白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

嘘とエンタメ。

2024年4月23日放送の『アルコ&ピース D.C.GARAGE』において、【今日のゴシップ】に関するリスナーメールが取り上げられていた。【今日のゴシップ】とは、リスナーから送られてきた様々な“嘘のゴシップ情報”を紹介する、番組のオープニングを飾るコーナーである。そのメールには、このコーナーで紹介されていたゴシップ情報を迂闊にも事実であると勘違いしてしまい、周囲の人間に言いふらしてしまった経験から、このような悲劇を繰り返さないようするために、改編の時期にネタコーナーだということを改めて説明した方が良い……というような提言が書かれていたという。確かに、【今日のゴシップ】が嘘のゴシップ情報を取り扱うコーナーであることが、番組内で言及される機会は少ない。アルコ&ピースがリアリティ志向のコント師であることが少なからず影響しているのかもしれない。そのため、あまり番組を聞き慣れていない人の中には、その内容を事実として受け止められてしまう人が出てくる可能性も、確かにゼロとは言い切れなかった。

このメールの話を聞いていて、思い出したことがある。『霜降り明星オールナイトニッポン』の【霜降り交遊録】である。せいやがモノマネを交えながらリスナーから送られてきた“嘘の芸能人のエピソード”を紹介するコーナーなのだが、これも当初は、嘘の芸能人エピソードを取り上げるコーナーであることを明言していなかった。しかし、ある時期を境に、“嘘の芸能人エピソード”を紹介するコーナーであることを、明確に提示するようになったのである。私の記憶が正しければ、それは2023年2月に放送された、オールナイトニッポンの特番がきっかけであったように思う。当時、ニッポン放送では、オールナイトニッポン55周年を記念して、歴代のパーソナリティによる55時間ぶっ通しでオールナイトニッポンを放送するという特別番組を放送していた。その一環として、「ラジオがテレビをジャック!」と称し、『霜降り明星オールナイトニッポン』の一部をテレビで放送するという企画が行われたのだが、この時、テレビで放送されたコーナーが【霜降り交遊録】だったのである。この時点で、確か番組内でも、「テレビで初めて番組の存在を知った人の中には、内容を真に受ける人がいるかもしれない」という会話がなされていたような気がするのだが……そこまではっきりとは覚えていない(本文は筆者の記憶のみで書いているので、詳しく覚えているリスナーの方がいればコメントをよろしくお願いします)。ともあれ、そういった世間に対する影響を考慮して、“嘘の芸能人エピソード”という説明が加えられたのは間違いないだろう。

エンタメとしての嘘は、それが嘘であるということを前提とした人たち同士でなければ、まったく通用しない可能性を秘めている。そして、それはエンタメとしての影響力を持つごとに、いっそう大きくなっていく。時には、それが誤情報やデマとして拡散され、勝手知らないところで批判の遡上にあがってしまうことも起きかねない。インターネット主流の昨今においては、むしろそういったことが日常的に起こっている。そんな時代において、嘘をエンターテインメントとして楽しむことの難しさと危うさを、なんとなく感じさせられた一件でありましたッソ!

