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金品の要求もしてこない不思議なネット水軍。公安が調査して判明した意外な事実

ECなどに大量の悪評を書き込み、削除の代わりに金品を要求するネット水軍行為は以前から存在する。しかし、金品も要求してこない不思議なネット水軍行為が発生し、公安が捜査してみると、発信元はライバル企業だったと法治日報が報じた。

 

企業の炎上案件の背後にいるネット水軍

中国には「ネット水軍」と呼ばれる人たちがいる。特定の偏った情報を集中的に発信する人たちのことで、組織化されてお金をもらって発信をすることもあれば、単に自分の楽しみのためだけに発信をすることもある。近年増えているのは、外資系企業が消費者に不誠実なことをした時に、それが些細なことであっても過剰な攻撃をし炎上させるというパターンだ。国内企業と海外企業が同類の問題を起こしても、海外企業の方が炎上しやすいのは、このようなネット水軍たちが標的にするからだと言われている。問題意識から発信をしている人もいれば、資金を出す人がいてわずかなお金をもらって発信をする人もいる。

このような行為は、一般的な市民の言論活動と境界が曖昧で、防止するうまい策がなかなか見当たらない。水軍もそこはわかっていて、善良な市民を装い、犯罪に問われないようにしている。

 

一線を踏み越え恐喝に走る水軍も

しかし、一線を踏み越える水軍もいる。ECで販売している出品業者に悪評レビューを大量投稿し、削除と引き換えに金品を要求する行為だ。中国のECでは法律により「7日間無理由返品」が義務づけられている。これを利用し、大量に商品を購入し、悪評のレビューを書き、商品は返品をしてしまうというものだ。レビューはそのまま残るため、出品業者としては評価が下がって困った事態になる。

出品業者はプラットフォームに通報をするが、プラットフォームはなかなか解決に乗り出してくれない。水軍たちは、一般消費者の苦情と区別がつかない書き方を心がけているからだ。

水軍がはっきりと金品を要求しているのであれば警察に相談する手もあるが、水軍たちも言質を取られないように、出品業者側が金品の提供を口にするまで辛抱強く待つため、警察も捜査に乗り出すことが難しい。

▲家宅捜索を受ける企業。最初はライバル企業の評判を落とすことが目的だったが、自社の売上が伸びることに気がつき、さまざまな企業に水軍行為をしかけていった。

 

金品の要求をしてこない不思議な水軍たち

浙江省紹興市で雨傘工場を営む宋常青さん(仮名)も、このような水軍の被害に遭った。ECで自社製品の雨傘を販売していたが、ある時、突然1時間に300本以上も売れるということが起きた。宋常青さんは気になったが、過去にそういうこともないわけではなかった。ネットのインフルエンサーが広告ではなく、たまたま自社の雨傘を評価する投稿をしてくれ、それにより突然売れるということがある。

しかし、翌日になると、EC店舗ページのレビュー欄は、悪評が多数投稿され、商品の返品申請も殺到した。

ネット水軍にやられたと宋常青さんは頭を抱えたが、水軍たちは金品を要求してくることもなく、連絡さえ取ってこない。どういうことかと不思議に思っていると、宋常青さんのショップはそれまで雨傘ジャンルで1位の評価だったのが、2位に下がり、3位に下がりと滑り落ちていった。レビュー欄を見て、多くの人が購入を避けるようになったからだ。

同様のことが、2ヶ月の間に3回も起こり、1600個の商品が返品され、悪評が100件以上も書き込まれた。店舗の売上は月に100万元も減少し、得られるはずだった10数万元の利益を失ってしまった。

宋常青さんは売上を回復するために割引販売をした。22元の雨傘を11元に割り引いた。しかし、それでは赤字運営になってしまうために、宋常青さんは紹興市上虞公安に相談することにした。

 

公安が捜査に乗り出し、発信元の企業を突き止めた

上虞公安サイバーセキュリティー大隊は、この事件の捜査を始めた。組織的な業務妨害の可能性があるからだ。

水軍たちは、返品をしてしまうため、お金は使ってないとは言え、いったんは商品代金を支払い、返金をしてもらっている。この口座情報をたどっていくと、温州市のある企業にたどりつた。捜査チームは、この企業が水軍行為を組織的に行なっている可能性があると考え、内偵調査を始めた。

内偵調査をしてみると、捜査チームは驚くことになった。この温州市の企業は、従業員が数千人もいるまともな電子商取引企業で、提携メーカーの商品をECなどで販売をしている。ネット水軍などという犯罪を犯す必要などなかった。

▲水軍行為を行なっていた企業から押収されたPC類。マーケティング部が水軍部に変貌してしまっていた。

 

有能な部下を引き抜かれた恨みからの犯行

捜査を進めてみると、意外な事実が浮かび上がってきた。キーになったのは、被害に遭った雨傘工場の従業員、柳東東さん(仮名)だった。柳東東さんは、もともと問題の温州市の企業で、マーケティングを担当していた。その腕を見込まれて、被害にあった雨傘工場の宋常青さんに請われて転職をし、この雨傘工場の製品をECでの1位の企業に押し上げた。

