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今月の表紙の筆蹟は、加山雄三さん。

波 2024年6月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2024/05/28

発売日 2024/05/28
JANコード 4910068230645
定価 100円(税込)
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加山雄三『俺は100歳まで生きると決めた』(新潮新書)
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蝉谷めぐ実『万両役者の扇』
三浦天紗子/許されること/許されないことに線引きはあるか

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中溝康隆/元巨人軍球団代表があぶり出す平成球史の表と裏
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[エッセイ]立川志らく/落語に吹く「江戸の風」

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谷沢永一『人間通』
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[エッセイ]周東美材/ジャニーズとふたつの東京オリンピックのあいだ
【私の好きな新潮文庫】
高野 寛/今もこころに残る3冊
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 小澤征爾『ボクの音楽武者修行』
 三島由紀夫『美しい星』
【今月の新潮文庫】
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 フランツ・カフカ、頭木弘樹 編『決定版カフカ短編集』
 フランツ・カフカ、頭木弘樹 編訳『カフカ断片集―海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ―』
【コラム】
三枝玄太郎『メディアはなぜ左傾化するのか―産経記者受難記―』(新潮新書)
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近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第21回
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三谷幸喜×ペリー荻野/もうひとつ、いいですか? 第2回
中村うさぎ/老後破産の女王 第3回
古市憲寿/絶対に挫折しない世界史 第2回
坪木和久/天気のからくり 第10回
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第37回三島由紀夫賞・山本周五郎賞決定発表
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、加山雄三さん。

◎訃報を聞いてP・オースター『幻影の書』を読み始め、泣き笑いしながら忽ち読了。人生のどん底にいる「私」はTVでふと観たサイレントの喜劇映画に笑い、生き直そうと思う。そして、六十年程前に十二本の映画を残して消えた、白いスーツと口髭がトレードマークの喜劇役者兼監督Hヘクター・マンを求める旅に出て――やがて様々な人生が交錯し、黄金期の無声映画さながらの神秘的な滑かさで物語は飛翔していきます。
◎映画好きが右の発端をすぐ呑み込めるのは、ウディ・アレン「ハンナとその姉妹」のおかげ。あの映画では、ノイローゼで自殺しかけたアレンが偶然、マルクス兄弟の「我輩はカモである」を観て救われます。「ハンナ」公開時は簡単に「カモ」を観られない時代で、当時の小林信彦さん曰く「35ミリで観るマルクス兄弟映画の迫力が日本の一般観客に初めて理解されるのではないか(『決定版 世界の喜劇人』)」。
◎『幻影の書』の主人公はマンの全作品を観るべく米国両海岸と欧州を旅しますが、これは小林さんが『世界の喜劇人』執筆のためにマルクス映画全十三本を観て廻った旅路と重なります。例えば同書の「カモ」論はNYの名画座でメモをとった産物の由。
◎オースター描くマン最後の公開作は、透明人間になった彼が自分の肉体を取り戻すまでの物語。無事鏡に姿が映るようになって幕となりますが、これは「カモ」の有名な鏡の場面(調べて下さい)のエコーにも思えます。小林さんが「肉体で演じられるのが私にはショックであった」と驚嘆し、志村けんのコントの元ネタになり、村上春樹さんによれば(『映画をめぐる冒険』)、『羊をめぐる冒険』の鏡の場面はこれからヒントを得たという日本文化にも影響を与えた名シーン、ぜひどこかで。
▽次号の刊行は六月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。