『R-1グランプリ2024』ファーストステージ:ルシファー吉岡

『婚活パーティ』。婚活パーティの自己紹介タイム中、入れ替わり立ち替わりやってくる女性に自己アピールしようとするのだが、相手が自己紹介タイムのシステムをあまり理解していないため、そのルールを説明するうちに持ち時間が過ぎてしまう……そんな男の孤独な戦いを描いた一人コント。そもそもの話として、ルシファー吉岡の演じる中年男性が、婚活パーティのシステムを把握していて、相手にも上手に分かりやすく説明できる……という初期設定が素晴らしい。婚活パーティに慣れている男の雰囲気が、あまりにもハマり過ぎている。この状況が三回繰り返されて、観客に設定を理解させてからの流れも見事。「運営に訴え出るも聞いてもらえない」「他の男性もルールを理解していない」と他の可能性を潰してからの、怒涛の勢いで繰り広げられるボケの波状攻撃。一対一の掛け合いから突如として逸脱する「あなたも一緒に聞いてください!」、この状況を端的に表しているものの妙にダイナミックな表現がバカバカしい「今、この婚活パーティは、私以前・私以後で分かれているんですよ!」には、腹を抱えて笑った。もっとも厳密にいえば、これらはボケではない。婚活パーティの中で起きている問題を解決するために、男が出来ることをやっているに過ぎない。だが、事態を理解していない人間にとっては、その言動はまったく理解できるものではない。この男と他者との認識の齟齬を想像させられることで、笑いがいっそう増幅される。ハッピーエンドを匂わせながらのペーソスに満ちたオチも素晴らしい。この設定で出せる最高点を叩き出したのではないだろうか。いやあ、面白かったな。最後に余談。理不尽なシステムの問題点に対して立ち向かっている人の姿を描写しているという意味では、今回のルシファー吉岡のコントは非常に社会風刺の趣きの強いネタだったと思う。でも、あれほど吉住のネタで注目を集めた大会だったのに、そういう指摘をしている人をあんまり見かけなかった気がする。まあ、別にええねんけど。

追記。ちゃんとネタの構成を解説できていない気がしてきたので、改めて説明する(この追記部分に関しては、出先から記憶だけで書いているので間違っている点もあるかもしれない。ご容赦)。まず導入部分。「自己紹介タイムなのに、システムの説明をするだけで話が終わってしまう」という現状を観客に理解させるために、きちんと段階を踏みながら三回繰り返すのは、こういったネタの常套手段。ルシファーの場合、彼自身のビジュアルの良さもあって、ここでしっかりとツカめていたように思う。この現状を理解させてから、四回目にしてようやく状況を打破するために動き出すのも正攻法。しかし、スタッフも他の男性の参加者も頼りにならないことを、ここではっきりと説明する。最後の一瞬、ルシファーが現状を上手く利用しようと立ち回るような素振りを見せるところも重要だ。これ以後の展開において、ノイズに成り得る分岐点はすべて遮断することによって、観客がここから先の展開にしっかりと集中できるわけだ。とはいえ、まだまだ可能性は無限大だ。いくらでもハチャメチャな展開を繰り広げることが可能である。しかし、ここでルシファーは、あくまでも相手の女性に婚活パーティのシステムの説明に固執することを選択する。これが素晴らしい。テーマに一貫性を持たせることで、ネタの芯が太くなる。こうなると可能性は一気に狭まってしまうわけだが、そのタイミングで「あなたも一緒に聞いてください!」と、次のターンで待ち構えている女性を巻き込む展開へと発展する、この絶妙な意外性。一対一の構図ばかりを見せられていた観客の意識を操作した、一人コントだからこそ成立する見事な離れ業だ。ここからコントは一気にオチへと雪崩れ込むわけだが、このシーンでのハッピーエンドの匂わせ方も素晴らしい。ただただ形式的なお見合いのやり取りをするのではなく、女性にルシファーの髪型をイジらせるというひねりを加えることで、以後の展開を予測しづらい状況へと持ち込んでいる。ここで観客の意識を比較的ベーシックなオチから逸らしているからこそ、最後のオチがもたらすペーソスが格段に強調されるのである。改めて、ルシファーの容姿から構成・展開・ボケのひとつひとつに至るまで計算されつくした、本当にとんでもないコントだった。

2024年5月のリリース予定

01「JARUJARU TOWER 2022 BOX 初回限定版 ―ジャルジャルのなじゃら&ジャルジャルのにじゃら― (2枚組)
15「第25回東京03単独公演「寄り添って割食って」
29「和牛 漫才集

どうも、すが家しのぶです。連休の真っ只中ということで、昨日は昼から酒をあおっていたのですが、そのおかげで本日は二日酔いとなっております。そんな状態で無理にブログを更新する義理もないのですが、来月のリリース情報をまとめていなかったことを急に思い出し、突貫工事的に記事を殴り書きしている次第であります。明日までには回復していると良いのですが。