この転職をする時に、犯行を犯した温州市の企業から、スタッフも引き連れてきていた。このことを、温州市の企業のマーケティング部の元上司が恨みに思ったようだ。有能な柳東東さんに離職をされ、スタッフも引き抜かれている。さらには、温州市の企業が取り扱う雨傘製品は、ランキングを下げてしまった。この上司は社長から管理能力を疑われ叱責をされた。

元上司は、マーケティング部のテクニックを使って、雨傘工場の評価を落とすことを始めた。ネットで、一人8元で人を雇い、購入、返品、悪評レビューを書かせるということを行なった。これにより、温州市の企業の雨傘の売上が伸び、元上司は社長の信頼を取り戻した。

しかし、この元上司は、社長の信頼を勝ち取り、自分の給料をあげる簡単な方法を知ってしまった。雨傘工場だけでなく、自社が扱う製品のライバル企業100社余りに次々と同様の手口で評価を落としていったのだ。マーケティング部がネット水軍部になってしまった。

 

ライバルを妨害するための水軍行為が増えている

捜査チームは証拠固めをした上で、温州だけでなく、関連営業所がある杭州市、義烏市を同時に家宅捜索し、PC17台、スマートフォン16台を押収し、元上司とその部下17人を逮捕した。17人は生産経営破壊罪により起訴をされた。

ECだけでなく、ゲームなどのコンテンツでも競争が厳しくなっている。これにより、ライバル製品の評価を下げるためにもネット水軍が利用されるようになっている。しかし、このような行為は、水軍行為を行った個人も、生産経営破壊罪、商業信用毀損罪、商品信用毀損罪などの実行犯として責任を厳しく追及されることがあるため、わずかなアルバイト料で、気軽に加担をすることのないように法律の専門家は警告をしている。

 

 

平替とはどのような消費行動か。影響を受けるブランドと受けないブランド

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今回は、広がってきた消費行動「平替」についてご紹介します。

 

時代の変化のスピードというのは非常に速いものです。多くの人が中国経済は低迷をしていて、つける薬もないと思っていますが、中国メディアや米メディアは「底打ちをしたのではないか」と報じるようになっています。「中国経済、ついに底打ちか?」(ウォールストリートジャーナル、https://jp.wsj.com/articles/is-chinas-economy-finally-bottoming-out-3adff9f3)などがその典型例です。中国メディアも、住宅市場が弱さはあるものの動き出していることや輸出が好調であることなどから底打ち感が出てきていると報じるようになっています。

ただし、「明るい兆しが出ている」とまで言えないのは、個人消費が凍りついていることと失業率の高止まりです。

 

社会消費品小売総額(個人消費に相当)の伸び率は決して悪い数字ではありません。しかし、2023年の伸び率が高いのは、前年の2022年に新型コロナの感染再拡大があり、個人消費が落ち込んだことによる反動です。

国内旅行は好調ですが、平時にはみなお金を使わなくなっています。「平替」(ピンティー、代替品)という言葉が流行をしています。平替とは、平価代替品(安価な代替品)の略で、ブランド品の代わりをする低価格商品のことです。「ユニクロの平替はこれがおすすめ」などという記事がSNSに出回っています。買い物をしなくなっているわけではありませんが、価格には敏感になり、無駄な出費はしない、低価格のものを求めるという習慣が定着をしています。

このようななじみのない代替品は「白牌」(バイパイ、ホワイトブランド)と呼ばれていて、SNS「小紅書」などでは盛んにどの白牌だったら買う価値があるかという情報交換が行われています。

 

この平替が興味深いのは、最初は「お金がないから安い同類の商品で我慢をする」ということがきっかけだったかもしれませんが、結果として消費行動の王道を行くようになっていることです。

平替は安いものならなんでもいいというわけではなく、安くても品質が悪くては意味がありません。そのため、誰もが価格と品質のバランスを見極めようとします。その情報源としては、おなじみのSNS「小紅書」(シャオホンシュー、RED)が盛んに使われます。価格と品質のバランスを見極めるのは、手間はかかりますが、消費者としては正しい姿勢です。しかも、最適の平替を見つけるにはECだけでは難しく、店舗に出かけていき、現物を見ることもします。つまり、商品をよく確かめて、店舗を巡って、いちばんいいものを選び出す。それが買い物の仕方の王道であり、しかも適度な手間であれば楽しくもあるのです。

これが平替にハマる理由になっています。お金も節約できて、買い物を楽しめて、賢い商品選びができる。そのため、専門家たちも「平替は理性的消費のひとつの形態」として肯定的に捉える人が多くなっています。

 

このような平替は、日本人の間にも広がっていると思います。私自身も小紅書で、「iPadスタンドの平替として書見台がおすすめ」という記事を見かけました。書見台といっても、キッチンなどで料理本を立てかけるもので、ワイヤーを曲げた簡単なつくりのものです。日本でも買えないのかと思い、業務用品の小売チェーン「シモジマ」に行ったところ、ぴったりのものが260円で販売されていました。喫茶店などで、メニューやサイネージボードなどを入り口やカウンターに立てかける道具だと思います。

iPadを立てかけて見ると、角度の具合もよく、安定をしています。しかも、ワイヤーの端には滑り止めのゴム球までつけられています。角度を変えられないというのが唯一の難点ですが、何しろ260円ですから気になりません。

