カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第15回は暗くて影のあるバンドが勢力を伸ばしていたゼロ年代邦ロック界において、明るい陽キャみたいなバンドを紹介する「ゼロ年代明るい邦ロック」特集の書き起こし(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。
カンノ:続いてはこちらのバンドをお聴きください。Riddim Saunterで「MUSIC BY.」
カンノ:個人的にこのバンドには衝撃を受けていて。この曲を聴いたときは2006年くらいかな。バンドとしてあまり展開が発生しない、ループミュージックとして聴かせるものの最初に聴いたものな気がする。少なくともそういう意識で聴いたのは、この曲が初めて。
オノウエ:へぇ。
カンノ:あとロックバンドのなかにホーン隊がいるとかね。あとは「多幸感ってこういうことか」みたいなものも知ったのはこの曲かな。あと歌詞が英語っていうのもあるけど、ループによって「なにも言っていない」性が高まると思うんだよね。同じことを言い続けているわけだから。物語がつきにくいじゃん。
オノウエ:無意味さがより際立つよね。
カンノ:で、今言った要素は、強い勢力を誇っていた邦ロックとは真逆だと思うんだよ。歌詞に意味がついていなきゃいけないのについていない、暗くなきゃいけないのに多幸感、無骨な楽器隊ではなくてホーンも入っちゃってる、ループで展開がない。いわゆる邦ロックとは全然違う文脈のバンドかなと思うんです。
オノウエ:はい。
カンノ:そしてレーベルはNiw! Recordsなんだけど、明るい音像の人たちが多かった印象かな。カクバリズムとも全然違う。
オノウエ:それはそうかもね。
カンノ:下北ムラ、世田谷ムラみたいなものがあるとして、2000年代はDAIZAWA RECORDS、そしてその大本のUK プロジェクトが強かったと思うんだけど、そのムラから外れてたところでおもしろい人たちもいたなと。その観点でRiddim Saunterみたいな人たちは当時、聴いたことがなかった。
オノウエ:さっきから言ってるけど、今聴いたらめっちゃいいんだけど、当時は「俺の曲だ」と思えなかったんだよね。
カンノ:やっぱり「物語的であれ」「文学的であれ」とかが強かったよね。
オノウエ:あと、高校生を相手にする曲じゃなかったんだよ。
カンノ:だから難しい言葉を使っちゃうほうがむしろ高校生向けだったよね。時代って巡るよね。今、Riddim Saunterみたいなバンドが出てきたら若い人にウケそうな気がするじゃん。バンドの楽しさとフェスの楽しさが合致しそうじゃん。
オノウエ:なるほどね。
カンノ:2000年代ってそうじゃなかったからね。で、続いては言うなれば逆パターンかな。
オノウエ:逆?
カンノ:この人たちの曲を聴いてみましょう。Sound Scheduleで「ことばさがし」
カンノ:今までと系統が違う曲を紹介しました。のちのオーイシマサヨシさんを見れば明らかなんですけど、売れるためになんでもやる人になりました(笑)もちろんいい意味ですよ(笑)ちゃんと稼ぐためにプライドをかなぐり捨てて、最高のエンターテインメント表現をしてくれているわけですから。
カンノ:そんなオーイシさんの自己表現時代楽曲の代表がこれかなと。すごく邦ロック的。で、サウスケって結果的にそれでダメだったわけだ。逆に言うと、これがダメだったから、今の明るいオーイシマサヨシが誕生していると。もともと軽くない表現をしていた人が、いろんな変遷を経て、いい意味で軽い表現をやるようになったと。こんな例はほかにない気がする(笑)
オノウエ:そうだね。Sound Scheduleって売れてもよかったじゃん。
カンノ:そうだね。Mステも出てるはず。
オノウエ:だよね。ただ今聴いて思ったのが、邦ロックをやるには歌がうますぎるんだよな。
カンノ:その見方はおもしろいぞ。
オノウエ:これはあくまで個人的に思ったことですけど、うますぎると自分のものの感じがしないんです。「これは俺の曲じゃないな」って。自分の存在と遠すぎて。悩みとか心情を歌ってるんだけど、歌い方があまりにポップスとしてオーイシマサヨシはうますぎるじゃん。今聴いててそれを思い出しました。
カンノ:オノウエ君とよく喋ることで、アジカンの「遥か彼方」は「生き急いで~♪」の「で~♪」の高音が微妙に届いてなくていいという話ですね。
オノウエ:そうそう!
オノウエ:シャウトした声が、正しい音として届くか届かないかくらいが、自分の鬱屈としたなにかとリンクする感じ。
カンノ:Sound ScheduleはたしかYAMAHAのレーベルなんだよ。ちょっとロックバンドにしては有能な感じがしない?(笑)
オノウエ:たしかに、演奏も歌もうまそうだよね(笑)
カンノ:ということで今回は「ゼロ年代明るい邦ロック」特集でした。
『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!