まずは5月の始まりにリリースされるジャルジャルの最新作。2022年に開催された二つの単独ライブ「黒とベージュ」「あいがちゅう」を一つにまとめたDVD-BOXとなっております。ジャルジャルほど知名度のあるコンビが一年に二度の単独公演を成立させられるのは、なかなかにスゴいことなのですが、彼らの場合はなんだか当たり前のことのように見えますね。それがまたスゴいことなのですが。ちなみに、2023年は春から夏にかけて全国9都市・11会場を巡るツアーを敢行しているので、もしも次回作があるとしたら一枚組になるのではないかと思われます。……多分。なお、DVD-BOXとは別に、「黒とベージュ」「あいがちゅう」それぞれ単体のソフトでもリリースされるようです。うっかり破損してしまっても、これで一安心だ。

続いては東京03。2023年に開催された全国ツアーの東京最終公演の模様を収録した映像ソフトになります。また、特典映像として、追加公演で披露された今回のライブの主題歌である『なんで仲良くできるのか?』のライブバージョンを収録。……東京03の特典映像といえばゲストを招いたスペシャルコントのイメージが強いのですが、今回はどうやら違うようです。最後は和牛。2024年3月をもって解散した彼らが、賞レースで披露してきた漫才を収録したベスト盤になるようです。和牛は2022年・2023年とライブツアーを敢行しているので、そこからの映像が何かしらか入ってくるだろうと思っていたのですが、収録されないようです。これが最後の映像作品になるのであれば、なんだか勿体無いような気がしますね。……いや、もしかしたら、出る可能性もあるのか?

明けて6月は、あの賞レースのソフト化ですね。相変わらずDVDのみでのリリースになるようですね。もうBlu-rayも出していいんじゃないかって気がするんですが。

安全第一希望禁煙厳守

先日の話。仕事を終えた私は、普段通りに車で帰路についていた。その道の途中に、とある分岐点がある。本道と脇道が鋭角に繋がっていて、ちょうど高速道路の合流地点のような形になっている。そこで事故に遭いかけた。本道を走っている私の車が脇道の前を通過するのと同時に、一台の車が脇道から本道へと入り込んできたのだ。本来であれば、脇道から本道へと侵入する場合、手前で一時停止し、本道を通過している人間や車両などの存在を確認する必要がある。ところが、その車はうっすらとブレーキを踏みながらも、停止することなく脇道から本道へと突っ込んできたのである。幸い、視界を遮断する壁や建築物のない見通しの良い道であり、以前に上司から「あそこは何も考えずに突っ込んでくるバカがいる可能性も考慮して通過しないといけない」と忠告を受けていたこともあって、私は咄嗟に車両の無かった反対車線側へと大幅に自車をかわすことが出来たため、相手の車と接触することはなかった(本来であればブレーキを踏んで急停車すべきところだったのだろうが、向こうが分岐点の手前で中途半端にブレーキをかけていたため、判断が遅れた)。ひとまず事故は免れたわけである。だが一点だけ、引っかかっていることがある。

十年以上前に、同じような状況で事故に遭ったことがある。道を走行していると、左側にある駐車場から車が飛び出してきて、やはり大幅に避けようと反対車線へと逃げたものの接触してしまったのである。その後、警察や保険屋を呼び、現場検証が行われたわけだが、ここで私と相手の運転手との間で証言に食い違いが発生した。私は「駐車場から飛び出してきた車を避けるために、反対車線側に逃げようとしたが、ぶつかってしまった」と証言していたのだが、相手は「駐車場を出たところで、後ろから来た車が強引に追い越そうとして、反対車線から前に出てこようとしたところでぶつかった」と証言したのである。つまり、自分の確認不足をまったく自覚せずに、相手(=私)を悪いものだと決めつけていたのだ。無論、私の証言が絶対に正しいとは言い切れない。言い切れないが、それにしてもここまで認識が違うものなのか……と驚いたものである。