この他、小紅書には、簡易的な写真立てがスマホ立てに使えるとか、浴室のシャンプーなどの収納ラックに、コンビニのタバコショーケース(壁に取り付けられ、10個ぐらいのタバコを並べられる)が利用できるとか、さまざまな記事があります。そうか、こんなもので代用できるのかという発見があり、なかなか楽しく、うまく代用できた時は感動すらします。非常に健康的な消費行動なのです。

この他、日本では、ダイソーの「電子メモパッド」(500円)、「完全ワイヤレスイヤホン」(1000円)などもSNSで話題になっています。価格が価格なので、数千円から1万円以上する製品には機能面ではかないませんが、そこが割り切れるのであれば非常にいい製品です。ダイソーは、100円均一ショップですが、100円ではない(ダイソーとしては)高価格帯商品で優れた商品を販売するようになっています。

 

平替には3種類の考え方があります。

1)平替:初見台をタブレットスタンドにするなど、異なる製品を異なる用途に工夫をして使う。本来の平替。

2)同源平替。一流品と同じOEM供給元が製造している製品を購入する。

3)白牌平替。ホワイトブランド。著名音響メーカーのイヤホンではなく、ダイソーの安価なイヤホンを購入する。

 

平替という消費行動は、中国にはかなり以前からありました。偽ブランド品なども平替の一種だったと思います。しかし、そのようなものを買うのは、中国人にとっても恥ずかしいことだったのですが、コロナ禍以降、多くの人が品質のいい平替があることに気がつき、節約を兼ねて広まっています。この平替という消費行動が市民権を得て、広がっているというところがが新しい現象になっています。

当然、翻弄をされる企業も出てきますし、逆に平替を利用して事業を拡大する企業もあります。最もうまく、しかも戦略的に活用をしているのが名創優品(MINISO、メイソウ、https://www.miniso.com/)です。メイソウは、以前に「ロゴはユニクロ風、店舗はMUJI風、商品はダイソー風」と、日本の小売業のパクリ企業だと、日本のSNSでは批判をされたり、おもちゃにされてきました。しかし、中国事業だけを見れば、店舗数はMUJIの10倍近く、売上は1.5倍ほどになり、MUJIの方がチャレンジャーの立場です。グローバルではさすがにMUJIの方が大きいですが、それでも売上高でMUJIの半分近くに迫ってきています。

メイソウは低価格雑貨を扱うダイソーと同じポジションのチェーンですが、同源平替をうまく活用して人気を得ています。同源とは同じサプライヤーという意味です。同源平替については後ほど詳しくご紹介します。

白牌平替はブランド品を買わずに、同類の無名ブランド商品を購入することです。白牌とはホワイトブランド=無名ブランドのことです。ユニクロのラウンドミニショルダーバッグが今、世界的に売れています。中国でも餃子包と呼ばれ、ヒット商品になっています。アパレルの世界では、ある商品が模倣をされることはもはや仕方のないことになっていますが、さすがにユニクロはアパレル越境EC「SHEIN」(シーイン)を提訴しました。報道によると型紙レベルで同一で、触発をされた商品、模倣をした商品ではなく、完全なコピー商品だからです。

このような白牌平替が広がると、ブランドの中には平替に侵食されて業績が苦しくなるところも出てきます。中国でカジュアルブランドとして地位を確立したユニクロ無印良品の業績はどうなっているでしょうか。これも、後ほどご紹介します。

また、平替によって業績を落としてしまう企業もあります。平替で影響を受ける企業と受けない企業はどこが違うのでしょうか。ここが、今回みなさんに考えていただきたいテーマになります。

平替は、「お金がないから安物で我慢をする」というところから始まったものの、現在では「よく調べて、品質と価格のバランスを見極めて購入する」という方向に進み始めています。これは、消費者の買い物行動としては基本中の基本であり、平替が理想的な理性的消費に進むのではないかと見ている専門家も少なくありません。

今回は、この平替により消費者の意識がどう変化をしているのかをご紹介します。また、平替を利用して成長の原動力としたメイソウの試み、そして、日本のユニクロMUJIの中国事業が平替により影響を受けていないのかどうかについてもご紹介します。

 

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小麦でつくった人形が60万円で売れるアーティスト。SNSで公開すると弟子入り希望者も

小麦でつくった人形が60万円で売れるというアーティストがいる。陳志文さんは子どもの頃から人形づくりに夢中になり、飲食店で働いている時にその才能が認められた。SNSで作品を公開することでアーティストとして確立、教室の生徒は累計600人になったと可以鴨文史君が報じた。

 

小麦でつくった人形が60万円

どこの国にも、小麦や米粉、水飴といった食材を使って人形などをつくる民間工芸がある。その多くは露天の売り物として、あるいは調理師が提供する料理の飾りとして提供されることが多い。ところが、この小麦細工が1体3万元(約60万円)の値がつくアーティストがいる。陳志文さんだ。

