喪章に止ま

          通夜20世紀

          Still Alive

          ガスファンヒーターをつけると、 いつの間にか二階から猫が下りて来て ちょこんとあたっている。 消すと、しばらくは余熱にひたっているが、 それもなくなるとまた二階へ上がって行く。 今朝は、フケみたいな粉雪が降りかける。 猫はベッドの中に潜り込んでいる。 ベッド中ビバーク。 猫捜索隊の隊長が 生体反応を確認しようと 手を突っ込んだら、引っ掻かれた。

          アレルギー

          ラテックスアレルギーだから インナーイヤホンがゴムだとかゆくてかゆくて 金属アレルギーだから 腕時計の金属バンドは、ダメダメ 牡蠣アレルギーだから Rのつく季節は早く去れと思う ハイトーンボイスの女声アレルギーだから ヘリウムガスを吸ってから返事をする 塩素アレルギーだから ジムのプールで泳ぐのは、緩やかな自殺行為 マンゴアレルギーだから 台湾スイーツの定番マンゴーかき氷は、劇薬扱い 母親アレルギーだから 熟女の上司に叱られるとしがみつきたくなる 寒暖差アレルギ

          アレルギー

          朝、電車に乗ったら

          朝、電車に乗ったら、 弓を持った若者でごったがえ。 隣町の弓道場で 弓道の大会があるのか。 車内の天井がつかえそう、つかえそう。 こんな状態では、 いざ、敵が攻めて来ても弓を射ることはできない。 朝、電車に乗ろうとしたら、 つかえて、うまく乗れない。 入口から中まで学生服を着た 膨張した肉塊の壁。 隣隣町の相撲場で大会があるのか。 無理やり乗ったら、息苦しく、暑い。 次の電車を待つことにした。 朝、電車に乗ろうとしたら、 そこはカップル専用車両だった。 男女、女女、男男、

          朝、電車に乗ったら

          アルバイト

          姉さんは、テレビで「中三地学 皆既日食」を見ていた。 僕のアルバイトは工場へ行って、肺活量測定器に似た機械で 空気をいっぱいタンクの中に送り込むことだ。 みんな20歳の誕生日を迎えると自然と辞めていく。 僕たちの空気の使い道は誰も知らない。 週三回、午前10時から12時までの2時間、 懸命に空気を送るだけで割といいお金になる。 あと3カ月で僕はこのアルバイトをリタイヤしなければならない。 ジェイソン通りにある楽器屋へ 僕はアコーディオンの残りの半金を払いに行った。

          アルバイト