今回の事故未遂で、ふっと当時の記憶が蘇った。そして、ふと想像したのである。「今回、こちらの咄嗟の判断で事故には繋がらなかったのに、向こうの運転手には「反対車線側から前に強引に出てくるなんて、乱暴なドライバーがいたものだな」と勘違いされてしまった可能性もあるのではないか……?」。脇道から飛び出してきている時点で、相手側の運転手に非があるのは間違いない。そのことを謝罪してもらいたいとは思わない。思わないが、せめて反省はしてもらいたい。反省して、このようなことを二度と起こさないように、気を付けてもらいたい。だが、ことによると、相手は私を悪者だと勘違いしたまま、その後もドライバー人生を謳歌するのかもしれない。だとすれば、なんとも居たたまれない話ではないか。で、あまりにも居たたまれなかったので、ブログに書いた次第である。とはいえ、人生はきっとそんなことの繰り返しなんだろう。なにやら空しい。

ショートコント群雄割拠の時代を思い出してみる。

ショートコントを専門にしている芸人の存在が、もはや忘れ去られようとしている気がする。昔はけっこういたのだ。例えば、かつてホリプロコムに所属していた、江戸むらさき。私服のようなラフな格好で繰り広げられるキレ味鋭いオチのショートコントの中には、未だに忘れられないものも少なくない。私と同世代の人の中には、ガチャガチャに入っているスーパーボールを目にするたびに、彼らのことを思い出している人もいるのではないだろうか。当時のショートコント界隈は、江戸むらさきを中心に発展していたような印象がある。無言で舞台袖からホワイトボードを引っ張り出してきて、そのまま舞台袖へと移動させるパフォーマンスが衝撃的だったモジモジハンターアメリカンバイクに成り切った相方に対して「あれ?鍛治君じゃない?」と、急に現実へと引き戻すオチが多くの人の心に突き刺さったさくらんぼブービー、「ジャンガジャンガ」のブリッジ(ネタとネタを繋ぐギャグのようなもの)が印象的なアンガールズなどは、その代表格といえるだろう。今やコント師としての評価も高いアンガールズだが、コント中に巻き起こる混沌をオチとして採用したショートコントの衝撃は凄まじいものだった。衝撃といえば、関西圏からやってきたイシバシハザマの『イシバシハザマのおかしな話』も衝撃的だった。『野球拳』のメロディを絡めながら展開するショートコントは当然のように面白かったのだが、最後の最後に披露されるショートコント内に登場したキャラクターたちのカーテンコールがたまらなかった。軽やかな印象を与えるショートコントというスタイルに一石を投じる手法だったのではないだろうか。現在、彼らが築き上げてきたショートコントの牙城は、怪奇!YesどんぐりRPGの三人に引き継がれているように思う。彼ら自身はギャガーを自称しているが、ギャグが発動するまでの丁寧なフリや演技は、かつてのショートコントのそれそのものしか見えないからだ。その血脈を絶やさないように、どうか未来へとショートコントを繋いでもらいたい……いや、そんな大袈裟にするような話でもないが……。

ハレルヤの思い出話をさせてくれ!

たまにハレルヤというコンビがいたことを思い出す。大野泰広加藤直也によって1997年に結成され、2007年に解散した。ゼロ年代のお笑いブームが下火になり始めた2005年前後に『爆笑オンエアバトル』を中心に活躍、番組内ではそれなりに評価されていたように記憶している。とはいえ地上波の番組で目にする機会は非常に少なく、その存在を記憶している人間は多くないのではないだろうか。仮に、キャラクターコントが大量消費された『爆笑レッドカーペット』のブームまで、コンビとしての活動を継続していたならば……と、今となっては思わなくもない。ハレルヤのネタといえば、不出来な平社員・加藤の失態を大野演じる主任が自らの保身と出世のためにカバーしようとてんてこ舞いになる様子を描いた、サラリーマンコントである。メガネに横分けというザ・サラリーマンといった見た目の主任が、部下の加藤を「カトゥー!」と独特な口調で怒鳴っている姿が、如何にも軽妙洒脱なコメディアンといった印象を与え、とても面白かった。個性を重要視する時代の若手芸人でありながら、サラリーマンのドタバタ喜劇という古典的なスタイルを採用していたことも、彼らの魅力に繋がっていたのではないかと思う。時折、主任に他の登場人物を絡ませることで、世界観に奥行きを見出していることもあった。当時の私は、そんな彼らのコントが大好きだった。いつか『主任と加藤』の世界がまとまった形でソフト化される日のことを期待していた。だからこそ、ハレルヤが単独で映像ソフトを出さないまま、解散してしまったときには、非常に残念に思ったものである。現在、大野は俳優として、加藤はピン芸人カトゥー直也として活動している。どちらも業界に残っていること自体は喜ばしいが、ハレルヤのコント世界が抹消されてしまっていることは、未だに勿体無いと思っている。今からでも出してくれないもんかねえ。