陳志文さんの両親は、趣味として小麦の人形づくりをしていた。子どもの頃からそれを見ていた陳志文さんも自然に人形をつくるようになり、趣味ではなく、売れるほどにまで上達をした。しかし、売れるといってもごくたまにであり、高い金額で売れるわけでもない。それで生活をするということはまったく不可能だった。

しかし、中学校の勉強があまり好きではなかった陳志文さんは、なんとかこの人形づくりで生活していけないかと考えるようになった。

▲陳志文さんの作品。SNSで公開をすると、購入したいという人も増え、高値がつくようになっている。

 

就職したレストランで飾り細工担当となった陳志文さん

しかし、世の中は甘くはなかった。小麦で人形をつくることがいくらうまくても、そんな特技は世の中は必要としていない。陳志文さんは、中学を卒業すると、地方都市で、チラシ配りや売り子、工場勤務などをするしかなかった。

職を転々とする中で、ある飲食店に就職したことが陳志文さんの人生を変え始めた。陳志文さんを可愛がってくれる調理師と出会い、陳志文さんも調理の仕事を気に入り、陳志文さんは調理師として腕前をあげていった。自信をつけた陳志文さんは、地方都市ではなく、上海に出て、大きなレストランで働いてみたいと考えるようになり、上海のホテルのレストランの仕事を見つけてきた。そこは、料理のレベルが高いだけでなく、料理を華やかに見せる必要がある。それには、小麦を使って、小さな飾りを添えることもあった。

すると、周りのシェフたちが驚いた。陳志文さんは実に芸術的な飾りをつくるのだ。周りから褒められたことに気をよくして、陳志文さんはネットで同様の細工をする人の映像を探し出し、そこから高度な技術を学び、自分でも工夫をするようになった。しばらくすると、そのレストランで飾り細工担当のようになっていた。

▲小さい頃の陳志文さん(右から2人目)。両親が趣味で小麦人形をつくっているのを見て、自分もつくるようになった。

▲上海で飲食店に勤めていた頃の陳志文さん。両親を上海に招いて観光をした。この頃、飲食店で飾りづくりに才能があることが認められ、小麦による飾り担当になる。

 

SNSに公開すると、弟子入り志願が

陳志文さんは、レストランの料理に飾りを添えるだけでなく、SNSを始め、自分がつくった作品の写真を撮り、投稿するようになった。すると、そのレベルの高さに驚いた多くのファンがつくようになった。

そのファンの一人が、陳志文さんが働いているホテルを突き止め、やってきて「弟子にしてほしい」と言った。陳志文さんは、喜び、昼間はホテルで働き、夜と休日に自宅で飾りづくりを教える教室を始めた。この教室は口コミで生徒数が増え始め、とうとう陳志文さんはホテルを退職し、教室での指導に専念をすることにした。

▲制作をする陳志文さん。師匠と呼ばれる人がいないため、動画サイトでさまざまな工芸の動画を見て、その技術を自分で工夫をして人形製作に応用している。

 

教室と作品販売で生活が成り立つようになった

しかし、教室の授業料だけでは、生活をしていくことは簡単ではない。自分の腕をあげるしかないと考え、明け方から昼までは自分の技術を高める時間にし、午後から教室で教えるという生活を続け、自信作をSNSに投稿し続けたところ、売って欲しいというメッセージが寄せられるようになった。

ここから、陳志文さんはアーティストとして知られるようになり、作品が売れるようになり、生活も安定をしてきた。また、教室も生徒が増え、これまでに600人の人に技術を教えている。陳志文さんは、今、自分の作品を海外で展示をし、販売することを夢見てさらに技術を磨いている。

▲陳志文さんがSNSで公開している作品。小麦でつくられているとは思えない精密さ。芸術的なだけでなく、ゲームやアニメのテイストもあり、若い世代でも人気になっている。

 

香港で、ディープフェイクとビデオ会議を使った詐欺が発生。騙されないために誰にでもできる簡単な方法とは

香港でディープフェイク技術を使って、ビデオ会議で担当者を信用させるという詐欺事件が発生した。騙されないために、誰にでもできる簡単な方法があると科技生活快報が報じた。

 

ディープフェイクを使いビデオ会議で信用させる

コロナ禍をきっかけに広く浸透したビデオ会議。出席をすると、そこでは同僚や上司の顔が見え、仕事の話をする。しかし、その見慣れた同僚はほんとうに本人だろうか。

ディープフェイク技術を使って、ビデオ会議で上司になりすまし、大金を搾取するという詐欺事件が香港で発生した。それは英国に本社がある香港支社で起きた。香港支社のある従業員は英国本社のCFO最高財務責任者)から一通のメールを受け取った。その内容は、本社が秘密取引を企図していて、そのためには香港の口座の資金を移さなければならないという内容のものだった。

従業員は内容から見て、何らかの詐欺の可能性があると疑い、上司やシステム管理者に連絡をし、確認をしようと考えた。しかし、その間もなく、本社CFOからこの件についてビデオ会議を開くので参加をしてほしいというメールが届いた。従業員はその会議に参加をすれば、すべて明らかになると考え、メールに記載されているビデオ会議のリンクをクリックしてビデオ会議に参加をした。

▲香港支社の従業員がビデオ会議に出席をすると、そこには面識のある本社CFOの他、面識のある同僚も出席していたため、まったく疑うことがなかった。

 

偽物上司に叱責されて、送金をしてしまった

ビデオ会議には、面識のある本社CFOが映っていた。声も聞き覚えのあるCFOのものだった。さらに、数人がビデオ会議に出席をしており、その中には香港から英国本社に移った、よく知っている同僚もいた。

CFOは非常に怒っているようだった。なぜ指示に従わないのかと言う。そして、一方的に「すぐにでも資金を移すように」と告げて、ビデオ会議を一方的に中断してしまった。

従業員は叱責されたことに萎縮をしてしまったようだ。指示通りに、会社の資金を15口に分けて5つの香港の銀行口座に送金する手続きをした。送金額は合計2億香港ドル(約38.7億円)という巨額なものになった。

しかし、その後、CFOや本社スタッフから何も応答がないことから、5日後になって英国本社のスタッフに確認のメールを送った。ここから、この事件が詐欺であったことが発覚をした。

▲ビデオ会議で間違いないと確信した香港支社従業員は、2億香港ドルもの巨額の資金を犯人の指示通りに送金してしまった。

 

中国国内でも同様の詐欺事件が発生

中国国内でも同様の事件は起きている。陝西省西安市のある企業の財務担当者は、社長からスマートフォンのビデオ会議に参加するように求めるメッセージを受け取った。指示に従って、ビデオ会議に参加をすると、そこには社長がいて、186万元(約3900万円)を指定した口座に振り込むように指示をされた。社長の顔も声も話し方も間違いなく社長本人のものだったため、送金を行なった。

財務担当者は、業務規定に従って、その送金の報告を社内システムに入力した。この報告を、ほんとうの社長が見て、驚いて財務担当者に事情を尋ねた。当初、二人は話が混乱したが、巧妙な詐欺にあったに違いないと警察に連絡、警察では送金先の銀行に連絡をして、口座を一時凍結できたことで、資金は被害に遭わずに済んだ。

▲中国国内でも、ビデオ通話で指示を受け186万元を送金してしまうという事件が発生した。

 

データ収集元は企業公式サイト内のコンテンツ

ビデオ会議で、顔や声を他人のものに変えるというのはもはや難しい技術ではなくなっている。ライブコマースやショートムービーでは、視聴者に与える印象を良くするために、自分の顔を美しく修正することは当たり前のように行われている。

あらかじめ、美しく変換した自分の顔や他人の顔のデータを用意しておき、これを本人の顔認識をさせ、そこにリアルタイムで合成していく。顔の表情を変えれば、合成した顔もその通りに表情を変える。

香港の事件では、犯行グループは、その企業が公式サイトで公開している動画やインタビュー動画から、ターゲットにしたCFOの顔データと声色データを収集し、これを犯人の顔に合成することでビデオ会議に出席していた。犯人の動きや話す内容に従って、相手にはまるでCFO本人が動いたり、話したりするように見えるため、信じ込んでしまう。多少動きがカクカクするようなことがあっても、多くの人が通信回線の状況が悪くなったとしか考えない。

▲ディープフェイク技術では、本人(左)の顔認識を行い、そこにフェイクの顔(右)を合成していく。

 

ビデオ会議を始める前に、手のひらで顔を隠してみる

中国計算機学会の安全専業委員会デジタル経済・セキュリティーチームのメンバーである方宇氏は、このようなディープフェイク技術を使ったビデオ会議が、詐欺グループの間では、最も仕事を安全に早く終わらせるツールになりつつあると警告した。

そして、ビデオ会議をする時には、ある動作を習慣づけることを勧めている。それは、全員が、会議を始める前に、自分の手のひらを広げて、口と鼻を覆うというものだ。手のひらを動かして、何回か繰り返す動作を励行してほしいという。

ディープフェイク技術は、犯人の顔を認識して、それにフェイクの顔データを巧妙に合成する。しかし、顔の大半が覆われてしまうと、顔認識ができなくなり、フェイクの顔が消え、本人の顔が見えてしまうのだ。

また、指で鼻を押して曲げてもらうというのも有効だという。ディープフェイクの合成では、鼻が曲がるところまでは、まだ追従できていないからだという。

ただし、これはあくまでも、現状のディープフェイク技術での話であり、このような課題まで克服した技術は、そう遠くない間に登場してくることになる。手のひらで顔を覆ったり、鼻を指で押すのは、現状では有効な方法だが、過信せずにディープフェイク技術の動向をよく見て、別の対策を講じる必要が出てくるという。

▲ディープフェイクによる詐欺を防止するには、ビデオ会議で手をかざしてみるという原始的な方法が有効。顔認識をし、顔の位置を特定して、そこに偽の顔データを合成するため、手をかざすと顔の位置が細くできず、本来の顔が映るからだ。

 

従業員を公式サイトに不用意に露出させない

さらに、公式サイトで経営陣の動画での露出を抑えるということも考える必要がある。特に、財務担当者は不要な露出を避けるべきだ。犯人たちは、このような公式データを学習素材としてディープフェイクを行うからだ。