テンダラーの転換期

大型の演芸特番でテンダラーが漫才を披露している姿を目にすることがある。スラッとした体型でスーツを着こなし軽妙に動き続ける浜本と、どっしりとした中年体型で年相応の威厳を放っている白川による、特定のシチュエーションを何度も何度も繰り返すスタンダードな漫才。軽やかなのに重厚、しなやかなのにハードパンチャー。その漫才師としての堂々とした佇まいからは、芸人特有の色気が滲み出ている。そんな彼らを見ていると、不思議な気持ちになる瞬間が訪れることがある。思うに、テンダラーがかつて、漫才よりもコントに力を入れていた時期を知っているからだろう。もっとも、その頃にしても、彼らは漫才の手を抜いていたわけではない。『M-1グランプリ』では、第一回大会からラストイヤーにあたる第四回大会までの四年間、常に準決勝進出を果たしているほどには評価されていた。ただ、『爆笑オンエアバトル』などの番組を通じて、若かりし日の彼らの漫才をリアルタイムで見ていた当時の自分には、他の漫才師に比べて物足りなさを感じさせられることが多かった。面白くないわけではないのだが、コンビならではの明確な個性が感じられない……そんな印象の漫才だったのである。2008年にリリースされたテンダラーの初の映像作品『$10 LIVE ベストコントヒッツ!?』の特典映像には、ちょうど漫才師とコント師の狭間にいた時代のテンダラーの漫才ネタが収録されている。テーマは、なんとあの『必殺仕事人』である。この時点で既にスタイルそのものは完成されているが、『THE MANZAI 2011』で披露されたバージョンほどに洗練された印象を受けない。この僅か三年弱の間に、彼らがはっきりと漫才に向き合うことを決意する瞬間があったのだろうか。その辺りの心境の変化は分からないが、彼らの現在の漫才スタイルの源流として、一度は見ておいた方が良い映像かもしれない。きっと今のテンダラーの漫才の技巧に改めて唸らされることになるだろう。

最強のベスト盤。

お笑い芸人の代表作を一枚にまとめているベスト盤の中で、最も完成されている作品といえば、今も昔も『おぎやはぎ Best Live「Jack Pot」』(2004年12月発売)である。過去に行われた単独ライブの中から厳選されたネタを再演するライブの模様が収録されているのだが、【副音声コメンタリー】【マルチアングル機能】【ドランクドラゴンアルファルファとのユニット“東京ヌード”によるコントの再演】など、非常に充実した機能と特典が搭載されている。中でも【マルチアングル機能】は優れモノだ。DVD鑑賞用に編集された【3アングル編集バージョン】と、単一カメラによる舞台映像の【フルサイズバージョン】の2パターンを選択が出来るため、編集された映像では見られなかった演者の動きをチェックすることを可能にしている。個人的には、もっと芸人のライブ映像作品で取り入れられるべき機能だと思っているのだが、残念ながら本作以外の作品では一度もお目にかかったことがない。予算の問題なのだろうか。

そんなベスト盤としては大変に完成されている本作なのだが、肝心の内容はというと、かなりクセの強いものになっている。例えば、おぎやはぎといえば漫才師のイメージが強いが、本作に収録されているネタはすべてコント。『M-1グランプリ』決勝で披露していたような漫才を期待しながら鑑賞すると、肩透かしを食らうことになるだろう。また、コントの内容も、ゲイやロリコン教師のような、やや観る人を選んだテーマになっている。ことによると「まったく笑えなかった」という感想を抱かれるかもしれない。とはいえ、今やテレビを主戦場としているおぎやはぎが、かつて若手だった時代に単独ライブでどのようなネタを披露していたのかを観ることが出来るという意味では、大変に意義のある作品といえるだろう。根本的にやっていることは今も昔も変わらないし……。