また、ビデオ会議に参加するときは5分か10分早めに入り、参加者とプライベートな話題の雑談をする習慣をつけることも大切だ。犯人たちは、顔と声は真似をすることができても、プライベートな話題には曖昧な返答をせざるを得ず、違和感を感じとることができる可能性がある。

今後、このようなビデオ会議+ディープフェイクを使った詐欺は急増することが考えられる。真剣に対策を考えなければならない段階になっている。

▲中国計算機学会の方宇氏は、顔を手で覆う、鼻を指で押してみるなどの対策が有効だという。ただし、あくまでもそれは現在の技術で、そこをクリアする技術が登場することも考えておかなければならないという。

 

ブームになるマイクロドラマ。小さな予算で大きく儲ける。一方で一過性ブームで終わるという見方も

1話数分で50話、100話連続するマイクロドラマがブームとなっている。ヒット作も出る一方、粗製濫造も目につくようになり、一過性のブームで終わってしまうのではないかという見方も出てきていると極目新聞が報じた。

 

マイクロドラマ撮影のメッカとなった横店影視城

微短劇(マイクロドラマまたはショートドラマ)のブームが過熱状態となっている。春節期間、ショートムービープラットフォーム「抖音」(ドウイン)では、ショートドラマの累計視聴回数が8億回を超えた。これまでの累積で視聴回数1億回を超えたマイクロドラマも8本となった。今年2024年1月に、国家広播電視総局が審査を通したマイクロドラマは297本にものぼった。

このような撮影の基地となっているのが、世界最大とも言われる映画スタジオ「横店影視城」だ。浙江省金華市に横店集団が設立した映画スタジオで、総面積は330ha(東京ドーム70個分)で、中には王宮がまるごと再現されている。チャン・イーモウ監督やジャッキー・チェンなどもこのスタジオを使って映画を撮影したことがある。

この横店影視城に2023年9月にマイクロドラマ専門のスタジオビルがオープンしている。このビルは、すでに1000以上の撮影チームが利用しているという。金華市では、周囲の農村の住民が、撮影のエキストラ俳優を務めるアルバイトが人気となっているが、今年に入ってからエキストラ不足まで起きているという。

▲映画スタジオ「横店影視城」。王宮が丸ごと再現されている。著名な映画の撮影もここで行われることが多い。普段はテーマパークとして楽しまれている。

 

テレビよりも面白い中毒性のあるマイクロドラマ

マイクロドラマはなぜ人気があるのか。1話は1分か2分で、それが50話、100話と続く。10話ぐらいまでは無料で、それ以降は課金が必要となるため、ついつい見てしまうという。また、映画やテレビドラマと異なり、縦動画であることから、暇な時間に1話、2話を気軽に見てしまい、続きが気になって見続けてしまうようだ。

内容も刺激的だ。暴力、復讐、血飛沫、犯罪、性表現などが盛り込まれるのが常識になっている。

このような刺激的な表現は、テレビドラマでは厳しい制限があるが、誰でも見られるテレビドラマとは異なり、課金をするために年齢ゾーニングがしやすいマイクロドラマでは、このような制限も緩やかになる。テレビでは見られない表現があることが魅力のひとつになっている。

また、1話1分程度といっても、優れた製作者はその中で必ず逆転を入れ、最後の10秒は必ず次に続くサスペンス要素を入れる。全体を通して見れば、ありふれたストーリーかもしれないが、演出のうまさにより次を見たくなり、また次が見たくなる。批判的な人は、精神的な興奮剤にすぎないという人もいる。

▲2022年頃から人気となり、2023年にはブームと言える状況になった。スマホで気軽に見られるということ、テレビドラマよりも刺激的内容が多いということが人気の秘密だ。

 

コロナ禍で仕事を失ったクリエイターには福音

しかし、このブームが続き、ひとつの娯楽ジャンルとして定着するのかについてはさまざまな見方がある。マイクロドラマが、映画やドラマ関係者にとって福音になっていることは確かだ。コロナ禍で撮影ができなくなり、多くの人が生活費を稼ぐことすら難しくなってしまった。そこに、小さな予算で、当たれば大きいマイクロドラマに業界は久々に沸いている。

撮影は100話程度を1週間で撮影してしまうのが標準だ。スタジオのレンタル代を節約するためだ。そのため、昼夜ぶっ通しの24時間体制で撮影をする。スタッフはスタジオ内で仮眠をとり、とにかく撮影を早く終わらせる。

また、盗作とは言えないものの、似ているストーリーが大量に登場するのも特徴だ。ひとつヒット作が出ると、すぐにそのまがい物のようなマイクロドラマが大量生産される。マイクロドラマの撮影には、有名な監督も参入しているが、名前を隠している例もあるという。これが自分の作品リストに加わると、監督としての経歴に傷がついてしまうと考えられているようだ。

▲マイクロドラマの撮影はとにかく低予算で行う。セットはできるだけ使わず、撮影は24時間ぶっ続けで行われる。

 

ヒットするのは10本に1本。娯楽として定着をするか

マイクロドラマ業界では「一九の法則」ということが言われるようになっている。10本制作したら、ヒットするのは1本で、9本は赤字というもので、1本の黒字で9本を補填する。

マイクロドラマはお金を稼ぐことが目的となっているため、消費者を騙すようなマイクロドラマも目につくようになってきた。「9.9元で残りのドラマをすべてアンロック」という表示が出て9.9元を支払ったら、20話ほど見たところで、「ここから先は168元の支払いが必要」という表示が出るなど、騙すようなものもあり、視聴者からの苦情も増え始めている。

マイクロドラマがお金を稼ぎやすい娯楽商品になっていることは間違いない。しかし、それだけに粗製濫造が進んで、いつか飽きられてしまうのではないかと不安視する人もいる。そのため、業界内にはガイドラインを設けようという動きもあるようだ。マイクロドラマが娯楽のひとつのジャンルとして定着するかどうか、あるいは消えてしまうのか、大事な時期を迎えている。

▲ヒットドラマとなった「私は80年代の世界で継母になった」。1日で2000万元(約4.3億円)の課金収入があったことが話題になった。

 

 

EVの充電。5分で300km時代始まる。ファーウェイのウルトラファストチャージャーがすごすぎる

ファーウェイが1秒で1km充電できるEV用のウルトラファストチャージャー充電器を発表した。5分で300kmが充電できることになる。ファーウェイは、このウルトラファストチャージャーを年間10万台規模で設置をしていくと汽車洋葱圏が報じた。

 

トイレに行く間に充電可能な5分で300kmチャージャー

ファーウェイがEV(電気自動車)の充電器で技術的な突破を達成した。600kWの出力があり、1秒で1kmの充電ができるウルトラファストチャージャー(https://digitalpower.huawei.com/cn/smartchargingnetwork/ultrafastcharging.html)だ。5分で300km、10分で600kmの充電ができることになる。これまでEVの充電は「食事をしている間」か「寝ている間」にするものだったが、これが「トイレに行っている間」に充電ができることになる。

▲ウルトラファストチャージャーは「1秒1km」。5分で300km分の充電ができる。今後発売されるEVは、1000Vに対応することになる。

 

テスラの350kWに対して、ファーウェイは600kW

現状で、テスラのスーパーチャージャーV3で出力は250kW、北米などでのV4で350kWの出力がある。小鵬(Xpeng)の充電器は最大480kWの出力があるが、小鵬のEVと組み合わせなければこの出力にはならない。

また、理想(リ・オート)の最新充電器では、最新のミニバン「MEGA」と組み合わせることで520kWの出力を出せる。11分で500km分の充電が可能になる。

ここにファーウェイは600kWの出力がある充電器を発表した。しかも、汎用であるため、どの車種でも規格内での急速充電が可能になる。すでにバッテリー側は高電流、高電圧に対応ができているのに、それをじゅうぶんに活かせる充電器が存在しなかった。充電に時間がかかるのは、バッテリーの問題ではなく、充電器の側にボトルネックが存在しているのだ。

▲すでに設置されたウルトラファストチャージャー。従来型に比べ、薄くて小さい。これで600kWの出力がある。

 

ケーブルと本体を液冷で冷やす

ファーウェイの技術的突破には、2つのポイントがある。全液冷技術と炭化ケイ素半導体だ。

充電出力を高くするには、電流と電圧の両方を上げる必要があるが、双方に技術的な課題があった。電流をあげると発熱が起きるため、電気的には出力を高くできるのに、放熱処理ができないために電流を一定程度に抑えるしかなかった。

発熱で問題になるのは、まずはケーブルだ。これまでの充電器では、ケーブルを太くするという古典的な方法で発熱処理を行なっていた。ケーブルが太いということは表面積が増えるということで、ケーブル表面から放熱することができる。しかし、それはもはや限界に達している。

そこで、ファーウェイは、ケーブル内部に液冷管を走らせ、液冷方式で放熱させることにした。これにより、電流をあげることが可能となり、同時にケーブルを細くすることができるため3割ほど軽くなった。

▲従来の充電ケーブルは太くて重い。発熱をするため、放熱効率をあげるために表面積を大きくする必要があるからだ。

 

スタンド本体も液冷をする

この液冷という発想は、テスラのスーパーチャージャーでも採用されている。ファーウェイはそれに加えて、充電スタンド本体も液冷をする「全液冷」にして放熱処理を行っている。これにより、ファーウェイの充電器は一気に600Aにあげることができた。

一般的な空冷の充電器のようなファンも不要となったため、サイズは小さくなり、騒音もなく、また防水防塵構造も設計しやすく、機器としての寿命も伸び、15年以上は問題なく使用できるという。

 

半導体の素材を一新して高電圧対応に

もうひとつの技術的突破が半導体だ。多くの充電器の電圧は400V程度に抑えられている。それ以上にすると、半導体が損傷してしまうからだ。この電圧耐性の弱さは、半導体の原材料がシリコンであることにある。

そこで、ファーウェイは炭化ケイ素という新しい素材で半導体を製造した。この素材であれば1000V程度まで耐えられるという。

ファーウェイの充電器は、600Aと1000Vで、600kWの出力を可能にしている。現在の最新EVは800V対応の時代に入ったばかりなので、ファーウェイの充電器はまだまだ余力がある。寿命と同じように15年先でも使用できるような余裕のある仕様になっている。

▲炭化ケイ素を素材に使った半導体。これにより、高電圧に対応することができ、高出力の充電器が開発できるようになった。

 

中央企業と組み、年間10万台ペースで設置

問題は、この充電器が年間10万台というペースで普及していけるのかということだ。ファーウェイは、充電ステーションを運営する業者に、この充電器を販売していく。

この充電ステーションの運営業者で鍵になるのが「普天新エネルギー」だ。普天は中央企業(国営企業の一形態)であり、やはり中央企業である中国石油に買収をされた。その普天新エネルギーが、充電器の分野でファーウェイと協力体制をとることを表明している。つまり、この充電器は準国家プロジェクトとして普及をしていくことになる。

充電器の価格は高くなるが、運営業者からすれば、半分の時間で充電が済めば売上は2倍になることから、利用率の多い充電ステーションへの導入は早いと見られている。

EVは日常の通勤、買い物などには利便性の高い乗り物だが、長距離移動をするときの弱点を多くの人が気にしている。しかし、長距離移動をする時は、ほぼ高速道路を使うことになる。パーキングエリアに入って、トイレに行って、飲み物を買う間に数百km分の充電ができる。そういう時代がすでに始まっている。

 

iOSのシェアが増加。米国市場ではダブルスコアに迫る。スマホ勢力図に何が起きているのか

iOSAndroidのシェアが2023年第4四半期に急変をしている。特に米国市場では拮抗していた両者のシェアがダブルスコアに近いところまで開いている。この要因は、米国での中国スマートフォン排除が影響しているのではないかとCounterpointが報じた。

 

Androidのシェアが低下をする異変

スマートフォンのプラットフォームシェアに異変が起きている。調査会社Counterpointの統計によると、世界のスマホプラットフォームシェアでは、Androidが圧倒的に大きいものの減少をし、アップルのiOSが伸び、さらには華為(ファーウェイ)のHarmonyOSが微増をしている。

Androidの2023年Q4のシェアは74%と前期よりも5%ポイント低下をした。一方で、iOSは前期よりも7%ポイント、HarmonyOSは1%ポイントの増加となった。

▲世界市場でのシェア。Androidが減少し、iOSが上昇をしている。HarmonyOSもわずか上昇をしている。

 

HarmonyOSは中国市場で目標の16%を達成

HarmonyOSが微増をしているのは、中国市場でファーウェイのスマホが復活をしたことだ。現在、予約に対して製造が追いつかない状態にあり、しばらくの間はHarmonyOSがシェアを伸ばし続けると見られている。

ファーウェイでは、以前から中国市場で16%を確保すれば安定して運営ができ、さらに伸ばしていく体制が整うとして、16%という数字を目標として掲げてきた。それを達成した形だ。

▲中国市場でのシェアも同じ傾向が見られる。HarmonyOSは目標の16%に達した。

 

売れ行き不振でもシェアが伸びたiOSの不思議

面白いのは、ファーウェイの煽りを受けて販売が不振だと伝えられるiOSもシェアを伸ばしている点だ。販売が不振なのは新機種のiPhone 15で、映像に強いiPhone Proは好調だ。

一方、低価格Android機種を使っている人は、買い替えを伸ばして節約するようになっており、Androidの販売シェアが下落をしている。実際、スマートフォンの基本機能は成熟しており、数年前のエントリー機種でも問題なく使えることができる。ハイエンドモデルでなければ、買い替える動機が生じない状態になっている。

 

米国市場ではiOSが急増

一方、大きな変化が起きているのが米国市場だ。iOSAndroidは拮抗をして競い合っていたが、2023年後半からiOSが大きくシェアを伸ばし、Androidはシェアを大きく落としている。

これはファーウェイ排除の影響だ。米国市場からファーウェイを追い出し、その他シャオミなどの中国スマホも売れなくなっている。しかし、世界市場でハイエンドと言えるのはアップル、サムスン、ファーウェイだけであり、シャオミがハイエンド市場に食い込もうとしている状況だ。すると、米国市場でハイエンドスマホを欲しければアップルかサムスンしか選択肢がなくなっている。

エントリーモデルを使っている人は、買い替える動機が弱くなっているのは米国市場でも同じで、新機種に限ると、サムスンよりはアップルを選ぶ人が増えているのだ。

▲米国市場は激変をした。ファーウェイが排除されたことで、ハイエンド機の選択肢がアップルかサムスンしかなくなったからだ。

 

世界市場ではAndroid優勢であるものの、先進国ではiOS優勢へ

世界市場となると、まだまだハイエンドモデルを購入するほどの経済力がない国や地域もあり、世界市場でのAndroid優勢はそう揺るがないものの、経済力のある先進国ではiOSのシェアが大きく上がっていくことが考えられる。先進国ではAndroidの牙城が崩れる局面も出てくるかもしれない。